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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第三章 青白の嘆きトリステッツァと白銀世界

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一方その頃①

 一方その頃。

 トラビア王国の生徒会室に戻ってきたロセとサリオス。そして、黒を基調としたコートを着た男が、テーブルの上に足を載せ、ソファでくつろいでいた。

 顔立ちは悪くない。ワイルド系のイケメンだろう。

 だが、頬に大きな傷があり、目つきも非常に悪い。

 生徒会長席の椅子に座るロセと、その傍に立つサリオスだが……サリオスは警戒していた。

 男の名はスヴァルト。闇聖剣アンダンテの所持者で、七聖剣士の一人。


「んだよ、ガキ」

「えっ」

「喧嘩売ってんのか? ヒヨッコのくせに生意気だな、オイ」


 スヴァルトは、足を乗せていたテーブルを蹴った。

 テーブルは吹っ飛び壁に激突し砕ける。だが、スヴァルトは気にせず立ち上がり、サリオスをギロリと睨む……サリオスがジッと見ていたことが、気に食わないようだ。

 だが、それ以上にロセが笑っていた。


「スヴァルト。その机、生徒会の備品なんだけど?」

「そのガキ王子に請求しな。王子様で、カネ持ってんだろ?」

「スヴァルト?」

「あ? んだよ、乳デカハーフのドワーフちゃんよぉ?」


 ベギャッ!! と、ロセがマグカップを素手で砕いた。

 笑顔のまま、怒気と殺意を漲らせて。

 すると、スヴァルトが楽しそうに顔を歪め、ソファに座った。


「こえーこえー、んだよ、いい顔すんじゃねぇか。死にかけたって聞いて、国ぃ抜け出して来てやったのに」

「あなたといい、ララベルといい、どうして私の同期は問題児なのかしら」

「ララベル? ああ、あの板女。まだ死んでねぇのか?」

「ええ。里帰りしたわ……あなたが来る前でよかったわ。あなたとララベルの殺し合いを仲裁するの、もうウンザリだったしね」


 ロセはニッコリ笑う。

 サリオスが「板女?」と首を傾げていたが、見ないふりをした。


「で、何か用? これからご飯食べに行くの。手短にね」

「メシ? いいな、オレも「あなたと食事なんて御免だわ」……つれないねぇ」


 スヴァルトは肩をすくめた。

 そして、ソファに深く座り直して言う。


「レイピアーゼ王国に魔王が出る。遊びに行こうぜ」

「…………」

「お? なんだ、初耳か?」

「それだけ? なら、ここで失礼するわ。サリオスくん、行きましょう」

「あ、は、はい」

「おいおいおい、つれねぇな」

「あなたの言葉、信じると思う?」


 それだけ言い、ロセとサリオスは生徒会室を出た。

 スヴァルトは「確かに」と言い、大きな欠伸をした。


 ◇◇◇◇◇


 サリオスとロセは、ロセ行きつけの焼き肉屋にやって来た……のだが。


「なんであなたもいるの?」

「ハラ減ったからに決まってんだろ」


 そこに、スヴァルトも付いてきた。

 せっかく二人きりだったのに……と、サリオスはスヴァルトをチラッと見る。

 すると、スヴァルトがニヤリと笑い、サリオスの背中をバンバン叩く。


「悪ィなぁ? せっかくのデートを邪魔しちまって」

「……いえ」

「あぁん? なんだお前、ビビッてんのか? 今回の光聖剣サザーランドの所持者は、こんなビビリ少年かよ。先行き不安だなぁオイ。ロセ」

「やめなさい」

「ハッ、そういやお前、年下好きだったなぁ? コイツ、喰ったのか?」


 次の瞬間、スヴァルトの腕が掴まれ、ギリギリと握りしめられる。


「やめなさい」

「おーこわっ、わかったわかった」


 万力のような力でねじり上げられているのに、スヴァルトは痛がりもせずに笑っていた。

 何なんだ、こいつ。

 それがサリオスの、スヴァルトに対する感想だった。

 焼き肉屋に到着し、なんだかんだで三人っで座る。

 店員に肉を注文し焼き始めるのだが、スヴァルトはここでもニヤニヤしていた。


「お前、相変わらず肉好きだな。そのくせ乳以外は細っこい……そんな食ったらまたデカくなるぜ?」

「うるさいわね。というか、あなたも大食漢の癖にガリガリで、男として恥ずかしくないのかしら?」

「あぁ!? オレは痩せてねぇ。細マッチョなんだよ!!」

「あーらごめんなさいね。ささ、サリオスくん、いっぱい食べて」

「あ、はい」

「おいこらロセ!! テメェ、表出やがれ!! オレはガリガリじゃねぇ!!」


 よくわからないが、スヴァルトに『瘦せている』は禁句のようだ。

 確かに、首は細いし袖から見える手首も、指も細い。肉が付きにくい体質なのだろうか。

 

「ったく、あとで覚えてやがれ。ホントにお前は、ララベルとは違った意味で口が悪ィ……」

「それはあなたもでしょ。あ、言っておくけど、あなたは奢りじゃないから」

「何ぃ!?」

「…………あの」


 サリオスは、聞いてみたくなった。

 ロセとスヴァルト。最初は険悪に見えたが……不思議と、悪い雰囲気ではない。


「お二人は、同期……なんですよね?」

「そうねぇ。正確には、私とララベルとスヴァルトの三人が同期なの」

「ケッ……学園最強の三人なんて言われたなぁ? 互いの国じゃ半端モンって言われたオレらが」

「……半端、もの?」

「ああ。知ってんだろ?」

 

 ここで、スヴァルトは焦げそうな肉を全部皿に乗せ、新しい肉を網の上に置く。会話に夢中で肉が焦げていたことに、スヴァルトだけが気付いていた。


「ロセはハーフドワーフ、ララベルはハーフエルフ。んでオレはハーフヴァンパイアだ。ヴァンパイア、知ってるか?」

「はい。確か、黒聖剣が守護する、夜の国と呼ばれているナハト王国の固有種ですね」

「ああ。オレは人間とヴァンパイアのハーフだ」


 スヴァルトは焦げた肉を全て食べ、網の上の肉をひっくり返す。

 いい感じに焼けた肉を、サリオスとロセの皿に置いた。


「聖剣に選ばれたモン同士、気が合ってな……」

「あなた、私とララベルのこと、口説いてばかりだったわねぇ」

「そりゃそうだ。そのデカイ乳を見たら、口説きたくなるってもんだ」

「……最低」


 ロセは胸を庇うように両手で隠すが、スヴァルトは笑っていた。

 不思議と、恐怖が抜けていくような……気心の知れた間柄で見せるようなやり取りだった。

 肉を食べ終わり、食後のお茶を飲んでいると。


「スヴァルト。さっきの話だけど」

「あぁ?」

「レイピアーゼ王国」

「ああ……信じないんじゃなかったのか?」

「聞くだけ聞いてあげる。でも、私はドワーフの国に帰るし、サリオスくんも公務があるから、手助けは難しいでしょうね。それに、トラビア王国にダンジョンが現れた時に、どの国も手助けしてくれなかったし……レイピアーゼ王国が魔王の脅威にさらされていても、国は動かないかも」

「ハッ、国の危機に冷たいねぇ」


 スヴァルトは水を一気飲みし、おかわりを要求する。


「うちの情報班がレイピアーゼ王国に送ってる密偵から得た情報だ。『嘆きの魔王』の眷属である魔界貴族の痕跡が、見つかったとさ。で、嘆きの魔王の標的はレイピアーゼ王国でほぼ決定……くくっ、あそこが『疫病』に支配されるのは、百年ぶりだったか? 何人死ぬかねぇ?」

「え、疫病……」


 サリオスも、聞いたことがある。

 人間が経験のしたことがない疫病を流行させる魔王の話を。


「なるほどね……」

「どうするよ?」

「あなたは?」

「オレは行くぜ? 快楽の魔王んときは出番なかったし、国に軟禁されてたからな」

「…………」

「高速艇は明日出発だ。行くなら明日の朝、乗り場まで来い。じゃあな」


 そう言って、スヴァルトは伝票を掴んで立ち上がった。


 ◇◇◇◇◇


 焼肉店の帰り、ロセとサリオスは歩いていた。


「先輩、アイツ……何なんですか?」

「スヴァルト?」

「はい。あんな、失礼な奴……さっき言った話も、本当なのかどうか」

「ふふ。きっと本当よ? そして、スヴァルトはレイピアーゼ王国の人たちを助けたいから、ナハト王国から抜け出してきたのねぇ」

「……え」

「スヴァルトは、そういう子なの。悪ぶってるけど、誰よりも優しい。気付いた? 焼肉店で、お肉焼いて私たちのお皿に乗せてくれたり、何も言わずに奢ってくれたり……きっと、スヴァルトはサリオスくんの歓迎をしてくれたのねぇ」

「え、えぇ……?」


 そんなわけあるか、と言いたかった。

 でも、ロセが言うならそうなのだろう。


「……明日、かぁ」

「ろ、ロセ先輩?」


 まさか───……行かないよな?

 サリオスはそう思いつつ、なぜか自分のスケジュールを思い出していた。

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― 新着の感想 ―
[一言] >スヴァルト …なんだただのツンデレか >板女 いいんだよ、エルフはすとーん、ダークエルフはぼんきゅっぼん、これが世の理なんだから(違
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