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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第二章 夢とお菓子と快楽のパレットアイズ

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炎の迷宮『業火灰燼』①/燃えるダンジョン

 ダンジョンに挑戦することになった。

 ユノがそう言うと、ロイは「やっぱりな」と思った。

 デスゲイズの言った通り、ダンジョン攻略に七聖剣士が駆り出される。

 ロイは平静を保ちつつ、ユノに言う。


「ダンジョン攻略……大丈夫なのか?」

「うん。最近はロセ会長といっぱい訓練してるし、収納も使いこなせるようになってきた。ほら」


 ユノが指をパチッと鳴らすと、ユノの頭上に黒い穴が空いて、『氷聖剣』が落ちてきた。

 それを掴み、再び黒い穴に剣を入れる。


「持ち運びらくちん。しかも、お菓子もいーっぱい入るの」

「お、お菓子?」

「うん。収納、すっごい便利」


 と、オルカをどかしてエレノアがロイの隣へ。


「ユノの言う通り、あたしたちダンジョン攻略に行くことになった。最初は、トラビア王国から北にある『炎』のダンジョン……あたしにピッタリね」

「わたしも一緒。炎属性なら、氷で冷やせるし」

「それと、聖剣騎士団も同行するわ……ね、ロイ。ロイも行けない?」


 エレノアはチラッとデスゲイズを見た。が……エレノアの隣に座っていたオルカが言う。


「いやいやエレノアちゃん。オレらみたいな新人聖剣士が行けるわけないっしょー? あはは、ロイと一緒にいたい気持ちはわかるけどさー」


 どうやら冗談だと思われている。エレノアとしては冗談のつもりなどない。

 エレノアは、こそっと小さな紙をロイの手に握らせた。


「ま、そうよね。それに、同行するのは騎士団だけじゃなくて、二年生と三年生も同行するって話だし……とりあえず、経験積んでくるわ」

「わたしも、ね、ロイが一緒だとうれしいな」

「そ、そうか?」

「ん……」


 ユノは、ロイの腕に抱きついて甘えてくる。

 頭をぐりぐりしてくるのが、なんとも可愛らしい。

 すると、エレノアがロイの頬を軽くつねった。


「なにデレデレしてんのよ」

「いででで!? いい、痛いって!!」

「ふん。ってかユノ、あんたもくっつくな!!」

「やだ。だってロイ、あったかいし優しいから大好き」

「え」

「ロイはわたしのこと、好き?」

「えっと」


 なんと応えればいいのか、ロイにはわからない。

 ユノのことはもちろん好きだ。恋愛的な意味ではなく、友人として。

 こうして腕に抱きつかれるのも、正直悪くない。女の子の柔らかさが気持ちいいし、甘いどこかひんやりとした香りも、妙に心地よい。

 ユノはかわいい。こんな可愛い子に「好き」と言われたら、もちろん嬉しい。

 だが───隣のエレノアの視線が、けっこう痛い。

 返答を間違えたらヤバいような……すると。


「そりゃ男の子はみんな、可愛い女の子大好きだよな。なぁロイ」

「あ、ああ」

「つまり……エレノアちゃんも大好きだろ? このモテモテハーレム野郎め!!」

「お、おい。なんだよそれ……」

「むー」

「すす、好きって……あ、あたしも? もうロイってば、馬鹿じゃないの? もう、馬鹿……」


 なぜか満更でもなさそうなエレノア。ロイは視線でオルカに『助かった』と言うと、オルカは視線で『あとで奢りな』と返した。

 と───ここで、予鈴が鳴った。


「じゃ、あたしはここで。ユノ、あんまりベタベタしちゃダメだからね」

「それはやだ」


 エレノアは行ってしまった。

 ユノはロイの腕にギューッと抱きついたまま、ロイに言う。


「ロイ、午後の剣術授業、一緒に組もう」

「いいけど……俺、ヘタクソだぞ?」

「いい。一緒がいい」

「あ、ああ」


 お菓子をあげただけで、ここまで懐かれるとは……ロイはまた今度、ユノのためにお菓子を買おうと考えていた。


 ◇◇◇◇◇◇


 放課後。

 ロイは、パーティー会場から離れた場所に立っている見張り塔に来た。

 頂上で待っていると、ドアが開いてエレノアが入って来た。


「時間通り、ね」

「ああ。お前、時間にルーズなヤツ、嫌いだもんな」

「まあね。それより……」


 エレノアは、デスゲイズを見る。

 

『なんだ、ジロジロと』

「……ひ、久しぶりね」

『ふん、我輩のことは誰にも言っていないようだな。危うい場面はあったようだが』

「え、わかるの?」

『我輩がかけた呪いだぞ? 当然だ』


 デスゲイズとエレノアが会話をしている。

 なんともいえない光景に、ロイは少しだけ嬉しくなった。


「な、エレノア。いろいろ聞きたいことがある。お前……というか、七聖剣士が、あのダンジョンに挑むって本当なのか?」

「本当よ。さっき、生徒会長から連絡があったの。私とユノ、会長と殿下の二チームに分かれて、『火』と『水』のダンジョンを攻略するって」

「二チーム同時に攻略か……」

「ええ。ダンジョン、あと六十日以内に攻略しないと、ダンジョン内から魔獣があふれ出る仕様になってるみたい。もしダンジョンから魔獣があふれ出したら……トラビア王国は終わる」

「…………」

「ロイ、あなたも来て。って言いたいんだけど……今回は二年生、三年生と騎士団があたしたちに同行するの。ダンジョンの入口も厳重に守られているし、同行は難しいかも……」

「くそ……」


 さすがのロイも、完全に屋内だと弓で狙いようがない。

 

「なぁ、ダンジョンはどうすれば消えるんだ?」

「ダンジョンの心臓である『核』を破壊すればいい、って聞いたけど」

「そういうのって当然……」

「ええ。ダンジョンの最下層にあるらしいわ。核を守る魔獣もいるみたい」

「管理者の魔族は?」

「普通は出てこないみたいだけど……」


 エレノアが首を傾げると、デスゲイズが言う。


『奴らはダンジョンの「管理部屋」にいるだろうな。そこで、お前たちの戦いを観察し、魔獣を投入したり、罠を設置したりしているはず。奴らを引きずりだすには、核を破壊するだけじゃ足りないな』

「じゃあ、どうするのよ」

『ロイ、お前の出番だ』

「え?」

『最初は、火のダンジョンだったな。確か……『断鋏』のシェリンプが管理者のはず。ククク、面白くなってきた。ロイ、魔王狩りの始まりだぞ』

「……なんか嫌な予感してきた」

『さぁ、まずは準備が必要だ。エレノアよ、ダンジョン攻略はいつからだ?』

「明後日からだけど……」

『よし。ではロイ、さっそく狩りに行くぞ。エレノア、お前も来い』

「え、今から? もうすぐ夕飯だぞ」

「それに、夜間外出は禁止よ?」

『放っておけ。いいから行くぞ』


 いつになくやる気のデスゲイズに付き合い、二人は初めて校則を破った。


 ◇◇◇◇◇◇


 二日後。授業が終わり、ロイはカバンを手に立ち上がった。

 すると、オルカとユイカが傍に来る。


「なー、今日はどうする?」

「悪い、帰るわ」

「……わかる。心配だもんね、お祈りでもするの?」

「いや、普通に帰るだけ」


 ユイカに肩をポンポン叩かれた。

 今日は朝から、エレノアとユノとサリオスがいない。

 七聖剣士の三人だけではなく、二年生と三年生もダンジョン攻略に駆り出され、学園内は静かだった。

 ちなみに、ベルーガの襲来以降、学園警備として騎士団の一つが常に警護をしている。

 ロイは急いで教室を出た。


「行っちまった……何だろな、遊びにでも行くのか?」

「違うでしょ。あ、ねぇオルカ。買い物行くから付き合ってよ。新しい鞘欲しいんだ~」

「お、デートのお誘い? いいね、喜んで!」

「違うわよバーカ」


 二人の仲睦まじい声が聞こえた。

 ロイは少しだけ微笑み、自分の部屋に戻ってカバンを投げ捨て、城下町の防具屋で買った革製品の装備を身に付ける。

 そして、デスゲイズを掴み、寮から飛び出した。


『向かう先はわかっているな?』

「エレノアたちが向かった火のダンジョン!! そこにある隠し通路(・・・・)だな?」

『ああ。本来、魔界貴族たちが出入りする専用の入口だ。魔法で隠蔽されているが、お前なら見つけられる』

「よーし!!」


 魔族を狩る。

 そう考え、ロイは魔力操作で加速する。

 国の外へ出て、いつも狩りをしている森へ。正面の街道には、多くの聖剣士や騎士団がいる。ロイの姿を見られるわけにはいかない。

 ロイは、火のダンジョン『業火灰燼』から二キロほど離れた林道へ入り、一番大きな木の上に登った。

 そして、魔力を眼に集め……巨大な『遺跡型』ダンジョンを見る、が。


「………………は?」


 ロイは、自分の眼が信じられなかった。

 なぜなら。


「お、おいデスゲイズ……あれ、ヤバくないか?」

『何がだ?』

「いやだって、あれ、遺跡───……燃えてるぞ」


 遠目からでもわかった。

 火のダンジョン『業火灰燼』は遺跡型ダンジョン。

 遺跡は、豪快に燃えていた。

 まるで火事……なのだが。


『あれが普通だ。さ、行くぞ』

「マジで!? いやいや、さすがにヤバいぞ!?」


 こうして、ロイとデスゲイズのダンジョン攻略が始まった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白く読ませて頂いてます [気になる点] ユノが出てきた時からそうなるんだろうなと予想してましたが、やはりこの流れを繰り返すんですね くっつくなと言うヒロイン、重要なのかもしれないけどしょ…
[良い点] 状況がとてもわかりやすい。 ユノが可愛すぎる。 [一言] ダンジョン! 応援してます。 更新頑張ってください!
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