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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第三章 青白の嘆きトリステッツァと白銀世界

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自由行動

「ではロイ君。この宿は好きに使っていい。滞在費も支給するので、食事などに使ってくれ。そうだな……エレノア君は三日ほど、ユノは十五日ほど預かることになる。それまで待っててくれ」

「は、はい……あの、この宿、ですか?

「そうだが……」


 レイピアーゼ聖剣騎士団の高速魔法艇でレイピアーゼ王国王都に到着。案内された宿でロイは、宿を見上げてポカンと口を開けていた。

 四階建ての立派な宿だ。煉瓦造りで、屋根には雪が積もり、煙突から魔力の残滓が立ち上っている。ここでは薪を燃やすのではなく、魔石による暖房なので、魔石の魔力が煙突から出るのだ。

 マリアは、少し困ったように微笑んだ。


「すまんな。貸し切れるのはこの宿だけだった」

「いやいやいやいや、貸し切り!? 部屋一つでいいっすよ!? 貸し切り!?」

「だが、もう料金は支払ってしまったしな……自由にしてくれ」

「…………」


 町のほぼ中心にある宿なので、人気の宿なのは違いない。

 そこを貸し切り……王族ならではの発想なのか、ロイには考えられなかった。

 すると、ユノが近づきロイの袖を引く。


「ロイ。早く終わらせてくるから。終わったら遊ぼうね」

「ああ。気を付けてな」

「ん……」

「ん?」


 ユノが、頭を突き出すように向けて来た。

 よくわからず首を傾げると、デスゲイズが言う。


『撫でろ、と言ってるんじゃないのか?』

「えぇ?」

「ん」

「…………(なでなで)」

「~♪」


 とりあえず軽く撫でると、ユノは嬉しそうにはにかんだ。

 すると、エレノアがムスッとしながら言う。


「ったく。ロイのスケベ」

「い、いや、撫でてるだけだろ?」

「ふん!! ほらユノ、マリアさん、行きましょ!!」

「ふふ、若いな」

「じゃあね、ロイ」


 マリアたちは王城へ。すると、エレノアが戻ってきた。


「ロイ、デスゲイズ……魔王、来ると思う?」

『恐らくな。トリステッツァの手番なのは間違いない。レイピアーゼ王国が狙われるというのは噂のみの情報だから確信はないが……奴は基本、陰気な場所を好む。レイピアーゼ王国のような場所はうってつけだ』

「ここ、陰気か?」

「あたしにはわかんないわ……ま、ヤバかったらすぐ呼んで。あんたが表に立って戦うより、八咫烏としてあたしの援護したほうがやりやすいでしょ」

「さすがエレノア。期待してる」

「ええ。じゃ……」


 と、エレノアが頭を突き出してきた。

 ロイは「えっ」と驚き、恐る恐る手を伸ばすが……エレノアの頭に触れる直前で、頭が引っ込んだ。


「ふふ、冗談よ」

「あ、き、きったねぇ」

「あはは。またね」


 エレノアは行ってしまった。

 ロイはエレノアたちが見えなくなるまで見送る。


「……あんまり寒くないけど、雪国なのは変わりない。せっかく貸し切りの宿だし、部屋であったかいお茶でも飲もうかな」


 ロイは、貸し切りの宿へ入っていく。


 ◇◇◇◇◇


 宿で一番広く、高級な部屋に入るなり、ロイはベッドへ飛び込む。

 ふかふかなベッド。暖かい部屋。自由な時間……異国の地で誰もいない自分だけの時間を満喫する。

 すると、ベッドに放り出されたデスゲイズが言う。


『さて、情報収集だ。ロイ、魔界貴族を探すぞ。外に出ろ』

「アホかお前は……外、かなり寒いぞ」

『知らん。とにかく、トリステッツァの手番では『疫病』や『伝染病』が大流行するぞ。一度病気が発生すれば、奴の配下である魔界貴族が持つワクチンを全て入手しないと助からんぞ。かつての七聖剣士は、病に侵されながらも戦い、四人が死んだところでようやくワクチンを入手できた……さて、今回はどうなることやら』

「お、おま……それ、マジか」

『ああ。まぁ、どの国も知っていることだ。対策は練るだろうが、ほとんど無駄になっている。なんせ、トリステッツァの側近である魔界貴族公爵『疫病』のネルガルは、人類が経験したことのない病を大流行させるのが得意だからな。それに……ここが本当に、トリステッツァの狙いの地だとしたら、マズいと思うぞ?』

「な、なんでだよ」

『忘れたのか?』


 ロイはベッドから起き上がり、デスゲイズを手に取る。


『パレットアイズのダンジョンが現れた時、各国は助けるどころか完全に放置していたぞ。もし、このレイピアーゼ王国が狙われても、トラビア王国はおろか、各国が助けに来る可能性はゼロだろうな。つまり……ここで戦えるのは、お前とエレノアとユノ。それと、マリアとかいう女騎士くらいだろうな。戦力的に厳しすぎる』

「あ……」

『前回はダンジョンの管理人という閉鎖的な場所で狙撃できたが……今回は難しいな。さて、どうなることやら』

「お、おい……かなりマズいだろ」

『ああ。エレノアたちも、似たような話を聞くんじゃないか?』

「いや、ユノは氷聖剣を騎士たちに見せるだけって……鼓舞するとか」

『馬鹿か。それだけのはずがあるわけない』

「…………」


 ロイはようやく、この国が魔王の『手番』によって狙われている可能性を真剣に考えた。

 パレットアイズの時とは違う。

 サリオスも、ロセも、ララベルもいない。まだ見ぬ七聖剣士である『雷』と『闇』がたまたま現れるなんて奇跡も期待できない。

 

「……や、やばいよな」

『だからこそ、お前が、『八咫烏』が切り札になる。頼むぞロイ、我輩ではなく、お前がトリステッツァを討て』


 ロイはゴクリと唾を飲み、落ち着くために深呼吸をした。


 ◇◇◇◇◇


 レイピアーゼ王城。

 正門からエレノアは城を見上げ、「ほぇ~」と声を出した。

 マリアはクスっと笑う。


「エレノア君、どうした?」

「あ、いえ。その、独創的なお城だなぁ~って」


 レイピアーゼ王城は、煉瓦作りの立派な城だった。

 しかも、煉瓦の色が白く、城というよりは砦のような形状をしている。

 正門が開き、城へ通じる桟橋を歩く。桟橋の下は川が流れており、驚いたことに魚が泳いでいた。


「すぐに謁見となる。二人とも、準備はいいな?」

「あ、はい」

「…………」

「ユノ、いいな?」

「はぁい」


 ユノは嫌そうにそっぽ向いて返事をした。

 エレノアは聞いていた。

 ユノの今の父親はレイピアーゼ国王。もうすぐ王位を兄に渡すらしい。

 氷聖剣に選ばれたユノを、今の父親から引き取ったという経緯がある。つまり、ユノの父親は三人……故人である本当の父親と、ユノを育てた父親、そしてユノを引き取った国王だ。

 ユノ曰く、国王はユノを『聖剣に選ばれたから引き取った』としか思っていない。それに、今の父親も自分のところより、王女としての方がいい暮らしができるとユノを手放した。

 悪く言えば、たらい回し。

 

「義姉さん。わたし、義姉さんのお願いは聞くつもりだけど、あの人の話は聞きたくない」

「またお前はそんなことを……」

「だって、嫌なんだもん……」

「いいか、父上は……国王陛下は、確かにお前を『聖剣に選ばれた子』と見ている。だが……話してみてわかった。不器用なりに、お前を愛そうと」

「わたしは無理。愛せない。お父さんはお父さんだけ」

「……わかった。とにかく、話を聞くだけ聞いてやってくれ」

「……ん」

「えーっと……」


 あたし、すっごく居心地悪いです。

 そう言えず、エレノアは「あはは」と笑って二人の後ろを歩いていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりにまた読み始めました [気になる点] この期に及んで一枚岩になれてない人類ってどうなんだろうって思いますね……自国防衛で他国に戦力をまわせないならまだ理解できますけど [一言] 今…
2022/10/18 23:55 退会済み
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