10 新たな弟子
昨日一日の特訓でサーリィちゃんの潜在魔力がグ〜ンと上がったよ。
特訓前より倍くらいにはなったんじゃないかな。
魔力切れになるまで消耗した後、回復したら魔力の最大量が上がるからね。
何回も魔力切れ、回復を繰り返したから最後の方は完全回復しても精神的にヘトヘトだったね。
けど魔力は大幅に上がったし、中級魔法も使える属性が増えていたし、かなり強くなったのは間違いないよ。
これで後は自信をつけてくれればいいんだけど。
――――――――――!! !!
部屋の扉が少し強めにノックされた。
お客さんかな?
ちなみに私は今、宿屋の一室にいる。今はお昼を過ぎたくらいの時間帯だ。
この町に着いてからは宿屋での生活を満喫しているよ。お金には余裕があるからちょっと良い宿に泊まってる。
まあ、元いた王国での暮らしに比べたら見劣りしちゃうけどね。
勇者に出会う前の冒険者になりたての頃は宿で泊まるどころか、そんなお金もなく野宿ばっかりだったな〜。
私も贅沢になったものだよ。
おっと、それよりも来客だったね。
どちら様かな?
「はいは〜い、今出るよ」
扉を開けるとサーリィちゃんともう一人、タミアちゃんがいた。
おやおや? 何か様子が変だね。
昨日、サーリィちゃんから今日の午前中にシャクト君達と冒険者ギルドの依頼を受けるとか聞いていたけど、もしかして昨日の特訓が原因で何かトラブルでもあったとか?
一応、特製の疲労回復薬を渡しておいたから、疲れは残らないと思ったんだけど。
「ねえ、サーリィに何したの?」
「ん? どういう意味だい?」
開口一番にタミアちゃんがそう言った。
何したって何がだい?
「サーリィの魔法が信じられないくらい強くなっていたことよ。いつもはもっと苦戦するような魔物を一発で倒したりして、魔力の上がり方が異常すぎるわよ。どんな特訓したらこんなことになるのよ?」
問題でも起きたのかと思ったらその逆で、サーリィちゃんが大活躍したみたいだね。良いことじゃないか。
「あっはっはっ! 大したことはしていないよ? 魔力切れになるまで魔法の撃ち込みを繰り返しただけさね」
大したことはしていない、という言葉にサーリィちゃんは何か言いたげだったけど本当に大したことじゃないんだよ?
私が弟子達にしてきた特訓はこんなものじゃないからね。昨日のは潜在魔力を上昇させるための基礎中の基礎だよ。
サーリィちゃんの魔力は倍どころか数倍以上に跳ね上がっていたみたいだね。
ちょっと張り切り過ぎちゃったかな?
「それで? サーリィちゃんが強くなっていたから何か問題でもあるのかい?」
「問題はないけど、その······」
「ははぁ〜、もしかしなくてもタミアちゃんも強くなりたいと思ってるのかな?」
私の言葉にタミアちゃんはビクッと反応を見せた。どうやら図星みたいだね。
同じパーティーのサーリィちゃんが圧倒的に強くなったのが羨ましいみたいだ。
うんうん、そういう向上心を持つことは良いことだよ。
よ〜し、ここはおねえさんが二人を最高の魔術士に鍛え上げようじゃないか。




