28 騎士団長アルディラーズ視点➁
(アルディラーズside)
お師匠様の屋敷はアレクバイン王国王都の外れに建っている。
お師匠様の教えを受けていた時は毎日、寝泊まりをしていた懐かしい場所だ。
中へ入ると、それぞれの部屋は驚くほどにキレイに片付けられていた。
ゴミ屋敷とは言わないが、お師匠様は日常的にあまり物を片付ける方ではなく、部屋は散らかっているのが普通だったが。
アレクバイン王国の者達も、お師匠様がいなくなった理由を見つけようと訪れたようだが、収穫はなかったらしい······。
本当にもう戻るつもりはないように、隅々まで整えられている。
それぞれの部屋を見て回ったがやはり収穫はなく、最後にお師匠様の書斎を調べることにした。
この部屋にはある仕掛けがあり、お師匠様の弟子の中でも限られた者にしか入ることが出来ない隠し部屋がある。もしやと思い、仕掛けを解くと書斎の隠し部屋に封印が施された書物が残されていた。
これはお師匠様の研究日誌?
封印は強力なもので、並の魔術士では解くことはできないレベルだったが、苦労の末に解くことができた。
日誌の内容は特殊な魔術関連がほとんどで、魔術士ならば喉から手が出るほど欲しくなるであろうというものだ。
どれも興味深い内容だが、私はある項目に目が行った。
〝魔王の呪い〟
この研究日誌の内容によると、500年前にお師匠様は魔王に呪いをかけられたとのことだ。
不老不死の呪い。
お師匠様が不老不死だというのは有名な話だ。
年を取らず、かつての勇者が存在した時代から生き続けている偉大な大魔術士。
だが、お師匠様の不老不死の秘密は誰も知らないことだ。高い魔力で身体を維持して老化を遅らせることは確かに可能なことだが、それには途方もない膨大な魔力が必要で、それでも身体の老いを完全に止めることはできない。
お師匠様はもう数百年間、容姿が変わらずにいる。どうしてそんなことが可能なのか誰もわからなかったが、魔王による呪いだったのか?
しかも、お師匠様の研究成果によると魔王の呪いはまもなく解けるという。
普通に考えれば呪いが解けるというのは喜ばしいことのはずだが、これに関しては話が変わる。
呪いが解ければ、今まで止まっていた肉体の老化、蓄積されたダメージが一気に襲いかかってくる。
そんな衝撃に人間の身体が耐えられるわけはなく、つまりは死が待っているということだ。
呪いが解けるまで、もう1年にも満たない。
ちょっと待て······ということはお師匠様の命はあと1年で······。
〝もう戻ることはないけど〟
〝老い先短い私なんかに〟
お師匠様の言葉が頭に流れる。
············これはお師匠様を直接問い詰める必要がある。
すぐにでもお師匠様の後を追わなければ······!




