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炎の迷宮『業火灰燼』②/灼熱の遺跡

 ロイは仰天していたが、エレノアとユノも同じだった。


「「…………」」

「久しぶりに見たが、やはり暑いな……」

「で、ですね……火のダンジョン、『業火灰燼』……燃え盛る遺跡」

 

 エレノアとユノは唖然としていたが、二人に同行している聖剣騎士団『火』部隊長のカレリナと、『土』部隊長のミコリッテは、驚いてはいたが、絶望はしていない。

 エレノアは挙手。


「あ、あの~……これ、どうやって入るんです?」

「ああ、安心しろ。あそこに、『バブルコーティング』がある。あれに触れると、一定時間は炎によるダメージを無効化するんだ」


 カレリナが指さしたのは、遺跡入口にある、ボコボコと泡が出ている妙な筒だった。


「あれが、ダンジョン内にいっぱい配置されているんです。コーティングが切れる前に、またあの筒に触ってコーティングして進んで、また切れる前にコーティングして進んで……を繰り返して、最下層にいるダンジョンボスを倒して、核を破壊すればクリアです」

「ま、まじですか……あんなシャボン玉で?」

「というか、エレノア嬢。そなたは炎聖剣フェニキアの所持者だろう? 炎属性は完全に無効化されるはずだ」

「え」


 初耳だった。

 そういえば、炎を出して戦うが、炎が熱いと思ったことはない。

 ミコリッテは部下に命じ、松明を持ってこさせた。


「ほら、触ってみます?」

「え、いや……」

「大丈夫ですよ。さぁさぁ」

「ぅ」


 エレノアは、恐る恐る松明に手を近づける。怖いのでそっぽ向いていると。


「ほら、ね?」

「……うっそ」


 炎が手に触れているのに、全く熱くない。

 まるで、煙に触れているような感覚だ。メラメラ燃える炎が、まるで熱くない。


「すっごぉ……」

「エレノア、火傷しない?」

「し、しない。なんか……煙触ってるみたい」

「いいなー」


 試しに、燃え盛るダンジョンに近づいてみた。

 入口のドアも燃え盛っており、ドアノブは金属なので真っ赤になっている。

 エレノアは、恐る恐るドアノブを触れてみた……が。


「わお!! 熱くない!! すっごい!! あたし無敵!?」


 エレノアは燃え盛る壁に寄りかかったり、燃える石を拾ってお手玉をして遊んでいた。

 ユノが恐る恐る近づくが「あつっ!?」と叫んで離れてしまう。


「ユノさん、このバブルコーティングを」

「うう……火傷する」

「安心しろ。このバブルコーティングに触れると、五分は耐えられる」

「……五分過ぎたら?」

「丸焼けだな」

「…………帰りたい」


 ユノは早くも心が折れそうだった。

 バブルコーティングに近づくと、泡がボコボコと自動で出てユノたちの身体を包み込む。

 コーティングが終わると、カレリナとミコリッテは迷いなくダンジョンへ。ユノは少しオドオドしたが、思い切ってダンジョン入口に飛び込んだ。


「……熱くない」

「さぁ、行くぞ。『バブルコーティング』を探しつつ、ダンジョンを攻略する」


 火のダンジョン『業火灰燼』

 探索メンバー。リーダーのカレリナ、補佐のミコリッテ。

 七聖剣士『炎』のエレノア、『氷』のユノ。そして、マッパーの聖剣士が三名に、荷物持ちの聖剣士が五名。合計十二名での探索が始まった。


 ◇◇◇◇◇◇


 所変わって、サリオス、ロセのいる場所は……『業火灰燼』から数十キロ離れた場所に突如として現れた巨大な『湖』の前だった。

 水のダンジョン『渦潮』

 地面が割れ、大量の水があふれだし、ほんの数十分で巨大な『湖』となった。ほんの数日で水中型の魔獣が多く住むようになったようで、水面には巨大な魚がウヨウヨ泳いでいる。

 さらに、水面には小規模の渦潮が、いくつも発生していた。


「…………これが、ダンジョン?」


 サリオスが首を傾げる。

 それもそうだ。大小さまざまな渦潮が発生しているだけの湖だ。

 すると、ロセが前かがみになり、「ん~……?」と湖を眺めている。前かがみになると、制服越しでもわかる大きな胸がぷるぷる揺れ、思春期のサリオスには辛い。


「水底に、建物がありますねぇ~? 私、水のダンジョンは初めてなのですけど……あれが、ダンジョンですかぁ?」

「ご明察」


 答えたのは、聖剣騎士団『水』部隊長のポマード。

 そして、ポマードの肩をガシッと組むのは、聖剣騎士団『雷』部隊長のエクレールだ。


「あの渦潮に飛び込んで水底まで行って、ダンジョンに入るよ。くくっ……すっげえ楽しそうじゃん!!」

「…………」


 正気か。

 どこか顔色の悪いサリオスは、そう叫びたかった。

 チラリと後ろを見ると、マッパーと荷物持ちの聖剣士たちも、サリオスと似たような顔色をしている。

 ロセ、ポマード、エクレールの三人だけが、どこか楽しそうだ。


「…………」

「なぁんだお坊ちゃん、怖いのかい?」


 エクレールが、サリオスの肩を組む。

 聖剣騎士団は鎧を装備するのが決まりなのだが、なぜかエクレールは付けていない。柔らかな胸がサリオスの肩に触れ、ビクッと震えてしまった。

 それに気付き、エクレールはケラケラ笑う。


「カワイイ坊っちゃんだね。王子じゃなかったら食っちまいたいくらいだ」

「っ!!」

「エクレール。前途ある若者を惑わすのはやめなさい」

「へいへい」

 

 ポマードに言われ、エクレールはパッと離れた。

 サリオスは耳まで赤くなり、顔を押さえている。すると、ロセがサリオスの肩をポンポン叩いた。


「サリオスくん。がんばれがんばれ!」

「え」

「ふふ、緊張しないで。これからダンジョンに入るけど、一日で攻略するわけじゃないから。今日はダンジョンの様子を確認して、本気の攻略はまた後日、ね?」

「は、はい」

「ふふ。だいじょうぶ! お姉さんが守るから!」

「う……」


 ロセが胸をドンと叩くと、ぶるんぶるんと揺れた。

 エクレールよりも刺激が強い『お姉さん』に、サリオスは「ボク、やっていけるかな……」と、一人ため息を吐くのだった。


「じゃ、行くよ」

「おう。おいオメーら、気合入れろよ!!」

「「「「「はい!!」」」」」


 エクレールの部下であるマッパー、荷物持ちたちが返事をする。

 すると、ポマードが収納から聖剣を取り出した。


「じゃ、ボクの聖剣でみんなに『水膜』を張る。二分くらいなら水中で呼吸できるから、飛び込んだらすぐにダンジョンの入口まで進んでね」


 ポマードの聖剣は、片刃で短い。片手でクルクル回転させると、刀身から水があふれだし、サリオスたちに向かって振ると水が膜となって身体を覆う。

 水属性の聖剣、『ミロカロス』だ。この程度の水の操作はポマードにとって朝飯前。


「じゃ、行こう! サリオスくん、お姉さんにしっかり掴まってね!」

「え」


 ロセは、サリオスの手を掴んで跳躍した。

 ユノより小さい身体なのに、抵抗すらできずサリオスはロセに引っ張られ、宙を舞う。


「う、ぇぇぇぇぇぇっ!?」

「じゃあ、いざ水のダンジョンへ!」

「うおっっぶ!? ななななぁぁぁぁぁっ!?」


 なんと、ロセが思いっきりサリオスの顔面にしがみついた。巨大な胸が思いきりサリオスの顔面に押し付けられ、サリオスはとんでもなく混乱。それを水に入ったことで混乱したと勘違いしたロセは、さらにサリオスに抱きついた。


「だいじょうぶだいじょうぶ! お姉さんに身を任せて~!」

「……………………」


 柔らかな感触と甘い香りに包まれ、限界を迎えたサリオスは気を失った。

 最後に見たのは、爆笑するエクレールと笑いを堪えているポマード……だった気がした。


 ◇◇◇◇◇◇


 一方、ロイは。

 ステルスローブで身を隠しながら、『業火灰燼』の周りをウロウロしていた。


「おい、隠し通路ってどこだよ」

『えーと……どこだったかな。何せ、最後に見てからもう数千年経過してるし。まぁ、そのローブを着てれば、この程度の炎はギリで相殺できるだろう』

「ぜっっっったいに嫌だからな!! ってかギリって何だよふざけんな!!」


 隠し通路を探すのに手間取り、なかなかダンジョンに入れずにいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] このラキスケ王子め!(羨ましい ここのところ王子のキャラ変えた感が強いですが、クズのままだと動かしづらいのかな?
[気になる点] ステルスローブで見えてないならわざわざ隠し通路から行かないで同じ入り口から入ればいいんじゃ? [一言] 更新ありがとうございます(‐人‐)
2022/09/18 18:03 退会済み
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