18 魔物との攻防
(シャクトside)
森の中から大量の魔物が湧き出してきて、俺達冒険者は総出で迎え撃つこととなった。
このままでは町にまで押し寄せてくる。
冒険者だけでなく町の衛兵も戦いに参加しているが、魔物の数があまりに多い。
こんな数の魔物が今まで森のどこに潜んでいたんだ?
「ファイアウォール!!」
サーリィが炎の魔法で向かってくる魔物の群れを焼き払った。
サーリィはティアさんの訓練を受けたことで、魔法の威力が格段に上昇していた。
国お抱えの上級魔術士に匹敵するんじゃないかってくらいの魔法を使いこなしている。
たった一日、二日の訓練でここまで強くなるなんて信じられないことだ。
「グランドテンペスト!!」
タミアも同じく、上級魔法を使いこなして魔物を殲滅していた。二人とも、ついこないだまでは中級魔法を少し使えるくらいだったのに。
「すげえなサーリィ、タミア。お前らが一番活躍してるぞ。周りの連中も驚いているぜ」
レッグが二人を称賛した。
周囲の冒険者達も二人の活躍ぶりに息を呑んでいる。
「二人ともあまり無理はするなよ? 昨日のティアさんの訓練で疲れているはずだろ」
「ありがとシャクト。けど大丈夫よ、自分でも驚くくらい調子がいいんだから」
俺は無茶をしないように二人に言ったが、タミアは本当になんでもないように答えた。
サーリィも俺が心配する必要がないくらい調子が良さそうだ。
二人に負けないように俺も振る舞おう。
レッグも同じことを思ったのか、張り切って次々と向かってくる魔物を斬り倒している。
魔物の数は多いがゴブリンなどの下級の魔物ばかりなので、負傷者は出ているが犠牲者はまだ出さずに戦えている。
こういう時にティアさんの回復魔法が欲しくなるな。他の冒険者達もティアさんがいないことを嘆いている。
タイミング悪く出掛けてしまったからな。
ティアさんがこの事態に気付いて早く戻ってきてほしいと思ってしまう。
サーリィ、タミアの活躍を見て俺達冒険者や兵士達の士気も上がり、湧き出る魔物をどんどん倒していく。
魔物の数も目に見えて減っていき、このまま殲滅できる············そう思ったところで。
――――――――――!!!!!
森の木々を押し倒しながら大型の魔物が姿を現した。他の魔物とは比べ物にならないくらいの巨体。
全身が鋼のように頑丈そうな皮膚に覆われて、鋭い牙、剣のように長い爪を持つ魔物。
「グオオアアアーーッ!!!!!」
巨大な魔物が凄まじい咆哮を上げた。
その声だけで、周囲の木々が吹き飛びそうなくらい大きく揺れていた。
戦っていた冒険者達もその咆哮に足がすくんでしまう。俺も身体の震えを抑えられなかった。
「う、嘘だろ······!? なんでこんなところに竜が現れるんだよ······!?」
レッグが動揺して叫ぶように言う。
周りの人達も竜を前にして取り乱している。
俺も同じ気持ちだ。
魔物の中でももっとも強力な部類に入る竜種。
それがこんな町の近くに現れるなんて本来ありえないことだ。
俺は最悪の事態も覚悟した。




