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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第三章 青白の嘆きトリステッツァと白銀世界

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観光都市ラグーン②/魔族という存在

 ロイは、片付けをしている二人の魔族に近づくと……ロイの後ろから、二人の子供が飛びだし、目の前にいる魔族に抱きついた。


「パパ、ママ!」

「父ちゃん母ちゃん、今日もカッコよかったよ!」

「おお、ありがとうなあ」

「ふふ、お腹減ったでしょ? 帰ってご飯にしましょうね」


 息子と、娘。

 姉弟ではなかったのだろうか?

 すると、デスゲイズが言う。


『魔族で近親婚は珍しくない。血が濃い方が優秀な魔族が生まれるからな』

「そ、そうなのか?」


 ずっと、大道芸が終わるのを待っていたのだろう。少年は父親に頭を撫でられ、少女は母親に抱きついて甘えている。

 すると、魔族の男性がロイに気付き、にっこり笑った。


「おや、お客さんだね。私たちの芸はどうだった?」

「あ……はい、素晴らしかったです。その、人間技とは思えなくて」

「ははは! 大道芸だからね。普通の人間には真似できない技さ」

「そうだそうだ! 父ちゃんの技はすごいんだぞ!」

「こら、やめなさい」


 父親は、少年の頭をガシガシ撫でて黙らせる。

 慈愛に満ちた手だ。

 馬鹿にして、蔑み、叩くことしかしなかったロイの父とは違う。父親の暖かさをロイは感じ、少年に聞いていた。


「な、お父さんのこと、好きか?」

「あたりまえだろ! おれ、父ちゃんみたいな大道芸人になって、世界中を回るんだ!」

「……そうか」


 もう、疑う必要なんてなかった。

 ロイは、ポケットから大金貨を取り出し、少年が持っていた「おひねり箱」に入れた。

 大金貨。金貨百枚分で、平民なら一年以上、何もせずに暮らしていける金額だ。狩りで得た収入と、デスゲイズの『オリハルコン』を換金したお金を、旅行のために念のため持ってきたお金だ。

 大金貨に、父親と母親は驚愕する。


「あ、あの、今の……き、金貨ではなかったようですが。ま、間違えたのなら」


 わざわざ指摘するとは思わなかった。

 ロイは首を振る。


「いえ、楽しかったです。きみ……今日はごちそういっぱい食べられるぞ」

「え、ほんと?」

「ああ。じゃ、俺はこれで」

「あ、ありがとうございました!」

「にいちゃん、ばいばーい!」


 ロイは手を振り、その場から離れた。

 少し離れると、デスゲイズは言う。


『で、どうだった? 話してみて、何を思った?』

「優しい家族にしか見えなかったよ……」

『そうだ。あれが大多数の魔族。今までお前が相手にしてきた魔族は、全員がクズ共だ』

「…………」

『勘違いするなよ。お前が殺してきた魔界貴族にも、あんな家族が───とでも思っているのか? 魔界貴族に選ばれるのは総じてクズだけだ。爵位を与えるのはあの魔王共だぞ? いいか、お前にアレを見せたのは、後でお前が気付いた時に余計なことを考えないようにだ。忘れるな……魔界貴族と、魔王に同情するな』

「……ああ」


 ロイは、最後に一度だけ振り返る。

 そこには、手をつないで帰る、仲良し家族しか見えなかった。


「…………なぁ」

『何か言ったか?』

「……いや、別に」


 いいなぁ。

 そんな言葉が思わず漏れたロイは、照れから首をブンブン振った。


 ◇◇◇◇◇


 食事を終え、適当なカフェに入った。

 ある程度の予定は決めていたが、改めて確認する。


「ロイたち、三日しかいないんだよね。とりあえず明日は海で遊んで、次の日は買い物して、最終日は観光する感じだっけ?」

「だな。海かぁ……泳ぐの、久しぶりだな」

「あれ? ロイ、泳げるの?」


 ユイカに言われ、ロイは頷く。


「まぁな。実家の裏山にデカい湖あって、エレノアとよく泳いでた」

「懐かしいわねー、ここ数年はなかったけど」

「お前が嫌がったんだろ」

「ま、まあ……」


 ちなみに、エレノアがロイと泳ぐのを嫌がった理由は『胸が大きくなってきて恥ずかしかったから』であるが、そんなことは口が裂けても言えない。

 ユノは首を振る。


「わたし、泳げない。ロイに教えてもらう」

「いいけど。俺、人に教えたこととかないぞ」

「あたしも泳げないんだよねぇ。オルカは?」

「オレも無理。まぁ、波打ち際で遊ぶからいいけどな。それと、溺れたらロイに助けてもらうし」

「わたしも」

「ユノはあたしが助けてあげる。もちろんユイカもね」


 カフェで話し込み、夕方前になると、ユイカが「あ、そうだ」と言った。


「ね、いいところ案内してあげる。確か……こっちだっけ」


 カフェを出て、ユイカの案内で観光地外れの大きな公園へ。

 階段を上り、高台へ出ると───そこは、広場になっていた。

 そして、眼前に広がったのは広大なオアシス。さらに、沈みゆく夕日。


「わぁ……綺麗」

「ここ、おばさんに教えてもらった夕日のスポットなの。恋人同士がよく来るんだけど……今日はいないみたい。ふふ、あたしらの貸し切りだね」


 水平線がオレンジ色に染まり、太陽が沈んでいく。

 ロイたちは、太陽が沈むまでオアシスを眺め続けた。

 太陽が完全に沈み、夜が来る。

 だが、町の活気は昼間と変わらない。夜は酒場が賑わい、大人たちの時間だ。

 

「酒!! といきたいが……オレらには無理だし、無難にラグーン名物でも食おうぜ」

「名物ってなんだ?」

「そりゃ海産物さ。ラグーンの広大なオアシスは海と変わらない魚がわんさと泳いでるらしくて、船とか出して漁してるらしいぜ」

「オアシスなのに海の魚……マジか」

「マジ。オレも調べてびっくりだぜ」


 と、いうわけで。

 四人は海産物を満喫。離れに戻る頃には、ユノがうとうとしていた。

 

「ほらユノ、お風呂」

「ん~」

「今日は無理じゃない? 明日の朝にでもシャワー浴びればいいじゃん」

「そうね……ほらユノ、ベッドまで行くわよ」

「ん~……」


 エレノアに運ばれ、ユノは部屋へ。

 ロイとオルカはリビングで、倉庫にあったボードゲームをやり始める。ボードゲームは、駒を取り合うシンプルで簡単なゲームだった。

 すると、着替えを持ったエレノアとユイカが。


「じゃ、あたしとユイカ、お風呂入るから……わかってると思うけど、覗いたら斬る」

「こわっ……覗かないから入ってこいよ。俺、オルカと遊んでるからさ」

「じゃ、あとでね~」

「おう。って、ロイ待った!! その一手待った!!」

「やだね。くっくっく……明日、海で果実水おごりな」

「ぐぉぉぉっ!?」


 ロイとオルカの戦いは過熱……気が付くと、深夜になっていた。

 すでにエレノアとユイカは風呂から上がって部屋で寝ている。ボードゲームを片付けると、オルカが大きな欠伸をした。


「くぁぁぁ~……オレも寝るわ。ロイは?」

「俺、汗掻いたしシャワーだけ浴びて寝る」

「ああ、おやすみー」


 オルカはさっさと部屋に戻ってしまった。

 ロイも、部屋で着替えを取り、浴室へ。


「お、でかいな」


 もと宿舎なだけあり、風呂は大きい。三人くらいなら一緒に入れそうだ。

 デスゲイズは部屋に置き、ロイは一人でシャワーを浴び、少しぬるくなった浴槽へ。


「はぁ~……」


 今日は、いろいろあった。

 魔族についての認識を改めた。魔界貴族のような連中とは違う、人間と共に暮らす魔族もいる。

 だが……あの大道芸人が魔族だと知っている人間は、いるのだろうか。

 この世界が、魔族によって侵攻されていることは、子供でも知っている。

 あの大道芸人が魔族だと知られれば? 大道芸人は、家族は、子供は、どうなるのか?


「…………わっかんねぇ」


 考えても、仕方ないことだ。

 ロイにできるのは、魔王と魔界貴族を射抜き、七聖剣士の援護をすることだけ。

 なら、できることをやるだけだ。

 ロイはお湯を掬い、顔を洗う。


「さて、上が「ん~……」え」


 と───浴室のドアが開き、一糸まとわぬユノが入ってきた。


「ん~……」

「なななななな、ゆゆ、ユノ!? おま、ななな」

「ん~……」

「ちょっ!?」


 なんとユノは、フラフラしながら浴槽に近づき、そのまま頭から飛び込んだのだ。

 ドボン!! と、ロイの胸に飛び込むように倒れるユノ。


「ん~……」

「うぉあ!? おま、なに───ぅっ」


 裸。

 思い切り見てしまい、ロイは顔を反らす。

 ユノは「ん~…‥」と唸るような声を出し、そのままロイに甘えるように身体を預ける。


「ちょぉぉ!? おま、なに」

「……すぴー」

「…………寝てる」


 どうやら、寝ぼけているようだった。

 数分後、たまたまお手洗いに起きたユイカを呼び、ユノの身体を見ないように浴槽から出し、全てをユイカに任せてロイは逃げ出した。

 部屋に戻ると、デスゲイズが言った。


『何やら楽しそうな気配を感じたが……何があった?』

「…………お前には絶対言わん」


 こうして、ロイと仲間たちの、観光都市ラグーンでのバカンスが始まった。

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