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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第三章 青白の嘆きトリステッツァと白銀世界

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再戦

 期末試験が終わり、結果が配布された。

 試験は四教科。ロイは全ての試験でほぼ満点を取った。

 寝る前に毎日一時間、これまでの復習をするだけの勉強だが、かなり満足のいく結果だった。

 オルカ、ユイカは、満点とはいかないが、全体的に半分以上の点数を取っていた。


「これもロイのおかげだぜ!!」

「うんうん!! ありがとね、ロイ!!」

「ああ、これで夏季休暇、楽しめるな」

「おう!! まぁ……オレは宿の手伝いだけど」

「タダで泊まれるんだしいいでしょ別に。それに、最初はみんなで思いっきり遊べるんだから」

「まあな。よし!! テスト終わったし切り替えていくぜ!!」


 オルカは試験用紙を丸めてカバンの中へ。

 教室内は、すでに夏季休暇の話題で持ちきりだ。帰省する者、遊びに行く者、修行する者と、それぞれ休暇を過ごすようだ。

 すると、ユイカが言う。


「そういえば、ユノはどうなったの? 遊び、行けるの?」

「あー……今日、決まる」

「なんだ、まだわかんねーのか?」


 オルカとユイカは首を傾げる。

 二人は知らない。

 今日の放課後、ユノはマリアと再戦する。これでユノが負ければ、ユノは退学になりレイピアーゼ王国に帰り、フレム王国の王子と婚約し、七聖剣士としての役目を全うするための厳しい修行が始まる。

 だが、ユノが勝てば。

 聖剣レジェンディア学園がユノの学び舎に相応しいということになり、これまで通り学園に通うことができる。フレム王国王子との婚約も解消される。


「…………」


 ロイがユノを見ると、ユノは試験用紙を折りたたみ、カバンに入れていた。

 いつもは誰かが話しかけたりするのだが、今日は誰もいない。

 なんとなく、気付いているのだ。

 ユノの雰囲気が重苦しく、近寄りがたいということが。


「ユノ、大丈夫かなぁ」

「……大丈夫だろ」


 ロイは、ユノの背中を見ながら思った。

 きっと、ユノは───自分の未来を掴むために、この戦いに勝つと。


 ◇◇◇◇◇◇


 放課後。

 第一訓練場に集まったロイ、エレノア、サリオス、ロセ、ララベル。

 そして、向かい合うユノとマリア。

 二人の手には聖剣が握られている。


「───……ふむ、強くなったな」

「うん」

「ふふ、見違えるようだ。今回は私も、本気でかからねばな」


 互いに剣を構え、ロセが前に出た。

 

「では、開始の合図は私が……ルールは単純、どちらかが戦闘不能になった時点で終了です。それでは、用意はいいですか?」


 互いに無言。ロセは同意と受け取り、右手を上げた。


「それでは───……試合開始!!」

 

 合図と同時に、ユノとマリアは飛び出した。


「第一階梯魔法、『アイスブロック』!!」


 ユノの魔法。

 だが、マリアは身を捻って躱す。そして、捻った勢いで半回転し、そのままユノを斬りつける。

 ユノは一瞬でチャクラム形態に変えて受け、そのままチャクラムを振る。マリアのレイピアとユノのチャクラムがぶつかり合う音が響いた。


「別人のようだ」

「修行したから」


 ギンギンギン!! と、鉄の擦れる音が響く。

 僅かな会話。だが、マリアは笑っていた……ユノは、本当に強くなった。

 ギィン!! と、マリアの力を込めた大振りの一撃をユノはチャクラムを交差させて受け、そのままバックステップで距離を取り、鞭剣形態へ。


「『絶氷陣(ぜっひょうじん)(イバラ)』!!」


 鞭剣を高速で振り回し、攻撃する技。

 だが、マリアは聖剣を地面に突き立てた。


「『氷膜』」


 すると、冷気が膜のように広がり、半円形の薄い氷の膜となり、マリアを守る。

 冷気を瞬時に固めて『膜』や『盾』を作る能力。守りに特化した能力だ。

 ユノの鞭剣が全て弾かれる。

 ユノは剣をレイピアに戻すと、マリアの氷が割れた。同時に、マリアが突っ込んでくる───……本格的な攻撃に移るようだ。


「レイピアーゼ流細剣術、『ラ・フォル・ジュルネ』!!」


 連続突き───……だけじゃない。斬撃を加えた、マリアオリジナルの剣技だ。

 決めに来たなと、ロイは思った。

 ユノはどう捌くのか。

 するとユノは───ニヤリと笑った。


「いくよ義姉さん、『水祝(みずいわい)』!!」

「ぬっ!?」


 マリアの斬撃より速くユノはレイピアを一閃。すると、何もない空間に裂け目が現れ、勢いよく水が噴き出した。

 これにはマリアも驚き、技をキャンセルして水流を回避。だが、ユノはすでに行動に移っていた。


「『水祝』」

「くっ」


 マリアが避けた方向に斬撃を放ち、水流を追加する。

 マリアが回避する方向へ斬撃を放つ、放つ、放つ。マリアは防戦一方になり、ひたすら回避に徹する。

 そして、大量の水が噴き出した状態で、ユノは水流の一つを剣で斬った。


「『大流華(だいりゅうか)氷牢柱(シガバシラ)』」

「なっ!?」


 すると、幾重にも展開された水流が一瞬で凍り付き、いくつもの氷の柱となり訓練場を覆い尽くす。

 氷の柱がマリアを襲う前に、マリアは半円形の『氷膜』を展開。身を守った。

 だが───ユノは、笑って言った。


「わたしの勝ちだよ、義姉さん」

「───な」


 に? とは言えなかった。

 ユノが指をパチンと鳴らす。


「遠隔起動」


 ユノが命令を出した瞬間、マリアの立つ地面が裂け、勢いよく水が噴き出した。

 マリアがその場に立つのを計算し、予め地面を斬りつけていた。

 『大流華(だいりゅうか)氷牢柱(シガバシラ)』は完全な囮。本当の目的は、マリアを今の場所に立たせること。

 必ず、マリアは氷の膜で防御するとユノは思っていた。

 水の膜に覆われたマリア。勢いよく噴き出す水は、あっという間にマリアの下半身まで水が満たす。

 このままでは溺れる。マリアは水の膜を解除するが───すでにユノが、マリアの首にレイピアを突き付けていた。

 マリアは、心の底から苦笑し───呟いた。


「参った。私の負けだ」


 こうして、ユノとマリアの勝負が終わり───ユノが勝利した。


 ◇◇◇◇◇◇


 マリアがびしょ濡れだったので、ロイとサリオスを除いた女性陣は『ボロ湯屋』へ向かった。

 ちなみに、ロイとサリオスはボロ湯屋の前にある豪華な湯屋にいる。

 マリアは、ユノに背中を洗ってもらいながら笑っていた。


「ふふ、本当に強くなったな……」

「ううん、義姉さん手加減してた」

「……そう思うか?」

「うん。これ、試合だから。本気だったら、わたしじゃ義姉さんにまだ勝てない。たとえば……あの『膜』でわたしを覆うとかすれば、わたし負けてたかも」

「ふ……」


 マリアは笑い、ユノの方へ向き直ると、ユノをそっと抱きしめた。

 柔らかな胸に包まれたユノは言う。


「義姉さん?」

「お前は、いい友人に恵まれたな。私は嬉しいぞ」

「……うん」

「約束だ。お前はこのまま学園で学べ。よき友人、よき師と共に」

「うん」


 すると、湯船にいたロセがウンウン頷く。


「いい話ねぇ~」

「姉妹っていいわ。ね、エレノア」

「はい……」


 浴槽の縁から、三人はユノとマリアを見てホッとする。

 マリアとユノが湯船に入ると、ユノが言う。


「義姉さん、里帰りはするから。でも……ほんとに、大丈夫なの?」

「ああ。お前のことなら、実はもう話はついている。この一ヵ月で、いろいろ手を回したからな」

「え……」

「そういうわけだ。何も気にすることなく帰ってくるといい」


 すると、ロセが言う。


「あの~……退学の件はいいとして、フレム王国との結びつきを強化するという点で、婚約はいいお話だと思いますけど……それも、何とかなったのですか?」

「ああ。婚約は、私が引き受けることになった」

「「「え」」」

「あー……やっぱり、そうだったのね」


 エレノアだけが納得し、ロセ、ララベル、ユノは驚いていた。

 マリアは、エレノアを見て驚く。


「きみは、その……何かを察していたのか?」

「ええ、まあ。以前、宿までお送りした時に、フレム王国の王子の名前が出ましたよね? その時、マリアさん……ちょっと、乙女みたいな顔してましたから」

「っっ……そ、そうか」


 マリアは顔を赤くして咳払いする。決して、のぼせているわけではない。

 

「……私とフレム王国の王子、グレンは幼馴染なんだ。同い年で、互いに聖剣士としてライバル関係だった。その……まぁ、うん」


 乙女チックな反応で、全員が理解した───ああ、好きなんだ、と。

 

「ユノとの婚約話が出て、国のためならと思ったが……私も女なんだな。ユノの婚約話を押しのけ、私が婚約すると父上と兄上に言ったら、二人とも賛同してくれたよ。同時に、私も喜んでしまった……最初からこうすればよかったのに、氷聖剣フリズスキャルヴの使い手だからと、お前を押したのが馬鹿だったよ」

「義姉さん……」

「すまないな、ユノ。無駄に混乱させた。ああ、言っておくが……先程の勝負、試合という意味では全力だったぞ?」

「うん、知ってる」


 ユノは、湯を掬って顔を洗った。


「よし、このお話はおしまい。義姉さん、夏季休暇が始まったらレイピアーゼ王国に行く。でもその前に……ちょっとだけ、友達と遊んでいい?」

「ああ。かまわない。お前に求めるのは、氷聖剣フリズスキャルヴを持つ聖剣士として、兵士と騎士を鼓舞する役目だからな。すぐに行かなくてもいいぞ」

「ありがとう。あと、義姉さんはどうするの?」

「私は一度、国に戻る。この一ヵ月、行商人を満喫できたからな」


 マリアは立ち上がる。

 そして、ユノの頭を優しく撫でた。


「次、会う時はレイピアーゼ王国だな。ユノ……しっかり学び、しっかり遊べ。氷聖剣フリズスキャルヴの使い手として、強くあれ」

「うん。ありがとう、義姉さん」


 マリアは浴場から出て行った。

 エレノアは、「ふう」と息を吐く。


「とりあえず……ユノは学園に通えるんだよね? 婚約もなくなったんだよね?」

「うん。わたし、学園に通う」

「よかったぁ……」

「よくわかんないけど、よかったじゃん」

「ええ、よかったですね」


 女子四人は、浴場でのんびりしながら夏季休暇についての話を始めた。


「アタシは一度、故郷に帰るわ。風聖剣士の務め果たせ果たせってうるさいのよ」

「それが普通でしょ……私も、故郷に戻るわ。同じく、土聖剣士としてのお仕事もあるしねぇ」

「あの、ロセ先輩」

「なぁに? エレノアちゃん」

「あたしの炎聖剣ですけど……フレム王国、何も言ってこないんですか?」

「そうねえ。いずれはあると思うけど……今のところ、何もないわね」

「……そうですか。じゃああたし、ユノと一緒にレイピアーゼ王国に行きます。それに、観光都市ラグーンで遊ぶ約束もあるし」

「楽しみ」

「ラグーン!? いいなぁ、アタシも行きたいっ!! 国に帰るのやめよっかな」

「駄目に決まってるでしょ。もう」


 ちなみに四人が浴槽から上がったのは、一時間後だったという。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 聖剣士を育成する学校ですよね? 実技の成績は加味されないんでしょうか? ロイの場合、実技はほぼ0点だろうから 筆記が満点でも赤点の可能性がありそうなんですけど
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