22 スタンピード終息、そして後始末
魔物のスタンピードもこれにて終息した。
さっすがアル君だったね。竜を一方的に倒しちゃったよ。
ルヴェリューン王国最強の騎士なんて言われているだけあるね。
フルネームはアルディラーズ=ヴァルキア。
年はシャクト君達と同じくらいで、私の弟子の中では最年少だった子だよ。
ただ、そんなアル君が私のことをお師匠様なんて呼ぶもんだからサーリィちゃん達が驚いているよ。
これは私の正体がバレちゃったみたいだね。
ま、いいか。
遅かれ早かれ気付かれちゃうとは思っていたからね。どうしても隠したいってわけでもなかったし、気にしないでおこう。
さて、そんなルヴェリューン王国騎士団だけど、本来は国王のいる王都を守る存在なんだよね。
今回の魔物の大量発生みたいに周辺の町からの要請などで遠征することはあるけど、ラーベリックの町から王都までは馬車で10日かかるくらい距離が離れている。
冒険者ギルドからの連絡を受けても、こんなに早く駆けつけられるはずがないんだよね。
じゃあ何故駆けつけられたかって?
そこはこの私、偉大なる魔女ネイティアース様の出番というわけよ。
私は空間転移という大魔法が使えるのさ!
この魔法は目に見える範囲や、一度行ったことのある場所なら次元を超えて一瞬で移動できるという凄い魔法なんだよ。
そうして私は転移魔法を使って王都まで行き、アル君達に現状を説明して、王国騎士団まるまる助っ人として連れて来たってわけさ。
さすがに私一人じゃ手が回らないかもしれなかったからね。
犠牲者が出ずに済んでよかったよかった。
スタンピードの後始末は冒険者ギルドに丸投げして、騎士団を王都に帰すためにアル君達を連れて転移魔法を使用した。
かなり昔だけどルヴェリューン王国の王都にも行ったことはあるからね。
移動するのは簡単なことさね。
「いや〜、助かったよアル君。私だけじゃ厳しい状況だったからね」
「ご謙遜を。お師匠様なら私達の手を借りずとも、どうとでも出来たでしょうに」
私の言葉にアル君は小さく笑いながら答えた。
どうとでも出来たってそんなことないよ?
犠牲者を出さずに竜種含む魔物と討伐、森林火災の消火、怪我人の治療、さすがに一人じゃ厳しいって。
「しかし驚きましたよ。いきなり城に現れたかと思えば町の危機を救うために力を貸せと、ほとんど状況説明をせずに強要するのですから」
「それでもしっかり手を貸してくれたじゃないのさ。アル君の一声で騎士団の主要メンバーも集まったし、なかなかに慕われているみたいだね」
「私は一応、今は騎士団長という立場ですから」
私の教えを受けていた時はまだ騎士見習いだったはずだけど、ほんの数年でずいぶん出世したものだ。
私の所にいた数年前まではまだ子供みたいなものだったのに、今は見た目も立派な大人のイケメンになっちゃったね〜。
昔を思い出して感慨に耽っていると、アル君が表情を引き締めて、まっすぐ私を見つめてきた。
「改めまして、お久しぶりです、お師匠様。ルヴェリューン王国騎士代表として来訪を歓迎致します」
アル君が礼儀正しい動作で私に一礼した。
ん〜、そういう堅苦しいところは変わってないね〜。私はもっと砕けた感じの方が好きなんだけどな〜。




