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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第三章 青白の嘆きトリステッツァと白銀世界

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能力と魔法

「先輩、わたしに魔法を教えて。それと聖剣の『能力』を覚醒させる方法」

「え、えっと……ユノちゃん?」


 ロイたちと別れたユノは、さっそく生徒会室へ向かい、ロセにお願いしていた。

 生徒会室。ロセは大きな机に山のように書類を積み、それぞれ確認しながら処理をしている。他にも生徒会メンバーがいるが、全員ポカンとユノを見ていた。


「先輩、おねがい」

「お、落ち着いて。どうしたの?」

「……」


 ユノは下を向いて俯く。

 すると、生徒会室の隅にあるソファで横になっていたララベルが起き上がる。


「ユノ、いつになく必死ねー」

「ララベル、あなた……手伝う気がないなら、出て行きなさい」

「いいじゃん。ここのソファ、寝やすいのよ。で……ユノ、何焦ってるの?」

「…………」

「事情あるみたい。ロセ、いいんじゃない?」

「あのねぇ。私は忙しいの。見てわかるでしょう?」

「確かにね。ね、ね、ユノ。お姉ちゃんに事情話してみない? 力になるよ」


 ララベルが胸を張る。悲しいくらい小さい膨らみが強調されたが、今のユノはどうでもいい。

 ぺこっと頭を下げ、ララベルに言う。


「わたし、学園辞めたくない。だから、強くなりたいの」

「「…………」」

「わたし、連れ戻されちゃう……もっと強くならないと」

「……ユノ、最初からお願い。ロセ、生徒会長室借りるわ」

「え、ええ」


 生徒会室の隣にある、生徒会長室へ。

 ユノは、ララベルにマリアとの約束を説明した。


「なるほどね。つまり、夏季休暇までに、そのマリアって人より強くならないといけないのね」

「うん」

「そっかー……確かに、熟練の聖剣士相手にするには、変形するだけじゃ勝てないわ。聖剣の『能力』と『魔法』を組み合わせて戦術練らないとね」

「ララベル先輩は、どっちもいけるの?」

「当然。アタシもロセも魔法を習得しているし、聖剣の『能力』もあるわ」

「……いいなー」

「うんうん。じゃ、そこに座って」


 ララベルに言われ、ユノは生徒会長室の一人用ソファに座った。

 ララベルはコホンと咳払いし、さっそく説明を開始する。


 ◇◇◇◇◇◇


 聖剣の『能力』とは。

 七聖剣、模造聖剣には『オリハルコン』という石が埋め込まれており、ここに人間の『魔力』を一定値貯めると、『能力』が覚醒する。

 能力は、魔力の波長によってどのような能力になるか決まる。

 たとえばロセの場合。『大地干渉』という、『自身が聖剣で触れた大地を自在に操る』というものだ。

 マリアの場合は、『剣に魔力を流すと魔力による盾を形成できる』という『盾精製』という能力がある。能力は、一度覚醒すると、あとは自分の意志で自在に操れる。

 オリハルコンの質によって、能力覚醒のタイミングは異なる。

 質のいいオリハルコンだと膨大な魔力が必要になる代わり、覚醒する能力も優秀であるとされる。

 逆に、質の低いオリハルコン……模造聖剣の能力は、レベルが低い物もある。

 なので、能力にはランクが付けられる。


「ロセみたいな『干渉系』の能力はSクラスの能力ね。身体の一部を強化したりする『強化系』は、だいたいがB~E級ってところかしら」

「……ランクがあるの?」

「能力には級付けがあるの。最高がSで、最低がEの七段階ね。ちなみに、七聖剣の能力は全部S級だから」

「へえ……」

「で、能力覚醒の最短ルートは、とにかく戦いまくることね。通常の状態でも、剣に魔力を流せばその属性をある程度操れるから、それを使って戦いまくればいいわ」

「なるほど……」

「次は、魔法ね」


 ララベルは楽しくなってきたのか、コホンと咳払いをしてニコニコしながら説明をする。


「魔法は、聖剣を媒介に発動する奇跡ね。まあ、奇跡といっても大それたモンじゃないわ」

「ふむふむ」

「能力との違いは、魔法は全聖剣士共通の技ってところね。授業でも習うし、聖剣に選ばれたら誰でも使えるわ」

「……魔法」

「魔法は、『十二階梯』で分かれてるの。初級が第一~三階梯魔法。中級が第四~第五階梯、上級が第六~第八階梯で、最上級が第九~第十階梯。第十一と第十二階梯魔法は、七聖剣士にしか使えない伝説の魔法ね。ここ数百年、使い手はいないって話だけど」

「……わたしも、使える?」

「当然。でも、魔法は七属性あって、自分の持つ聖剣の属性しか使えないからね。ユノの場合は『水』属性ね」

「わかった。じゃあ教えて」

「いいけど……授業でも習うわよ? まあ、卒業までに習う魔法は第六階梯までだけど。それ以上は聖剣魔導士レベルの魔法になっちゃうわ」

「……聖剣魔導士?」

「聖剣士だけど、魔法専門の聖剣士ね。この辺は覚えなくていいわ」

「はーい。じゃあ、魔法教えて」

「いいわよ! と言いたいけど……アタシは風属性だし、ロセも地属性だから分野が違うのよね。二学期になれば、それぞれの属性に分かれて授業を受けると思うけど」

「それじゃ無理。あと一ヵ月しかない」

「そうねえ……じゃあ、最初に習う基礎。ほい」


 すると、ララベルの掌に小さな白い光の球が現れた。

 いきなりのことで驚くユノ。


「これ、魔力の塊ね。掌に魔力を集中させて出してごらん。確か、授業の最初で習うやつよ」

「魔力……」

「ちょっとやってて」


 そう言い、ララベルは部屋を出た。

 ユノはさっそく掌に魔力を集中する───すると、小さな指先ほどの光が、ポウッと灯った。

 だが、すぐに消えてしまう。


「む、むずかしい」


 ユノは、魔力操作による身体強化を習得している。

 ほぼ無意識に魔力を全身に漲らせることは得意だが、こうして魔力を身体の外に出し、持続するという魔力操作は初めてだった。

 ユノは、もう一度魔力を集中させる───……と、光がゆらゆらと、炎のように指先で揺れた。そして、強く念じて『光の玉』にし、掌の上で浮かべる。

 

「む、むぅぅ……」

「戻ったわよーっ!! ユノ、いいもの持ってきた!!」

「あ」


 ポン、と……光が消えてしまった。

 ユノはムスッとしながらララベルをジト目で見る。


「これ、『水魔法・初級』の本ね。図書室で借りて来た。一ヵ月じゃ第一階梯を何種類かしか覚えられないだろうけど、やってみよっか」

「……ん」

「魔力玉はどう?」

「消えた」

「少なくとも、寝てても持続できるくらいにはならないとね」

「寝てても!?」

「ええ。アタシに魔法を教えてくれた先生はそう言ってたわ」

「うー……がんばる」

「寝る前に魔力玉を作って寝る。朝起きて残ってたらクリア。そんな試験があったわねー」

「…………」


 今の話は置き、とりあえずユノはララベルの持って来た教本のページを開いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ロイは、エレノアとカフェでお茶を飲んでいた。


「レイピアーゼ王国かぁ……そういやエレノア、夏季休暇どうするんだ?」

「ユノと一緒に行くわよ。あんたもでしょ?」

「……も、もちろん」

「あんた、あれだけ言って自分は行かない気だったの?」

「そそ、そんなことないぞ。ただ、その……」

「?」


 ロイは、少し困ったように言う。


「オルカとユイカに誘われてるんだよ。夏季休暇、トラビア王国とフレム王国の国境にある『観光都市ラグーン』で遊ばないか、って」

「観光都市ラグーンって、年中夏のリゾートじゃない」

「まあな。狩りで売った素材の金、けっこうあるし。友達に誘われるとか初めてだし……それに、俺も遊んでみたい気持ちあるし」

「……あのさ、三人で行くの?」

「ああ。オルカとユイカ。あいつら、貴族の子供だけど、末っ子で期待されてないから、休みに家戻ってもやることないんだって。だから、観光都市ラグーンで過ごすって決めてたらしい」

「……お金あるの?」

「ああ。蟲人間になった生徒、学園から見舞金支払われただろ? それを充てるって」

「…………」


 パレットアイズのお菓子で蟲人間になった生徒は、学園から見舞金が支払われた。これはロセが学園に掛け合って出すように願ったらしい。蟲人間となり精神的苦痛を受けた生徒が、聖剣を手放し戦いを放棄することがないようにと、学園側からの見舞金という形で生徒を慰めようとした結果だ。

 

「でも、ラグーンの宿って、夏はすごい混むんじゃ」

「ユイカの親戚、ラグーンで宿屋やってるみたいでさ、客室じゃなくて使っていない離れの小屋を使っていいって」

「……むぅ」

「ユノのことは心配だけどさ……その、俺も少し遊びたいというか」

「わかったわよ。じゃあこうしましょう……」

「……え?」


 エレノアの提案を受けたロイは、オルカとユイカの元へ走ることになった。

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