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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第二章 夢とお菓子と快楽のパレットアイズ

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退屈

「ふぁぁぁ~~……あふぅ、んぁ~……もぐもぐ」


 人間界のどこかにある朽ちた『城』

 現在、『快楽の魔王』パレットアイズは、ふかふかのクッションが敷き詰められたベッドに横になり、薄くスライスしたジャガイモを揚げて塩を振ったお菓子をボリボリ食べていた。

 それだけではない。ベッドには飴玉を始め、チョコやクッキーなど、とにかく甘い物がたくさんある。

 パレットアイズは、お菓子に囲まれながら、空中に浮かぶいくつもの画面を見ていた。


「あれ~……? 勝っちゃったじゃない。つまんないのー」


 パレットアイズは、エレノアが地獄魔猿にトドメを刺した瞬間を見てブスッとした。

 すると、部屋に待機していた『討滅』のクリスベノワがペコっと頭を下げる。


「申し訳ございません。シェリンプの策が甘かったようで……後で、奴には罰を与えます」

「ん……お、こっちは面白そうじゃん!」

 

 水のダンジョン『渦潮』で、サリオスが渦潮に飲まれグルグル水中で回転していた。パレットアイズはそれを見てケラケラ笑い、甘い果実水をゴクゴク飲む。

 そして、『風』のダンジョンに先行して入った聖剣士たちが、カマイタチでバラバラに切り刻まれる様子が中継され、パレットアイズは笑う。


「あ~おもしろっ……ね。もっと派手なの見たーい」

「は、派手……ですか?」

「うん。ダンジョンが爆発するとかー、粉々に砕け散るとかー」

「さ、さすがにそれは……ははは」

「えー? ダメかな」

「そ、それよりも……パレットアイズ様、ササライ様と何かやり取りがあったのでは?」

「ん? ああ……ササライのやつ、新人聖剣士に部下殺されたのよ。で、あたしが代わりにブチ殺してやるってね。ま、あたしのダンジョンなら、すぐ死ぬっしょ」

「は、はあ……」

「あ、全員に言っといて。ダンジョンのレベルを『挑戦者が全力を出してもあと一歩のところでクリアできずに死ぬ難易度』でって。ただ殺すのだけじゃ楽しめないし」

「か、かしこまりました!!」


 言うのが遅い。当然、そんなことは言えるはずもなくクリスベノワは四人の侯爵たちの元へ。

 パレットアイズは、お菓子を食べながら映像を再開する。

 だが───ほんの少しだけ、気になった。


「ちょっと待った。そういやさっきの……」


 パレットアイズが指を振ると、映像が逆再生する。

 

 ◇◇◇◇◇


「ティラユール流剣術、『疾風突きゲイルスピア』!!」

『キキキキキキッ───っぎぇ!?』

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っ、え?」


 ◇◇◇◇◇


「…………なんか妙ね」


 まるで、突きが当たる直前で地獄魔猿が死んだような。

 他の聖剣士が介入したのか。

 それとも、また別の何かが?


「…………ま、いっか」


 指を鳴らすと、映像が全て消える。


「さ~て。おなかも膨れたし、お昼寝しよ~っと」


 パレットアイズが『火のダンジョン管理者であるシェリンプが討伐された』と聞くのは、昼寝開始から実に十二時間後のことだった。


 ◇◇◇◇◇


 エレノアたちがダンジョンから逃げ帰った翌日。

 一行は再び『業火灰燼』に来たのだが……燃え盛る遺跡など影もない。ただの遺跡がそこにはあった。

 

「…………どういうことだ? 何かの罠か?」


 カレリナが首を傾げる。

 ちなみに、ミコリッテは魔法による治療を受け、なんとか一命をとりとめた。傷も綺麗に治るらしく、しばらくは入院。エレノアとユノは気合を入れてダンジョンに来たのだが、なんとも拍子抜けだった。

 火のダンジョンの火が消えているなんて、カレリナとユノも想像していない。

 だが、エレノアだけは違った。


「…………まさか」

 

 ロイ。

 何の根拠もないが、エレノアが真っ先に浮かんだのはロイだった。

 昨日はドタバタしており、エレノアも学生寮に戻ることなく、ダンジョン近くに聖剣騎士団が作った野営用テントに泊まった。ロイと話したかったが、ロイはいない。

 でも……昨日の地獄魔猿を倒したのは、間違いなく弓矢。

 ロイとデスゲイズが、何かやらかしたのではないか。


「とりあえず、ダンジョンに入るか……油断するなよ」


 カレリナは、ミコリッテがいない分まで気合を入れた……が。

 ダンジョン内はもぬけの殻。

 火どころか、魔獣の一匹もいない。

 あっという間に最深部に到達。本来ならダンジョンの『核』を守る魔獣がいるはずなのだが、何もいない。

 拍子抜けするくらい、簡単に核を破壊……火のダンジョンこと、『業火灰燼』は、一人の死者も出すことなくクリアされた。

 ダンジョンから脱出すると、エレノアたちの目の前で、ダンジョンが淡い光に包まれ消えていった。


「わぁ……」

「きれい」

「ダンジョンは、核を破壊され聖剣士が脱出すると、役目を終えたかのよう消滅する。恐らく……これは、建物ではなく、魔力の結晶のような存在なのだろう」


 カレリナがそう言い終えると、ダンジョンは完全に消えた。

 初めから何もなかったかのように、何もない。


「残り、三つ。予定が大幅に狂ったのはいいことだ……まさか、二日目で火のダンジョンをクリアできるとは。さて、殿下たちのチームをサポートするか、このまま予定通り『地』のダンジョンに挑むか。少し話さねばな。エレノア嬢、ユノ嬢、今日はこのまま解散だ」

「はい、わかりました。あの……一度、寮に戻っていいですか?」

「構わん。何なら、明日は休日にする。学園に出るもよし、休むのもよし。好きにするといい」

「やったあ」

「…………」


 エレノアは、ぺこりと頭を下げ、トラビア王国行きの馬車にユノと乗った。


 ◇◇◇◇◇


 一方、ロイは。

 

「あ~~~……つっかれたぁ」

『シェリンプを倒し、急いでトラビア王国に戻って学園だからな。一時間ほどしか睡眠を取っていないようだが、大丈夫か?』

「き、厳しい……」

「ロイ、おひるだよっと!!」

「おげっ!?」


 机に突っ伏すロイの背中を、ユイカがブッ叩いた。

 

「なに、元気ないけど? 寝不足?」

「……そう思うんなら叩くなよ。あれ、オルカは?」

「パン買いに行った。ほら起きて。いつものところでご飯にしよ」

「ああ……」


 どうやら、オルカは気を使って起こさなかったらしい。

 ユイカに起こすのを任せ、一人でパンを買いに行ったようだ……なかなかに、気遣いのできる男である。

 オルカのやさしさに感謝し、ロイは大きな欠伸をして背伸びする。

 ユイカと一緒に、いつもパンを食べている中庭へ。すると、パンの袋を持ったオルカがすでにいた。


「おっせーぞ、ロイ」

「わり。パン、買ってくれたんだな」

「ああ、好きなの食えよ、ユイカも」

「ありがとっ」


 ロイは、砂糖をまぶしてあるパンを手に取りかぶりつく。


「お前、なんか疲れてるな」

「……いろいろあってな」

「おいおい、ほどほどにしろよ? 夜遊びバレたら停学もあるぞ」

「うわ、ロイってばサイテー、ユノとエレノアに言っちゃおっかなー」

「おいやめろ。ってか夜遊びじゃないし」


 学園を抜け出して、トラビア王国周辺に現れたダンジョンの隠し通路を通って、ダンジョンの管理者である魔界貴族侯爵を倒して、急いで戻ってきてほぼ寝ずに授業受けたから眠いんだよ。今日も授業終わったらダッシュでダンジョン行く予定だ……なんて、口が裂けても言えない。

 それに、昨日シェリンプを倒したことで、方針が少し変わった。


『あと侯爵級が三人。公爵が一人だ。正直、エレノアたちでは荷が重い。我輩が隠し通路まで案内するから、エレノアたちが侯爵級と出会う前にお前が倒せ。ああ、エレノアたちはダンジョンをある程度攻略させろ。あそこの魔獣相手に戦うのはいい経験になる。まぁ、シェリンプが倒されたことで、パレットアイズにも何かしら動きがある……くくく、やることが多くなってきたな、楽しいぞ』


 と、デスゲイズが言った。

 めちゃくちゃロイに負担がかかる内容だった。


「…………はぁ」

「おい、マジで大丈夫か?」

「お疲れだねぇ。有料でマッサージしてあげよっか? 女の子のマッサージ、嬉しいでしょ?」

「…………マッサージより、俺がもう一人欲しい」

「「?」」

 

 ロイはそう呟き、パンをかじるのだった。

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