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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第二章 夢とお菓子と快楽のパレットアイズ

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湖底の遺跡『渦潮』①/サリオスとロセ

「あんたでしょ」

「……ま、まぁ」


 放課後、オルカの自主訓練の誘いを断り、ダンジョンへ行く用意をしようと寮に戻ろうとしたら、なぜか寮の前で待っていたエレノアに引っ張られ、地下ショッピングモールにある小さな個室付きの喫茶店に連れて来られた。

 エレノアはイチゴケーキを注文。ロイは特盛フルーツパフェを食べながらエレノアに言う。


「その、『あんたでしょ』で何が言いたいかすぐわかったよ」

「そ。ならいいわ。あんた、ダンジョン来てたの? なら、あたしたちの前に出てきなさいよ。こっちはけっこうピンチだったんだから」

『ダメだ』


 と、テーブルに置いたデスゲイズが言う。

 ちなみに、デスゲイズの前にはプリンが置いてある。デスゲイズが『我輩にも喰わせろ』と言うので注文をしたのだが、ロイの弓を取り込んだ触手のような物でプリンを皿ごと取り込むのは妙に気持ち悪かった。ちなみにこのプリンは四個目である。


『確かに、ロイは今の七聖剣士よりも、聖剣騎士団よりも戦力になる。だが、それはこいつが単独行動ができるからだ。もし、お前たちの誰かが魔界貴族に捕まり、我輩のことを話されでもしたら、魔王どもは我輩の存在に気付いて、人間界なぞあっという間に滅ぼすぞ。我輩の存在は、それほど奴らにとって脅威なのだ。今は、お前たちを隠れ蓑にして、隠密に葬る方がいい。はっきり言えば、お前が我輩の正体を知っていることすら、ぎりぎりなのだ』

「む……」

『今のお前は「新人の七聖剣士」だ。魔王にとって絶好の遊び相手。お前を故意に鍛え、遊び相手として相応しくなるまで成長させている最中だろう。エレノアよ、我輩たちのことは気にせず、お前はお前で強くなれ。だが忘れるな、お前のことは、ロイが常に守っている』

「…………むぅ」

「お前な……まぁ、そういうことだ」


 ロイは、フルーツパフェの生クリームをスプーンで掬い、口の中へ。

 甘く、ふわっと滑らかなクリームが口いっぱいに広がる。


「んまっ……っと。エレノア、デスゲイズはこう言ってるけど、俺は学園もあるし、すぐにはお前のところに駆けつけられないと思う。ダンジョン探索は慎重に、気を付けてやってくれ」

「わかったわよ。というか、あたしも強くなるから……いつまでも守られてばかりじゃ、カッコ悪いしね」

「さすがエレノア。それと、ユノのことも頼む。あいつ、けっこう人見知りだからさ」

「ふーん。気になっちゃうんだ? ユノ、可愛いもんね」

「っそ、っそういうんじゃないっての」

「はいはい。ところで……あの燃える猿、どうやって倒したの?」


 ロイは、『業火灰燼』でのことを話した。

 隠し通路に侵入し、ちょうどエレノアたちが地獄魔猿と戦っているところを見た。そこで、『時空矢(アイオーン)』を使い『距離を喰う』矢で遠距離狙撃したこと。そして、シェリンプにバレて一騎打ちになり、なんとか倒したこと。


「……魔界貴族を、一人で」

「頭の悪い獣みたいなやつだったから、何とかなった」

「……ダンジョンの管理人が死んだから、あの燃える遺跡の火が消えて、魔獣もいなかったんだ」


 エレノアは、「なるほどねー」と言ってイチゴを食べた。


「なぁ、次のダンジョンは?」

「次は『地』のダンジョンだけど……あ!!」

「うわっ、いきなりデカい声出すなよ」

「ね、ロイ。お願いがあるの」

「……?」


 エレノアは、ロイに『お願い』をした。


 ◇◇◇◇◇


 エレノアたちが『業火灰燼』をクリアしたと聞いたサリオスは、『水のダンジョン』近くに設営された天幕の中で、光聖剣サザーランドを磨いていた。


「はぁ……」

「浮かない顔ねぇ?」

「ええ、エレノアたち───……って!? 会長、いつの間に!?」


 なんと、サリオスの天幕にロセがいた。

 いつの間にかいたことに驚くサリオス。すると、ロセは椅子を引きずりサリオスの前に座る。


「たぶん、歴代最速のクリアねえ。もしかしたらだけど……ダンジョンに、トラブルでもあったのかな?」

「トラブルですか?」

「うん。たぶんだけどね」


 ちなみに、今日のダンジョン挑戦は午後からだ。午前中は、ポマードとエクレールが、火のダンジョンを担当しているカレリナと、今後について話をしている。

 原理は不明だが、日中より夕方以降の方が、水のダンジョンに入るための『渦潮』が弱くなるから、という理由もあった。


「ね、サリオスくん。学園に早く戻りたい?」

「……そりゃまあ。今、こうしてダンジョンで経験を積むのはいいことだと思いますけど、学園で習うことも多いですし。それこそ……『魔法』とか」

 

 魔法。

 聖剣士が使える、聖剣の属性から放たれる奇跡。

 一学年の後期から習う内容だ。二年生以上は、魔法と剣術を組み合わせた、自分だけの戦闘スタイルを築いている者が多い。

 一学年で剣術と魔法を覚え、二学年で自分の戦闘スタイルを固め、三学年で実戦を多く経験し、一人前の聖剣士となる。

 サリオスは、チラッとロセを見る。


「あの、会長……会長は、他の聖剣士を知っていますよね?」

「他の? ああ、『風』と『闇』と『雷』の子ね。もちろん知ってるよ?」

「……どんな人たち、ですか?」

「あらら、気になるのかな?」

「そりゃあ、まあ……」


 将来、自分が率いるべき剣士たちだ。

 光聖剣サザーランドを持つ者は、七聖剣士たちを束ねる聖剣士なのだ。

 剣技には、自信があった。だが……今のサリオスでは、ロセに傷一つ付けられないだろう。


「サリオスくん。いろんな方向を見て、自分と比べちゃう気持ちはわかるけどね? でも、大事なのは自分の足元。いい? 今は、自分にできることを、精一杯やりなさい」

「ロセ会長……」

「剣技も、魔法も、まだまだこれから。まずはダンジョンで、自分の聖剣に慣れることから」

「……はい」


 ロセは、サリオスの頭をポンポン撫でる。

 すると、聖剣騎士団の騎士が「失礼します!」と言って入ってきた。


「部隊長が戻られました。一時間後に、ダンジョンの攻略を開始するそうです。ご準備を」

「わかりました~」


 ロセは立ち上がり、「またあとでね~」と出て行った。

 サリオスは、収納ではなく、腰の鞘に光聖剣サザーランドを差す。


「まずは、できることから……よし!!」


 気合を入れ、サリオスは天幕を出て行った。


 ◇◇◇◇◇


 さて、一方のロイは。


「殿下たちの援護か……バレないようにしないとな。デスゲイズ、今回も頼むぞ」

『……う、うむ』

「……なんだよ、歯切れが悪いな」


 エレノアの頼まれ事。

 それは、『殿下の護衛』だった。

 水のダンジョンを攻略する殿下たちに着いて行き、こっそり護衛をしてほしいとのこと。

 聖剣士を援護することに不満はない。それが殿下だろうとだ。

 今、ロイたちは聖剣騎士団が展開する天幕の近くで、ステルスローブによる迷彩を使い、近くの藪に潜んでいた。


「明日は授業が休みだからいいけど……」

『…………』

「デスゲイズ、今回のダンジョン……あの湖の中にある遺跡、だよな? 殿下たちに経験を積ませるために、ある程度は戦闘してもらって、いいタイミングになったら俺が侯爵級を倒せばいいんだな」

『あ、ああ』

「…………お前、どうしたんだ?」

『ロイ、落ち着いて聞け』

「?」


 デスゲイズは、わざとらしく『ごほんごほん』と咳払いをした。


『忘れた』

「は?」

『ここの隠し通路、忘れた』

「…………はい?」

『すまん、まったく思い出せん……』

「え」


 ロイの眼の前には、大きな湖。そして、いくつもの『渦潮』だ。

 渦潮に向かって飛ぶと、湖底の遺跡に入れるのだが。

 本来なら、ダンジョン管理をしている侯爵級の元へ行ける通路が、どこかにあるはずなのだが。


『そういえば、水のダンジョンの管理者は用心深く、隠し通路への道をパレットアイズにも教えていないとか……パレットアイズも特に気にしていなかったような』

「お、おいおい……冗談、だろ?」

『仕方ない。飛び込め』

「…………」

『奴らが飛び込んだ後、こっそりバレないように湖に飛び込め。そして、侯爵級と聖剣士たちにバレないように尾行して援護しつつ、ダンジョンを制御している侯爵級を探して始末しろ』

「どんな難易度だよ!?」


 ロイは思わず叫んでしまったが、幸い誰もいないのでバレなかった。

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