26 お別れ
ラーベリックまで戻ってきたら冒険者ギルドで祝勝会を開いていたので、私も便乗して場を盛り上げた。
やっぱり楽しく騒ぐのが一番だよね。
おそらくは冒険者達はもう私の正体に気付いているんだろうけど、誰も深く聞いてこない。
私が今まで通りにしているから、皆も敢えて聞かないんだろうね。
気遣いできる良い人達ばかりでよかったよ。
私が出したお酒を呑み尽くした辺りで、皆ほどよく酔い潰れていた。
おや、シャクト君達のパーティーはレッグ君以外呑んでいないみたいだね。
まだ若い子達だし、お酒は苦手なのかな?
「おや、シャクト君達は呑んでいないのかい? そこのレッグ君みたいに、めでたい席は羽目を外してもいいんだよ?」
私がシャクト君達の席に声をかけると、少し驚いた反応を見せた。
ん〜、そんな緊張しなくても、今まで通りフレンドリーな感じでいいんだよ?
「ティア······でいいんだよね?」
「どうしたんだい、タミアちゃん。私の名前を忘れちゃったのかな?」
緊張をほぐすために、私はわざとおどけた口調でそう言った。
それがよかったみたいで、タミアちゃんの表情が少し緩んだ。
「そうね······ティアはティアだわ。竜の攻撃から助けてくれてありがとう。まだお礼を言えてなかったわよね」
「あっはっはっ、当然のことをしたまでさね。気にすることないよ」
タミアちゃんのお礼の言葉に私は豪快に笑って答えた。
「ティアさんの特訓を受けてたおかげで、タミアもサーリィも大活躍だったからな。本当にティアさんには助けてもらってばかりだよ」
シャクト君もパーティーのリーダーとして改めて私にお礼を言った。
「タミアちゃんもサーリィちゃんもまだまだ強くなれる素質があるよ。この天才魔術士ティア様のお墨付きさね。時間があればシャクト君とレッグ君の剣技も見てあげれたんだけどね」
「いや、ティアさんは魔術士だよね? まさか剣まで扱えるの?」
「あっはっはっ! 天才魔術士に出来ないことはないのさ」
王国騎士団長のアル君に剣を教えたのも私だよ?
昔、勇者に色々教わったこともあったから剣以外の武器の扱いもお手の物さ。
剣と魔法を兼ね備えた魔法剣技なんてのもあるしね。
シャクト君も鍛えればアル君並の素質はありそうなんだよね。
ま、私にそこまでの時間はないんだけどさ。
もっと早くシャクト君達に会えていればと思うと本当に残念だよ。
「ティアさん······」
シャクト君とタミアちゃんはいつも通りの調子になったけど、サーリィちゃんはまだ緊張しているみたいだね。
「ほらほら、サーリィちゃん。せっかくの祝勝会なんだからもっと笑顔で盛り上がろう!」
サーリィちゃんもタミアちゃんくらいの順応性があればいいんだけどね。
ま、それは1日2日でなんとかなるものじゃないしね。実力はあるんだし、精神の方もゆっくり鍛えていけばいいさね。シャクト君達のような頼れる仲間がいるんだったら、これ以上私が心配する必要はないよね。
さあさあ、辛気臭い顔はやめてパーッと盛り上がろう!
酔い潰れたレッグ君は仕方無いとして、シャクト君達と最後の宴会を楽しんだ。
「ティアさん、ご指導ありがとうございます。わたし、ティアさんの弟子として恥じないように、これからも頑張りますから······!」
ようやく緊張も解けてきて、最後にサーリィちゃんがそう言って頭を下げた。
うんうん、良い顔になったじゃないか。
やっぱり笑顔が一番だよね。
さて、これでラーベリックの町の人達とは気分良くお別れが出来たよ。
次はどこへ向かおうかな〜。




