表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/230

ユノ・レイピアーゼ

 ロイは、ショッピングモールに行かず、校舎内にあった売店でお菓子を買った。

 ウキウキしながら、クッキーの包みを見るロイ。すると、デスゲイズが言う。


『菓子で何を喜んでいる?』

「あのな、俺は今まで菓子なんてほとんど食えなかったんだよ。お前のおかげで自由になる金はできたし、これからいっぱい食わせてもらうさ」

『寂しい食生活だったのだな』

「やかましい……否定できないけど」

『菓子が欲しいのなら、地下ショッピングモールとやらに行けばいいではないか』

「ヤダよ。だって……クラスの連中と会ったら嫌だろうが」


 地下ショッピングモール。

 聖剣レジェンディア学園は、地下に巨大ショッピングモールがある。

 飲食店はもちろん、雑貨関係、服飾関係、パン屋に八百屋、肉屋に宿屋と何でもそろっている。きっと、新入生の半数以上が、これから親睦会を開くのだろう。

 だが、ロイは一人でお菓子を食べようとしていた。


『お前は社交性がない「ぼっち」というヤツなんだな』

「ぐっ…………」


 木刀をへし折ろうと思ったが、なぜか胸が痛くできないロイだった。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 ロイは、学園内にある公園に来た。

 ベンチや東屋があり、大きな噴水もある公園だ。現在、公園内にはロイしかない。上級生は授業中で、新入生はショッピングモールで買い物や親睦会の真っ最中だろう。

 適当なベンチに座ってお菓子を食べよう、そう考えていると。


「…………ん?」


 東屋のベンチに、誰かがいた。

 倒れているのか、横になっている。

 傍には、見覚えのある聖剣が立て掛けてあった。


「あの子、確か……」

『氷聖剣の使い手だな』


 ユノ・レイピアーゼ。

 氷聖剣の使い手が、ベンチに横になってスヤスヤ眠っていた。

 

「帰ったのかと思ったけど、こんなところで昼寝……ぅ」


 ロイは目を反らす。

 なぜなら、ユノは身体を丸めるように横になっていたので、スカートから下着がチラチラ見えている。薄い水色……と、ロイはそっぽ向きながら思った。

 すると、ユノがパチッと目を開けて起き上がり、ロイを見た。


「げっ、あ、いや……み、見てない、見てないぞ」

『完全な不審者だな』

「う、うるさい!!」


 木刀を小突くロイを、ジーっと見るユノ。

 そして、クンクンと匂いを嗅ぎながらロイに近づき、ロイの持っていた袋をジッと見た。


「……お菓子、持ってるの?」

「え? あ、ああ……」

「…………いいなー」

「あー、食べるか? いっぱいあるし」

「いいの?」

「あ、ああ。その……お詫びに」

「おわび?」


 下着を見たお詫び、とは口が裂けても言えない。

 ロイは、東屋のテーブルにお菓子を並べた。

 クッキー、チョコ、あめ玉に、いろいろな菓子パンも豊富にある。


「おおお……!!」

「飲み物ないとキツイよな。ちょっと待ってて」


 ロイは、飲み物を買いに購買へ走りだす。

 お菓子を買った店で、甘めの果実水を買って公園に戻ると……。


「お腹いっぱい……」

「え」


 大量にあったお菓子が、すっかりなくなっていた。

 ほんの五分ほどで、ユノはお菓子を完食……これには、ロイも。


「お、俺のぶん……」

「あ、ごめん」

「…………」


 とりあえず、果実水を渡すと、ユノはゴクゴク飲み始めた。

 どこか幸せそうに、笑顔で果実水を飲む姿に毒気を抜かれ、ロイは座って自分の果実水を飲み始める。すると、飲み終えたユノが、ロイをジッと見た。


「ありがとね」

「ああ、腹減ってたのか?」

「うん。お菓子、大好き」

「そっか……ここでは、昼寝を?」

「うん。親睦会とか面倒だし、眠いから。あなた……あ、名前」

「俺はロイ。きみと同じクラスだ」

「新入生……わたし、ユノ。よろしくね、ロイ」

「ああ、よろしく、ユノ」


 ロイは、氷聖剣の使い手に挨拶した……まさか、お菓子で仲良くなれるとは、思っていなかった。

 チラリと聖剣を見ると、ユノは言う。


「聖剣、触る?」

「え……」

「氷聖剣、みんなジロジロ見る。ロイは優しいし、お菓子いっぱいくれたから、触っていいよ」

「い、いや……遠慮しとく」

「ロイの聖剣は?」

「俺のは、このボロ木刀。触っていいよ」

『おい貴様、ボロとは何だボロとは。何度も言うが、我輩は」


 と、ユノがひょいっとロイの木刀を掴む。

 

「軽い……」

「木刀だからな」

「能力は? 属性は?」

「あー……まだ」

「属性……なにこれ、何も感じない」

「あはは。ほとんど廃棄されてるような聖剣だからな」

『おい貴様、馬鹿にするなよ。我輩は』


 デスゲイズが喋っているが、やはりユノには聞こえていない。

 改めて見ても、妙な剣だ。

 本人は魔王とか言っているが、五人目の魔王なんて聞いたことがない。

 ロイとしては、『意志』が能力だと思っている。属性がないのは、まだよくわからない。


「聖剣には属性と、それぞれ固有の能力がある。でも、この剣……聖剣っぽい感じはするけど、よくわからないなー」

「まぁ、木刀だしな」

「わたしの聖剣は『氷』属性。能力はまだ目覚めてない」

「あ、ああ」


 なぜかドヤ顔だった。

 木刀を受け取ると、ユノはロイをジーっと見る。


「な、なんだ?」

「ロイ、不思議」

「え?」

「クラスのみんなは、わたしにいろいろ質問してきたり、ハバツとかいうのに入りたいとかうるさいけど、ロイは普通に接してくれる……なんだか、うれしい」

「あはは。そりゃ、俺は派閥なんて興味ないしな」

「じゃあ、ともだち?」

「……そうだな。ユノがそう望むなら、友達になって欲しい」

「うん。ロイは友達」


 ユノは、にっこり笑ってロイの腕を取った。

 距離が近く、腕が胸に当たっている……いきなりのことで、ロイは緊張で反応できない。

 

「あ、あの」

「ロイ、また一緒にお菓子食べてくれる?」

「あ。ああ……いつでも」

「うん。やくそく」


 こうして、ロイにユノという友人ができた。

お読み頂きありがとうございます!


この小説を読んで、「面白そう」「続きが気になる」と少しでも感じましたら、是非ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


読者様の応援が私の何よりのモチベーションとなりますので、是非よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
【コミカライズはこちらから↓】
gbxhl0f6gx3vh373c00w9dfqacmr_v9i_l4_9d_2xq3.jpg

web原作はこちらから!
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

ニコニコ静画さんでも連載中。こちら↓から飛べます!
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~


お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
冒頭からのウザキャラも御愛嬌でヨイヨイ
[良い点] 比較的丁寧に話が進む所 喋る剣がちょっと魔剣カオスを思い出せて懐かしい [気になる点] なんで主人公はオリハルコン貰ってるのにデスゲイズのこと1ミリも信じてあげないんですか?最低でも幼馴染…
[一言] お涙頂戴劇場だらだらしても ユーザー着いてこないような? プロローグに全部まとめた方が 読みやすい。 いくらなんでも本編までが長すぎて だんだん読む気力がなくなってきた
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ