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炎の迷宮『業火灰燼』③/隠し通路

さて、ロイは相変わらず『業火灰燼』の周りをウロウロしていたのだが……ようやく、デスゲイズが『あ~、思い出した』と言い、言われるがままに移動した。

 移動した場所は、燃え盛る遺跡から少し離れた、石造りの円柱が何本も立っている場所。

 だが、ここの円柱も絶賛炎上中。近づけず、遠くから眺めていた。


「……で、どこ?」

『あの円柱の中心だ。あそこに、地下へ続く管理者用の通路がある。そこを通って行けば、シェリンプがいるはずだ』

「待った。管理者のところにって……俺が戦うのか!?」

『今回は、そっちのが手っ取り早い。すでに交戦中なら、死角から狙撃でサポートできるだろうが、ダンジョンの管理者は基本的に、聖剣士の前に出てこない』

「おいおいおい、てっきり、エレノアたちの前に引きずり出すのかと……ってか、狙撃が俺の本領だぞ。直接戦闘は無理だ」

『何も、真正面から戦う必要なんてない。忘れたか? お前には『権能』……『暴食(グラトニー)』の力がある。いい機会だ、今回で完全にモノにしろ』

「モノにしろって……まぁ、前は一発しか撃てなかったけど、今はたぶん三発はいけるから、なんとかなりそうだけど」

『…………それなら、やれ』


 相変わらずのバケモノだった。

 デスゲイズの権能の一つ、『暴食』……訓練で何発か撃ち、「なんとなくいけるかも」とは言っていたが……まさか、三発も撃てる可能性があるとはデスゲイズも知らなかった。

 もしかしたら、次の権能を早く渡せるかもしれない。


「……なぁ、あの火は消えない?」

『ローブで全身を覆えば燃えん。いいから行け』

「くぅ……覚悟を決めるか」


 ロイはローブを被り、燃え盛る円柱の中心に向かって走り出す。


「熱いアツイあつい!! おいどこだ!? 入口どこ!!」

『仮面に魔力を注げ。見えるだろう?』

「え!? あ……これか!!」


 ただの地面が、仮面越しに見ると取っ手付きの蓋が見えた。

 偽装魔法で巧妙に隠されている。ロイは取っ手を掴み、思いきり引いた。

 蓋が開き、ロイは身体を滑り込ませる。すると、蓋がバタンと閉まり、ようやく落ち着いた。


「あー……死ぬかと思った」

『……魔族の反応はない。やはり、ダンジョンの制御室だろうな』

「制御室?」

『このダンジョンの罠や、財宝、魔獣の配置を設定する部屋だ。聖剣士がダンジョンに入ると、管理者はそこでダンジョンの操作をする』

「じゃあ、そこに行って狙い撃てばいいんだな?」

『ああ。だが……シェリンプ直属の部下、恐らく上級以上の魔族がいるはずだ。警戒していけ』

「了解。ところでデスゲイズ……お前、もう少し小さくなれないか?」

『何?』

「この狭さじゃ、お前を使いにくい。もう少し小さくなってくれ」

『いいだろう』

「それと、形状をもう少し……」

『それは無理だ。お前と契約した今の我輩は、この姿で固定されている。大きさはある程度変えられるが、形状は変えられん』

「そっか……」

『まぁ、今はだがな……ほれ、このくらいでいいか?』

「……うん、いい感じ」


 約半分の大きさになったデスゲイズ。

 この狭い空間では、狙いよりも速さを優先する。大きい弓ではじっくり構えての狙撃に向いているが、小さい弓では連続射撃に向いている。ここでの敵は、距離や狙いより速度が何より重要だと。ロイは確信していた。

 すると、デスゲイズが気付く。


『チッ……ロイ、身を隠せ。魔族が……』


 デスゲイズが言う前に、ロイは矢筒から『短矢(ショートアロー)』を五本抜き、シェリンプの部下で見回り係の《男爵級》が現れ、ロイを視認した瞬間。

 ロイはほぼ同時に五本の矢を放った。

 一度に五本、同時に番え、指を離すタイミングを僅かに変えて矢が飛ぶ位置を調整。

 頭に二本、喉に一本、心臓に二本の矢が刺さり、男爵級は声を上げることなく青い炎に包まれて消滅した。


「やべっ……思わず殺しちまった。こいつが仲間のところに戻らなかったら、まずいよな」

『……そうなる前に、先へ進むぞ。もう少し先に、身を隠せる場所があるはずだ』

「わかった」

『……お前、今の芸当は何だ?』

「今のって?」

『今の、早撃ちだ。五本の矢をほぼ同時に、しかも急所に狙い撃つとは……』


 ロイは、誇るでもなく普通に言った。


「ああ、早撃ちはあまり得意じゃないんだけどな。昔、狩りしてたらグレートゴブリンの群れ五十匹くらいに囲まれてさ、その時は命からがら逃げたんだけど、獲物に近づかれた時の対処法として、早撃ちを覚えたんだ。矢さえあれば、百匹くらいの獲物に囲まれても凌げるくらいは撃てるぞ」

『…………』


 グレートゴブリンの群れ?

 グレートゴブリンは、C級聖剣士が三人集まってようやく退治できるレベルだ。それが百匹、しかも弓で倒すとは。

 相変わらずの規格外。そして、無自覚だった。


 ◇◇◇◇◇◇


 所変わり、エレノアとユノ。

 エレノアは『バブルコーティング』をせずに歩いている。ユノは、常にキョロキョロしながら歩いていた。


「ユノさん、慌てなくても大丈夫ですよ。バブルコーティングは五分くらいなら持ちますから」

「でも、五分過ぎたら火だるま……やだ」

「ふふ……ほら、あそこにあるぞ」


 燃え盛る通路の角に、バブルコーティングの筒があった。

 ユノはダッシュで近づき、ボコボコ出る泡を全身で受ける。

 その時だった。


「───ユノ!!」

「え?」


 なんと……バブルコーティングの筒。その真上から、メラメラ燃える毛虫のような魔獣が大きな口を開け、ユノを丸呑みしようとしていたのだ。

 エレノアは剣を抜くが、間に合わない。

 ユノも顔を上げ、毛虫の存在を視認しただけで、収納に入れたままの聖剣を取り出すことも忘れていた。

 まずい───……エレノアが剣を抜き終えても、ユノの位置までは遠い。

 調子に乗っていた。火が通用しないからと、はしゃぎすぎた。

 後悔がエレノアを襲う。このままではユノが───……。


「だ、大丈夫です……」

「えっ」


 ドン!! と、燃える毛虫に十本以上の『短剣』が刺さった。

 毛虫は、青い炎に包まれて消えた……同時に、短剣も消える。

 エレノアは、短剣を投げたのがミコリッテと気付いた。

 カレリナは平然としている。どうやら、ミコリッテが動いたのを見て、自分が何かしようとは考えていなかったらしい。


「あの、大丈夫ですか?」

「……はい」

「なるほどな。バブルコーティングの筒に魔獣を設置し、安心したところを狙ったのか……前回の『火のダンジョン』にはなかった配置だ」

「短剣の、聖剣?」


 ユノは、ミコリッテをジーっと見ていた。

 ミコリッテは頷き、収納から投げナイフを取り出し、ユノに見せる。


「わ、私の聖剣は投擲型なんです。地属性で、能力は『地縛』……刺さった対象を、地面に縫い付ける効果があります」

「ミコリッテ。自分の聖剣の能力をペラペラしゃべるな。たとえ味方でもな」

「あ、そうでした。ごめんなさいね、今のは聞かなかったことに!」

「うん。ねぇねぇ、形状変化できるの?」

「いえ、それは七聖剣だけですね。模造聖剣には属性と、魔法と、能力だけです」

「そうなんだ……」


 と、ユノはミコリッテにお辞儀した。


「助けてくれて、ありがとう」

「いえいえ。あなたたちを守り、鍛えるのも私たちの仕事ですから」

「いい勉強になっただろう? ここでは、油断と慢心は命に関わると」

「「……ハイ」」


 ユノは周囲を常に警戒するようになり、エレノアもはしゃぐのを止めて、カレリナたちの傍にいるようになった。

 こうして、エレノアたちは少しずつ成長をしていく。

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