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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第三章 青白の嘆きトリステッツァと白銀世界

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魔界貴族侯爵『ゆらゆら』のシュプレーと『遊戯』のルードス④/戦い方

「───……ッッ!!」


 なに、コイツ。

 シュプレーは、日傘の先端から魔力の塊を連射し、八咫烏を追い込んでいた……が、実際には追い込むどころか、かすり傷一つ付けられなかった。

 八咫烏。

 聖剣士なのに、弓を使う妙な敵。

 パレットアイズ配下の侯爵級を何人か倒したとは聞いていたが、正直なところそこまでの実力者とは思えなかった……が、その評価は違っていた。

 

『───』

「ッ!!」


 八咫烏が懐から取り出したのは、黒い玉。

 それを床に叩き付けると、黒い煙が一気に吹き上がる。

 煙玉。八咫烏の姿が見えなくなると、どこからともなく『矢』が飛んで来た。


「ああもう、めんどくさぁい!!」


 日傘を畳んで振り回すと、煙が一気に晴れる。

 そして、再び矢が飛んで来た。それを、身体をねじって躱すシュプレー。


「こいつ……ッ」


 八咫烏は、自分をよく理解している。

 武器は矢。接近戦には向かないと理解している。だから、視覚を奪い、遠距離からの狙撃でシュプレーに攻撃を繰り返している。

 しかも、ただの矢ではない。


「なに、これ……ッ!?」


 飛んできたのは、十本の『魔喰矢(グロトネリア)』だ。意志を持ったように不規則な軌道で暴れまわり、シュプレーに喰らいつこうとする。

 そして、『時空矢(アイオーン)』が十本以上。こちらは、どこからともなく現れては、シュプレーの心臓、頭、首などを狙って飛んでくる。

 飛んでくる、という表現は正しくない。まるで、距離を無視するかのように、唐突に現れてはシュプレーの身体に突き刺さろうとする。

 シュプレーは、魔力で身体強化をし、高速で日傘を振るって矢を叩き落す。


「何、これっ……」


 会話はない。

 八咫烏は、『シュプレーを殺す』ことしか考えていない。

 冷酷な、獲物を狙う狩人。これから狩る獲物相手に、会話をしようという狩人は存在しない。

 八咫烏───ロイは、軽く呼吸を整える。


『……いつの間に、こんなに『暴食』を使いこなせるように』


 デスゲイズが驚愕していた。

 大罪権能の一つ『暴食』の力は、『あらゆるモノを食う矢』を精製することができる。だが、精製に必要な力は、ロイが振り絞らなくてはならない。

 すでに、三十以上の『矢』を精製しており、疲労も濃いはず。なのに……ロイは汗もかかず、ただシュプレーを狩ることしか考えていない。

 

『お前、ずっと考えていたな? 聖剣士が、エレノアたちがいない場合、自分がいかに接近して戦えるかを……』

(まあな)

『なんてやつ……』


 そう、ロイは想定していた。

 きっと、エレノアたちではない、自分が真正面から魔界貴族と戦うことになると。

 援護だけじゃない。ロイが、八咫烏として魔界貴族と戦うための方法が必要になると。

 そのために、姿をくらます煙玉を準備した。

 シュプレーは舌打ちし、傘を思いきり振り回す。すると、煙が一気に晴れた。


「面白いじゃなぁい」

『…………』

「でもぉ……あたし、まだまだ本気じゃないのよ? 『ゆらゆら』」

「!!」


 ロイは横っ飛びした。

 すると、ロイがいた地面が、空間ごと揺れていた(・・・・・・・・・)

 言葉にするのは難しい。地面がくり抜かれ、シーソーのように揺れ、周囲の景色まで切り抜かれたようにユラユラと揺れていたのだ。


「あたしは『ゆらゆら』のシュプレー。あたしはねぇ? いろんなものを『揺らす』ことができる。地面も、空間も、人も、命も───あたしにとって、ただの振り子みたいなもの」

『…………』

「揺れてみる? 『ゆらゆら』」


 ロイは再び横っ飛び。すると、空間が揺れていた。

 喰らうとまずい───ロイは身体強化を施し、矢を三本抜く。

 三発同時に矢を放つが、シュプレーが指を鳴らすと、矢が止まり不自然に揺れる。

 そして、ロイが四発目の矢を放つ。これは揺らすことができず、シュプレーは首をひねって回避……ニヤリと笑い、指を慣らした。


「~~~っ!?」

「ふふふ、捕まえたぁ」

 

 喰らった。

 ロイの立つ地面、空間が揺れる。

 視界が揺れる。不思議と身体は安定しており、立つことはできる……が、視界がブレまくり、とてもじゃないが狙いが定まらない。


「なぁんだ。大したことないじゃない……ま、弓矢の腕前がいいのは褒めてあげる。それにしても……聖剣士、なのよねぇ? なんというか、見たことのない力……」

『…………』

「ね、何も言わないの?」


 八咫烏は、矢筒から矢を抜き、番える。

 そして、揺れる視界の中、シュプレーに向けた。


「当たると思う?」

『……ああ』

「じゃあ、当ててみるぅ? ほらほら、あたしの心臓はここ、ここよ」


 シュプレーは、胸を指でトントンする。

 勝利を確信している。だが───八咫烏は、ロイは言う。


『死ね』


 放たれた矢は、シュプレーに触れることなく、顔の横を通り抜けた。

 シュプレーはクスクス笑い、ロイに向かって言う。


「残念でし


 次の瞬間、真っ赤に燃えるバーナーブレードがシュプレーの背中に突き刺さり、心臓を破壊して胸から飛び出した。


「ぶぐバァァァッ!? にゃ、ニャんで……ッ!?」


 吐血。

 心臓が破壊され、シュプレーの身体が青く燃え始める。

 背後にいたのは、エレノア。そして、ユノ。

 全く、全く気付かなかった。

 シュプレーが振り返ると、エレノアが勝利を確信したように笑っていた。


「あたしたちに気付かなかったのも仕方ないわ。まぁ、正直バレると思ったけど……八咫烏の誘導が、ここまで上手くいくなんて、あたしたちですら驚いてるもん」

「ッ、ッッ……」

「これ、見て」


 ユノが地面を指さし、スーッとなぞっていく。

 地面は凍り付いていた。そして、この部屋のドアがロイの矢によって破壊されていた。

 ドアの開く音すら警戒し、地面を静かに滑ることで足音を消して接近。ロイは、エレノアたちに注意が向かないよう、ひたすらシュプレーを引き付けていた。

 

「あ、ハハハ……して、やられた、わぁ。まさか、あたし、が……コン、な、ところ……で、ェ」


 シュプレーの身体が一気に燃え上がり、完全に消滅した。そして、ワクチンサンプルが2つ、コロンと落ちる。

 そして、エレノアがそれを拾って息を吐いた。


「あ~……勝ったぁ」

『お疲れさん』

「ってか、絶対に気付かれると思ったわ……あんた、自分に注意向けるの上手すぎ。あたしらだけだったら、絶対に勝てなかったわ」

『かなりの強敵だった。事前に『揺れる力』を見ていたから対処できたってのもあるし、こいつは俺を舐めていたから、いろいろな面で甘いところがあった。最初から本気で殺しにかかれば、負けていたのは間違いなくこっちだろうな』

「そっかぁ……やっとのことで『動く板』に乗って登ってきたと思ったら、戦う音聞こえてくるんだもん。びっくりしちゃった」


 エレノアがため息を吐き、八咫烏に言う。


「でも、勝ててよかった。ありがとね」

『お礼はいい』

「…………」

「ん、ユノ、どうしたの?」


 ユノが、八咫烏をジーっと見ていた。

 黒いコート、仮面、手に持つ弓を何度か見て、コテンと首を傾げた。


「ロイ?」


 いきなり出てきた言葉に、八咫烏は硬直した。

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原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 言葉遣いを考えると「お」無しで『礼はいい』の方がいい感じがします [一言] まあバレないわけがないか 口封じしてるとはいえ知ってる人間が増えるのは危険だけど ユノも元々ロイと仲がいいか…
[良い点] 更新ありがとうございます(‐人‐) [気になる点] 普通に消去法でいえばロイしかおらんわな [一言] もう誤魔化しようがないのでは?
2022/10/28 07:33 退会済み
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