16 異変の元凶
冒険者ギルドにスタンピードの予兆を報告した翌日。私は再び森の奥地まで来ていた。
今回はサーリィちゃんとタミアちゃんは連れて来ていない、私一人だよ。
ちょ〜っとばかし気になることがあったからね。
杞憂ならいいんだけど、私の予想通りだと厄介なことになるかもなんだよね。
「ブルルルッ······!!!」
森の奥地まで来ると魔物がわんさか現れてくること。今、私の前にはブレードボアの上位種、グランドボアが唸りを上げているよ。
ブレードボアよりもさらに一回り大きく、体毛もより鋭利な刃物のようになっている、ベテラン冒険者が束になってかかっても倒せるかわからない危険な魔物だ。
とてもじゃないけど町の近くの森に生息するような魔物じゃないよ。
さらに周りには複数のブレードボアを従えている。
「「「ブルルアアーーッ!!!」」」
ブレードボア達が一斉に私に向かって突進してきた。避けようにも逃げ道がないね、こりゃあ。
「アブソリュート·ゼロ」
ちょっとばかし凍眠しててもらおうかね。
私は氷属性の範囲魔法を放ち、ブレードボア達を全員氷漬けにした。
「ブルルルルッッッ!!!」
残ったボスのグランドボアは今ので私の力を理解したみたいだね。
さっきまでの獲物を狙う目ではなく、怯えた様子を見せている。
「悪いけど、君もしばらく眠っててね」
グランドボアも同じように氷漬けにした。
ま、暖かくなれば氷も溶けて目覚めることができるだろうさね。
さて、邪魔者はおとなしくなったし早いところあの場所を確認しに行こうかね。
その後も何度か魔物に襲われながらも私は先に進んだ。そうして目的の場所までたどり着いた。
「やっぱり復活しちゃってるみたいだね〜······」
嫌な予感ってのは当たるものだね。
森の奥地の少し拓けた場所、私の前には巨大な魔法陣が光を放っていた。
この魔法陣は当時のスタンピードの原因とも言うべきもの。
簡単に言えば魔物を呼び出す召喚魔法陣だね。
かつて魔王が魔物の大軍団を召喚するために作り出したものだ。
500年前に勇者と当時の仲間達と共に魔王を激戦の末にこの地から追い払い、魔法陣は消滅させた。
しかしそれから時は流れ、数十年前に魔王軍の残党がこの魔法陣を復活させ、そこから大量の魔物が現れたのだ。
それが当時のスタンピード。
勇者も仲間達ももういなかったから私一人で頑張ったんだよ。
魔物も魔王軍の残党もすべて倒して魔法陣も再び消滅させた············はずなんだけど見事に復活しちゃってるね。
魔王の作り出した魔法陣は強力で、消滅させても条件が揃えば効力を取り戻しちゃうんだよね。
ま、私の呪いだって500年間も効果があるんだし、さすがは魔王ってとこかな?
――――――――――!!!
魔法陣から新たな魔物が次々と湧き出してきた。
おっと、悠長に考えている場合じゃなさそうだね。
サクッと倒して魔法陣も消しちゃいますかね。




