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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第二章 夢とお菓子と快楽のパレットアイズ

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『地底宝物殿』の財宝①/エレノアとユノの戦い

 地のダンジョンこと、『地底宝物殿』に降りるにはどうすればいいか。

 エレノアとユノ、バルバーとネクロム、マッパーと荷物持ちの総勢十二名。

 準備が終わると、大穴の前に集まった。


「今日は軽い調査だけだ。まぁ、火のダンジョンで経験してると思うが……ここには危険な魔獣も多く出る。宝物殿の財宝を守る番人みてーなモンだ。気を付けろよ」

「「はい」」

「……バルバー、相変わらず子供には優しいね」

「っるせえぞ!! ったく、余計なこと言うな」


 バルバーの聖剣は『槍型』だ。

 収納から出すのではなく、常に手に持つスタイルらしい。槍を軽く振ると、エレノアたちの身体が『風』の力でふわりと浮き上がった。


「わぁ!」

「おおー、浮いてる」

「このまま下に降りる。暴れんなよ」


 バルバーの槍こと『聖槍ロシュナンテ』の属性は『風』だ。部隊長でもあるバルバーの魔法は、人間を十人以上風で浮かべるなど、朝飯前のようだ。

 ゆっくりと大穴を降りること五分。ようやく地面が見えた。

 エレノアたちが着地すると、そこは大きな洞窟のような入口だ。火と水のダンジョンとは違う、どこか原始的な、人の手が入っていない入口に見えた。


「ふわあ」

「洞窟……ここが、ダンジョン?」

「ああ。いいか、気ぃ抜くんじゃねえぞ? ここはダンジョンでの中でも難易度は低いが、魔獣も出てくるし、トラップもある」

「は、はい」

「ん」


 エレノアとユノは頷いた。

 バルバーは「チッ」と舌打ちして先に進む。すると、ネクロムがエレノアたちにボソッと言った。


「もうわかると思うけど……バルバー、きみたちのこと心配してるだけだから。今のも、『魔獣に気を付けて』って意味だからね」

「はい、わかってます」

「怖いけど優しい」

「うん」


 ネクロムは、ほんの少しだけ笑った。

 エレノアは、バルバーとネクロムはわかりにくいが、信頼できると感じた。

 そして、ユノに言う。


「ユノ、気合入れていくわよ」

「うん」


 二人はダンジョン内へ歩き出し、ネクロムがその後に続いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ダンジョン内は、洞窟なのに明るい。

 天井に吊るされた鉄の籠で、薪が轟々と燃えているのが見えた。

 そして、洞窟に入るなり現れたのは……小さな、茶色い肌を持つ小鬼。

 エレノアたちを見て、手に持った棍棒を振り回し始めた。


「ダンジョンゴブリン。ま、雑魚だが……どれ、やってみろ」

「はい!」

「ん!」


 エレノア、ユノが聖剣を抜く。

 エレノアは両手持ちの剣、ユノがレイピアだ。

 ユノの周りに冷気が発生し、エレノアの剣の刀身に炎が燃える。


「…………ふむ」

「なるほどね」


 バルバー、ネクロムがそれを見て何かを感じていたようだが、エレノアたちは見えていない。

 ダンジョンゴブリンは二匹。それぞれ一匹ずつ相手をする。


「燃えろっ!!」

「貫け」


 エレノアが剣を振ると、炎が刃のように飛ぶ。

 ユノが剣を突き出すと、氷の塊が槍のように飛んだ。

 ダンジョンゴブリンは燃え上がり、氷の槍が突き刺さり討伐され、光となって消えた。


「なるほどな。まだまだ課題は多い」

「え……」

「ネクロム、おめーはそっちの青い方を見ろ。オレはこっちの炎聖剣を見る」

「わかった」


 二人がポカンとしていると、バルバーがエレノアに言う。


「とりあえず、聖剣の力と剣技を半々で出してみろ」

「え……」

「今のは、聖剣の属性である『火』を増幅させて放っただけだ。それじゃあ駄目だ。いいか、七聖剣ってのは、オレらが使う模造聖剣のルーツとなった武器。未だに全貌が解明されてねぇ……わかってんのは、変形機構があるのと、魔法を増幅させる力があるってことだけだ」

「魔法を、増幅……?」

「ああ。模造聖剣とは比べものにならねぇ出力で魔法を使える。お前、魔法は……ああ、新人だもんな、まだ使えねぇか。じゃあ……とりあえず、変形できるようになるところからだ。ちなみに、ロスヴァイセのやつは、聖剣に触れて四日目で一つ目の変形をさせたぜ」

「え」


 ロセ会長、どれだけ規格外なのか。

 エレノアは苦笑い。すると、バルバーは槍で通路の先を差す。


「ほれ、また来たぞ」

「え……うわぁ、またゴブリン」

「模造聖剣には変形機構がないから何とも言えねぇが、ロスヴァイセは『イメージを剣に伝える』って言ってたぞ」

「剣に、イメージを?」

「ああ。お前は、その炎聖剣に何を望む? その望みを剣に込めて戦ってみろ。いいか、剣技に頼りすぎるな、剣の力に頼りすぎるな。自分の力を信じて戦え」

「…………」


 エレノアは、炎聖剣を構える。

 確かに、今までは炎聖剣の力に頼りすぎていた。身に付けた技に頼りすぎていた。

 それがダメということじゃない。

 大事なのは、エレノアがどう戦いたいか。

 剣技だけを使い戦い、ベルーガに敗北した。だから聖剣の力だけを使い戦ったらロセ会長に『聖剣に頼りすぎ』と言われた。

 なら、どうすればいい?


「…………ああ、そっか」


 聖剣だけじゃない。

 剣技だけじゃない。

 エレノアが鍛えた技と聖剣で戦えばいい。

 ティラユール流剣術は、力強い轟剣。それに炎聖剣の力を載せる炎の剣技。

 見えた気がする。


『ギャァァッハッハッハッハッハ!!』


 エレノアに向かって、ダンジョンゴブリンが向かって来る。

 数は五。横一列になり、手に棍棒を持っている。

 エレノアは、炎聖剣を横に構えた。

 すると、刀身が割れ、柄が伸びる。

 縦に割れた刀身部分から、超高熱の炎が噴き出した。メラメラと燃えるのではなく、噴射のような、まるで炎が固まって剣となったような。


「『炎聖剣(フェニキア)第二形態(セカンドフォルム)』」


 バーナーブレード。

 超高熱の刃となった『炎聖剣フェニキア』を横一線。

 ダンジョンゴブリンは、一瞬で燃え尽きた。


「上出来だ」


 バルバーは、ニカッと笑って親指を立てた。


 ◇◇◇◇◇


「大事なのは、イメージ」


 ユノは、頭の中でイメージしていた。

 レイピアーゼ流細剣術。レイピアーゼ王家に伝わる、『突き』を基本とした剣技。

 そして『氷聖剣フリズスキャルヴ』はレイピアだ。突くことに特化している。

 だが、よく見ると……氷聖剣は、突くだけではない。刀身が細身で先端が尖っているだけで、ちゃんとした刃もある。

 つまり、斬ることもできるのだ。


「斬るのは、苦手」


 ユノは、レイピアーゼ王国の王女。

 代々、氷聖剣に選ばれてきた家系。でも……本当は、違う。

 本当の両親は、幼い頃に死んだ。そして、ユノを引き取ったのが、両親の遠縁の親戚である、今の父親。

 その父親が、レイピアーゼ王家の末席だったので、ユノも王族ということになっている。

 父は、豪快な人間だった。

 武器を持たず素手で戦うことを得意とし、細い剣でチマチマ突くレイピアより、「叩き潰す斧の方が強いぞ!」とユノに言っては笑わせてくれた。

 戦い方も、教えてくれた。

 レイピアーゼ流細剣術は、王家のしきたりだからと習わされたが、本当は父が教えてくれるいろいろな武器の扱い方のが、楽しかった。

 中でも、ユノが気に入ったのは。


「来たよ」


 ネクロムが通路奥を指さすと、ダンジョンゴブリンのが群れで向かってくる。

 ユノは無言で前に出ると、レイピアを構えた。


「『氷聖剣(フリズスキャルヴ)第二形態(セカンドフォルム)』」


 ユノが剣を振ると、細い刀身がバラバラになる。

 自壊───……ではない。バラバラになった刀身は、細いワイヤーのようなもので連結されていた。

 鞭剣(ウィップソード)。ユノが得意だった武器の一つ。

 鞭剣を頭上でクルクル回転させ、向かってくるダンジョンゴブリンの一匹に向けて投げる。


『ギィィッ!?』

「捕まえた───……凍れ」


 すると、ダンジョンゴブリンが一瞬で凍り付いた。

 ユノは、魔力操作で身体強化。そのままダンジョンゴブリンを持ち上げて手元に引き寄せ、鈍器のように振り回してゴブリンたちを薙ぎ払う。

 凍り付いたゴブリンたちは砕け散り、氷の結晶がパラパラとユノの頭上に降り注いだ。


「これ、いいかも」


 ユノはクスっと笑い、初めて『氷聖剣』を理解できた気がした。


「……上出来だね」


 ネクロムもウンウン頷き、こちらを見ていたバルバーと目を合わせ、互いに頷き合った。

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― 新着の感想 ―
斧・槍と聖「剣」じゃないやつが出てくるなら弓だって聖剣でいい気が・・・。 まぁ、主人公が持つのは魔弓だから問題ないか。
[気になる点] 少し教わって変形が出来たなら窮地に陥ってようやく出来た殿下の立場がない気がします… [一言] 更新ありがとうございます!
2022/09/23 11:39 退会済み
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