27 騎士団長アルディラーズ視点
(アルディラーズside)
「お、いたいた。アル君、久しぶりだね〜。早速で悪いんだけど今すぐ騎士団員を可能な限り集めてね。国の一大事に発展するかもしれない事態さね。早く早く!」
久しぶりに会ったお師匠様は相変わらずのお人だった。王城にいきなり現れたかと思えば私を見るなり、そう言ってきたのだ。
なんでもスタンピードが起きてラーベリックの町が危機に晒されているとのことらしい。
お師匠様の言葉となると無視はできない。
以前よりスタンピードの前兆があると報告はあったが、こんなにも早く起きるのは想定外だ。
私は出来る限り迅速に騎士を招集し、お師匠様と共に現場に向かった。
結果だけを言えば、スタンピードは無事に収束させることができた。
我々が来る前にラーベリックの町の冒険者達が魔物を抑えていたので、町に被害はなく、犠牲者も出ずに済んだ。
その後、役目を終えた我々はお師匠様の転移魔法で再び王都に戻り、国王陛下に事の顛末を報告した。
もっとも、報告は部下に任せて私はお師匠様の王都観光に付き合わされたが。
スタンピードに遭遇したのは偶然で、お師匠様は観光目的で我が国に来ていたらしい。
何日でも滞在されて構わなかったのだが、お師匠様は王都観光に満足すると、その日の内に去っていってしまった。
気になることもあったので後日、私はアレクバイン王国に直接出向いた。
こういう時にお師匠様に習った転移魔法は便利だ。一度行ったことのある場所ならば一瞬で移動できる魔法。
高度な魔法で、お師匠様ほど自在には扱えないが、五年前までは慣れ親しんだアレクバイン王国ならば簡単に移動できる。
アレクバイン王国に着くと、やはりというかお師匠様がいなくなったことでの混乱がまだ収まっていなかった。
顔見知りも多いので話が早く進み、お互いの情報交換がスムーズに済んだ。
アレクバイン王国側の話では、お師匠様は前触れなく突然、書き置きを残していなくなってしまったとのことだ。
そして私はルヴェリューン王国でのスタンピードが起きたことについて話した。
〈旅に出ます。もう戻ることはないけど捜さなくても大丈夫だからね♡〉
これが見せてもらった書き置きの内容だ。
まったく、あの人らしいというか······。
たった一言添えられているだけで、どこに行くかなど具体的なことは書かれていない。
だが、この書き置きに引っかかる部分がある。
〝もう戻ることはないけど〟
気まぐれで旅に出るだけならば、何故こんな一文を入れる必要がある?
長期に渡る旅の予定で〝何年留守にするかわからないけど〟ならまだわかるが。
本当にもうこの国に戻るつもりはないということか?
だが、一体何故······?
何かアレクバイン王国に居たくない理由でもあるのか?
しかし、お師匠様は嫌なことがあったからといって国を飛び出すような方ではない。
そもそもお師匠様にそんな無礼を働く輩もいないだろう。
アレクバイン王国側もまったく心当たりはないそうだ。
もしかしたら何か手がかりがあるやもしれぬと考え、私はお師匠様の住んでいた屋敷に足を延ばした。




