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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第二章 夢とお菓子と快楽のパレットアイズ

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新たな出会い

 サリオスたちがダンジョンから戻る頃には、すっかり朝になっていた。

 エレノア、ユノは一日の休日ですっかり元気になり、『地』のダンジョンに向かう馬車に乗っていた。

 エレノアは、馬車の窓を開けて景色を眺めながら、ボソッと言う。


「ロイ、大丈夫かな……」

「ロイ?」

「え、ああ……まぁ、ちょっとね」

「む、わたしも知りたい」

「だ、ダメだって。幼馴染同士の秘密なのよ」

「むー」


 ムスッとするユノを押さえ、エレノアたちは『地』のダンジョンに到着した。

 まずは聖剣騎士団の駐屯地で、ダンジョン攻略について話すのだが。エレノアとユノは、駐屯地を見て首を傾げた。


「……ダンジョン、どこ?」

「それ、あたしも思った。何もないよね……?」


 駐屯地は、平原の真ん中にあった。

 遺跡なり塔なり、何か建物があると思ったのだが、何もない。

 何もない平原にある駐屯地で、ここに本当にダンジョンがあるのか、エレノアとユノは首を傾げる。

 すると、二人の背後から槍を持った男が現れた。


「来たか、七聖剣士」

「え? あ……ど、どうも」

「ふん。さっさとこっち来い。会議を始めるぞ」

「あ、あのー……ここ、地のダンジョンですよね?」

「あぁ? それ以外に何があるってんだよ」


 随分とガラの悪い男だった。

 どこか迷惑そうに顔を歪め、エレノアとユノをジロっと睨む。

 そして、何かに気付いたように「チッ」と舌打ち、首をクイッと先へ向けた。


「仕方ねぇ、着いてこい」

「「……」」

「おら、ぼさっとすんな」


 エレノアとユノは互いに顔を見合わせ、いつでも聖剣を抜けるよう警戒しながら男に付いて行く。

 駐屯地を抜け、平原をしばらく歩くと……ようやく、見えてきた。


「「わぁ……」」

「何もない平原に駐屯地があるわけねぇだろ? これが『地』のダンジョン……デカい穴倉だ」


 塔や遺跡があるわけではない。

 何もない平原に駐屯地があるわけでもない。

 遠くからでは、わからなかった。

 近づいて見えたのは、地面にぽっかり空く大きな『穴』だ。


「地のダンジョン、別名『地底宝物殿』だ」

「地底、宝物殿?」

「ああ。ここは、他の三つのダンジョンと比べても難易度が低い。さらに、魔族の作った武器や道具が山ほどあるんだよ」

「おおー」

「あの……すみません、ところであなたは?」

「あぁ?」


 男は、「そういや言ってなかったな」と言い、頭をボリボリ掻く。


「オレはバルバー、聖剣騎士団『風』の部隊長だ。今回、お前ら七聖剣士のお守り役ってわけだ」

「あ、ど、どうも。その……エレノアです」

「ユノ」

「おう。疑問は晴れたな? じゃ、行くぞ」

「あ、はい」

「…………」


 ユノは、歩き出すバルバーの背中をジーっと見て、エレノアに耳打ちする。


「この人、怖いけど優しいかも」

「……だよね。わざわざここまで案内してダンジョンの説明してくれたし」

「うん、やさしいヒト」


 バルバーに案内され、一番大きい天幕へ。

 そこにいたのは、黒髪の、どこか顔色の悪い眼鏡の青年と、数名の聖剣士。


「ネクロム、連れて来たぜ。始めようや」

「わかった。ああ……自分はネクロム。聖剣騎士団『闇』部隊長です。よろしく」

「よ、よろしくです」

「よろしく」

「じゃ、地のダンジョンについて説明します」


 ネクロムは、どこか掴みどころのない感じの青年だった。

 顔色が悪く、体調も悪そうだ。

 だが、ネクロムは淡々と説明を始めた。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 一方その頃。

 命からがら、ダンジョンを脱出したサリオスたち。

 サリオスは、担架で運ばれるロセの手を握っていた。


「ロセ会長、もう大丈夫です」

「うん。ありがとう、サリオスくん」

「いえ……」

「ふふ、かっこよかったよ?」

「ぅ……」


 サリオスは赤くなってしまい、ロセはクスっと笑う。

 エクレール、ポマードも互いに顔を合わせ、少年少女の青春劇を眺めていた。

 すると、突如として『渦潮』の水が引き始めた。


「な、おいポマード……これって」

「……まさか」


 水が引き、ダンジョンが粒子となって消えていく。

 ダンジョンクリア。たった今、『核』が破壊され、ダンジョンは死を迎えた。

 だが……一体、誰が?

 そしてようやく、ポマードは言った。


「……エクレール。あの扉を破壊した一撃、あなたではないのですね?」

「ったりめーだろ……ヤレんなら最初からヤッてた。ありゃ、完全に外部の、第三者の一撃だ」

「そして、狙いはボクらではない。むしろ……ボクらを逃がすための一撃。ダンジョンがクリアされたということは、その第三者が核を破壊した、ということになる」

「待てよ。そりゃ誰だ? ここにはいない七聖剣士か?」

「たぶん違う。仮に七聖剣士だったら、隠れる理由もないし。堂々と援軍として参加すればいいだけだ。この第三者には、隠れねばならない理由があった、とか?」

「んだよそれ? ってか、どんな能力だ?」

「……わからないね。情報が足りなすぎる。今はとりあえず、ダンジョンクリアの報告と、第三者の可能性を団長に伝えておこう」

「……敵か?」

「それも不明。味方ともいえないけどね」


 ポマードは、チラリとサリオスを見た。

 サリオスは、ダンジョンの消滅をポカンとしながら見ている。


「……殿下を守るための一撃に見えたのは、気のせいだろうかね」


 ◇◇◇◇◇◇


 一方、ロイは。


「…………」

「ロイ、大丈夫か?」

「…………」


 水のダンジョン『渦潮』から速攻で戻り、一睡もせずに学園に登校。

 授業中、眠くて死にそうだったが、なんとかお昼休みを迎えた。

 今日もオルカにパンを買ってもらい、フラフラしながらユイカと中庭へ。


「お前、夜遊びもほどほどにしとけって言っただろうが」

「……違うっての」

「ロイってばサイテー、ユノやエレノアがいないからって、遊んじゃダメよー?」

「うっさい……あ、パンうまい」


 エレノアとユノは『地のダンジョン』に向かった。

 学園が終わったら、またダッシュで行かねばならないのだが……さすがに、倒れそうだ。

 すると、聖剣用のラックに掛けてある木刀形態のデスゲイズが言う。


『今日は休め。そのままダンジョンに向かっても、満足の行く狙撃は無理だろう』

「……でも、エレノアが」

『大丈夫だ。地のダンジョン、『地底宝物殿』は、四つのダンジョンの中でも難易度が低い。今日が初挑戦なら、そう深くは潜らないはず。一日、しっかり休んで明日からまた始めろ』

「うぃ~……」

「おいユイカ、こいつなにボソボソ言ってるんだ?」

「お疲れなんでしょ。幻覚見えてるのかも?」


 二人に好き勝手言われていたが、反論する元気がないロイだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 放課後。

 オルカの誘いをまたしても断り、ロイは一人で学園を出て、城下町を歩いていた。

 すぐに寮に戻って寝てもよかったが、少し歩きたい気分だったので、城下町を歩いている。


「あぁ~……なんか、すっごいダルいかも」

『そりゃほぼ不休で、二つのダンジョンと二人の侯爵級を倒したんだからな』

「……なぁ、俺ってさ、前に出過ぎてるか?」

『なに?』

「本来なら、魔界貴族を倒すのは聖剣士だろ? それに、ダンジョンも二つ消えた……そろそろ、俺の存在とまではいかないけど、聖剣士じゃない『第三者』がいるってバレそうだぞ」

『かもな。だが、そのまま隠れていろよ。恐らく、聖剣士たちも、魔族たちも、第三者であるお前のことを「はぐれ者の聖剣士」と思ってるはずだ。まさか、我輩を宿した弓で狙撃しているなぞ、考えてすらいない。我輩の正体がバレるのは、少なくとも二人倒してからだな』

「はいよ。まぁ、頑張るよ」


 ロイは大きく背伸びし、そろそろ学園寮に戻ろうと欠伸をする。

 すると、ロイの背中に何かがぶつかった。


「いてっ」

「あら、ごめんなさい」

「あ、はい」

「でも、あなたも欠伸しながら背伸びして、周りが疎かになっていたわ。あなたも、アタシに謝りなさいな」

「え……って」


 女性は、綺麗なエメラルドグリーンの髪をしていた。

 そして、物凄い美少女だ。

 ロイと同じくらいの年齢だろう。だが……悲しいくらい、胸がない。

 少女の腰には、立派な装飾の施された双剣があり、なんと木造りの弓を持っていた。


『エルフか』

「エルフ?」

「そう、エルフよ」


 少女は胸を張るが、小さい。

 

「って、そんなことより……謝りなさい」

「あ、はい……ぶつかって申し訳ございませんでした」

「ん。じゃあ次から気を付けることね」

「はあ」

「……なんか覇気がないわね。あなた、眠いの? それにその木刀何?」

「えーと、これが俺の聖剣で。眠いのは寝てないからです」

「ふーん……ん? ちょ、待った……この木刀、この材質……もしかして!!」


 すると、少女はロイの木刀をガシッと掴み、まじまじと見た。


「め、『女神の聖木』じゃない!! あなた、どこでこれを……って、聖剣の選抜しかあり得ないわね。あなた、これちょうだい!!」

「…………嫌です」


 なんだか逃げたくなるロイ。

 すると、少女はあっさり諦めた。


「そっかー……じゃあいいわ。ごめんね、騒がしくして」

「……あの、この木刀、なんで欲しいんですか?」

「そりゃ女神の聖木で作られてるからよ。知ってる? 女神の聖木は美容効果にいいの。湯船に入れるだけで、お肌スベスベになるのよ」

「…………はあ」


 すごいどうでもよかった。

 ロイはペコっと頭を下げ、さっさと寮へ戻ろうとする。


「ね、あなた。聖剣レジェンディア学園の一年生?」

「え? はい、そうですけど」

「じゃあ、アタシのこと知らないのも無理ないわね。アタシの名前はララベリアルルド・グリンデルワル・シャイローブルム・エルフリアよ。あなたの先輩で、学園の三年生。名前長いからララベルでいいわ。そして、『風聖剣エアキャヴァルリィ』の聖剣士……ふふ、よろしくね」

「え、風聖剣って……」

『やはりそうだったか。だが、聖剣を使えるのは人間のみ……ああ、ハーフか』

「あ、聖剣は人間にしか使えないって思ってる? ま、アタシはハーフだから使えるのよ。ね、あなたの名前は?」

「えっと……ロイです」

「ロイね。覚えておく。あのね、お互い知り合いになったわけだし、いつかその木刀貸してね。お風呂に浮かべるだけだからさ! じゃ、そういうことで~っ」


 ララベルは手を振って去った。

 

「自己紹介した理由が、木刀を風呂に浮かべるため……か」

『妙な女だ。まぁいい。さっさとメシ食って寝るぞ』

「へいへい」


 ロイはもう一度大きな欠伸をして、寮までの道を歩き出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 弓も扱う聖剣士…新たなハーレム要員だなw やっぱエルフはスレンダーな方がいいですね、うん
[気になる点] アタシの名前はララベリアルルド・グリンデルワル・シャイローブルム・エルフリアよ。長いな! [一言] 更新ありがとうございます!
2022/09/23 07:08 退会済み
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