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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第二章 夢とお菓子と快楽のパレットアイズ

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それは地から

 さっそく、ロスヴァイセによる『聖剣の使い方』が始まった……のだが。

 ユノは、ロスヴァイセをジーっと見て、周囲をキョロキョロする。


「ロスヴァイセ会長、聖剣は?」


 そう、ロスヴァイセは手ぶらだった。

 ロスヴァイセはニコニコしながら手をポンと合わせる。


「ふふ、ロスヴァイセって長いし言いにくいでしょう? ロセで構いませんよ~」

「じゃあロセ会長。聖剣ないの? お部屋忘れた?」

「ゆ、ユノってば!! もうちょっと言い方……」


 エレノアに小突かれ、ユノはゆらゆら揺れた。

 ロセはクスクス笑い、指をパチンと鳴らす……すると、ロセの背後から、全長三メートルを超える巨大な『斧』が現れた。

 いきなり現れた斧に、エレノアたちはギョッとする。


「これが私の聖剣、『地聖剣ギャラハッド』です。ふふ、おっきいでしょう~?」

「す、すごいな……」


 ロセの二倍以上ある、黄金の両刃斧だった。

 刃の部分がギザギザになっており、持ち手の部分もゴツゴツして持ちにくそうだ。だが、ロセはその巨大な両刃斧を片手で摑み、ブンと振り回す。

 

「ど、どこにあったの……? まさか、空から?」

「不正解。まず、みなさんに覚えてもらうのは、聖剣の『収納』です。魔力で作った空間に聖剣を収納しておけば、いつ、いかなる場合でも聖剣を取り出して戦えます。見ての通り、私の聖剣は巨大なので、軽々しく持ち歩けないので……収納空間は便利ですよ?」

「そういえば……王城の護衛をしている聖剣士たちはみんな、聖剣を帯刀していなかったな」


 サリオスは「なるほど……」と頷いていた。

 もちろん、公の場などで帯刀する場合もあるようだが。


「ふふ。上級生に会ったことはまだないですよね? 上級生はみんな、収納空間に聖剣をしまっていますよ。もちろん、例外はありますけどねぇ」

「「「なるほど……」」」


 三人は頷いた。

 ロセはニコニコしながら、両手をポンと打つ。


「今日は、『収納』の習得をしましょう。それと、一人ずつ私とお手合わせして、実力を確認させてくださいね」

「「「はい!」」」


 こうして、生徒会長ロセの指導が始まった。


 ◇◇◇◇◇◇


 数時間後。


「いいですか? 魔力によるイメージです。身体強化や魔力操作と同じです。魔力で鞘を作るイメージをすれば……ほぉら」


 空間に、黒い穴が空いて『地聖剣ギャラハッド』がズシンと落下、地面に突き刺さった。


「ふんぎぎぎぎ……ッ」


 エレノアは手を前に突き出し、プルプル震えている。


「───……こう、かな?」


 サリオスはコツを掴んだのか、練習開始から一時間で収納空間を精製。


「お菓子、いっぱい入れておけるかも」


 ユノも、開始十分で収納空間を精製した。

 ロセはユノとサリオスに言う。


「お二人の魔力、とてもスムーズに流れていますね。まだ先の話ですけど、『魔法』の習得も早そうです。ふふ、才能でしょうかねぇ」

「あの、あたし、は……、っふんぎぎぎ!!」

「エレノアちゃんは……どうやら、細かい魔力操作が苦手みたいですねぇ。でも、収納空間を精製しようとする魔力量は、この中で一番多いです。潜在的な魔力量は、お二人よりも上ですね」

「そりゃ、どうも……っ!!」


 プルプル震えていると、小さな黒い穴がポコッと開いた。エレノアが顔をほころばせると、すぐに穴は閉じてしまった。


「あ、あぁぁ……」

「大丈夫大丈夫。本来、収納空間の精製は、二学期の後半から始めるんです。なぜこれを最初に始めたかというと……収納空間精製の訓練は、魔力操作や身体強化を使うのに役立つからなんです」

「……なるほど。イメージですね?」

「大正解! サリオスくんは博識ねぇ」

「ど、どうも……」


 収納空間の精製。

 魔力により、現実とは異なる空間を作り、そこに聖剣を収納しておく。

 無から有を作り出す初歩の初歩であり、これには『イメージ』が何よりも絡む。

 イメージは、魔力操作において重要だ。イメージの力で空間を精製するのは、魔力操作をする上で最も難しい。これを習得すれば、魔力操作も上手くなる。

 魔力操作が上手くなれば、身体強化も上手くなる。


「慣れれば寝てても収納を維持できるわ。これから毎日、収納で聖剣をしまっておくようにね~」

「「はい!」」

「は、はい……うう、できるのかな」


 エレノアは、がっくり項垂れてしまった。

 ロセは「慣れれば大丈夫だから、がんばって」と明るく声をかける。

 

「じゃあ次ね。一人ずつ、私と模擬戦をします。今から私は、皆さんがこれから習得すべき技術を見せますので、しっかり見ておくように。ああ……皆さんは、私を殺すつもりでかかってきてくださいね?」


 再び、地聖剣ギャラハッドが上空から落ちて来た。

 ロセは身体強化で数メートル跳躍し、柄を片手で摑む。そして、落下の勢いを利用して聖剣を地面から引き抜き、思いきり振り回しながら着地した。

 ダイナミックな振り回しに、三人は圧倒され───瞬時に、理解した。

 ロセは、魔界貴族『伯爵』のベルーガより、遥か格上だ、と。


「……オレから行くよ」

「殿下……」

「だいじょぶ? 怪我しない?」

「ははは……勝てる気はしないけどね。でも、強くなりたいからさ」


 サリオスは、光聖剣サザーランドを抜いてロセに突き付ける。

 生徒会長だから、女子だからなどという考えはもうない。ロセは遥か格上。剣を合わせれば得る物は多い……サリオスは、ぶるりと震えた。


「では───行きます!!」

「はぁい」


 授業で、ほんの少しだけ習った『身体強化』で走り出すサリオス。

 まだまだ拙い。身体を流れる魔力は荒く、強化も甘い。でも、普通に生身で突っ込んでくるよりはマシだろう。

 

「トラビア王宮剣技───「はいダメ~」……えっ!?」


 なんと、『地聖剣ギャラハッド』の柄が分離し、サリオスの横薙ぎを柄が受け止めた。正確には、柄に収納されていた『短槍』だった。

 ロセは言う。


「まず、きみたちは剣術に頼りすぎです。せっかく女神の聖剣を持ってるんだから、もっと特性を理解して、聖剣を『使って』戦わないと───……って、あらら! 模擬戦って言ったのに、指導になっちゃったわぁ~……ごめんなさいねぇ」

「い、いえ……」

「せっかくだし、このまま続けましょうか。まず、聖剣の最初の能力……『変形』です」

「変形……?」

「ふふ、聖剣はいくつかの形態に変形することができます。私の場合、柄を分離させた『短槍』が一つ。ほかにもありますけど……今は秘密です」

「……じゃあ、オレの剣も」

「はい。状況に応じて、変形させることが可能です」

「すごい……」

「さ、続けますよ」

「はい!!」


 剣術だけに頼るな。

 その教えをサリオスは頭に入れ、自分にできることを考える。

 今の自分ができるのは、幼少期から習っている『トラビア王宮剣術』と、光聖剣サザーランドを発光させることだけ。

 聖剣の属性を利用した『魔法』や、聖剣を『変形』させることはまだできない。

 サリオスの連続攻撃を、ロセは短槍を器用に使って捌く。


「……すごいわ」

「殿下も間違いなく強い。でも……ロセ会長、見切った上で殿下の攻撃を丁寧に捌いてる。殿下がやりやすいように、本気を出させようとして……」

「……ねぇ、変形ってどう思う?」

「……できるのかな。これ、すっごく細いけど」


 ユノは氷聖剣を見る。

 変形。姿を変えることができるとは思えないが、ロセが言うならできるのだろう。

 すると、サリオスの剣が、ロセの槍に弾き飛ばされた。


「はい、ここまで」


 槍の先端がサリオスの首に突き付けられる。

 サリオスは肩で息をして、大汗を掻いていたが……ロセは、汗一つ流さず、息も乱れていない。

 

「素直な剣で、非常に読みやすいですね。実戦経験はほぼゼロ。習った剣をそのまま使っています。まだまだ伸びしろがあるので、これから毎日特訓しましょうね!」

「は、は、はい……っぷは」


 ロセはにっこり笑い、収納からタオルとドリンクを取り出してサリオスへ。

 サリオスは、ありがたく受け取り、汗を拭いながらドリンクを飲み、エレノアたちの元へ。

 

「……自分がいかに弱いのかを思い知ったよ」

「どんまい」

「さすが生徒会長ね……バケモノだわ」

「でも、追いついてみせるさ。そうだろう、エレノア、レイピアーゼ令嬢」

「そうね……めっちゃやる気出てきたし!」

「わたしも。それと殿下、ユノでいいよ」

「……ああ、ありがとう、ユノ」


 ユノは、サリオスの頑張りを評価したのか、名前呼びを許してくれた。

 そんな三人を見ながら、ロセはうんうん頷く。


「青春ねぇ~……はふぅ」

「次、あたしが行きます!!」

「はぁ~い。ふふ、エレノアちゃんね」


 エレノアは『炎聖剣フェニキア』を構え、刀身に炎を纏わせる。


「では、行きま───……って、わわわわわっ!!」


 突如、地震が発生した。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


「…………ん?」

『む、どうしたロイ』

「…………これは」


 ロイは、魔族狩りの帰り、平原の道をのんびり歩き……立ち止まった。

 背中が妙にぞわぞわする。

 地面に手を触れると、不快感が増したような気がした。


「デスゲイズ、妙な気配を『───チッ、来たか』……え?」

『ロイ、来るぞ……ヤツが、パレットアイズが動き出した』

「え───……って、うぉぉぉぉ!?」


 突如、地震が起きた。

 大地震だった。

 ロイですら立っていることができない大地震。思わず態勢を低くする。

 ただの地震ではない。

 

「なんだ、これ……」


 下から、何かが来る。

 ロイの位置から数百メートル先の地面に巨大な亀裂が入った。

 そして───……大地を突き破るように、巨大な『城』が現れた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ななな、なんだコリャァァァァァァァ!?」


 ロイは絶叫した。

 地面から巨大な『城』が現れれば、誰だって叫ぶだろう。

 地震が収まると、遠目で見たことのあるトラビア王城よりも巨大な『城』が、ロイの数百メートル先にドドンと鎮座している……まるで、初めからあったような存在感に、声も出ない。


「…………城」


 ロイがポツリと言うと、デスゲイズが言った。


『これが【箱庭空間(ダンジョン)】だ。パレットアイズが人間界に作り出す《遊び場》で、数は最大で五つ。四人の魔界貴族『侯爵』が管理するダンジョンと、パレットアイズの側近である『公爵』が管理するダンジョンが一つだ。ククク、ちょうどいい……ロイ、乗り込んで魔界貴族を始末しろ』

「できるかボケ!!」


 ロイは叫び、トラビア王国に向けて猛ダッシュした。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >四人の魔界貴族『公爵』が管理するダンジョンと、パレットアイズの側近である『侯爵』が管理するダンジョンが一つだ 公爵と侯爵が逆ではないでしょうか。側近の方が上位だと思うのですが
[良い点] 生徒会長!良いキャラですね! [一言] 更新量多くてすごいです。 毎日楽しく読ませていただいています。 応援してます!頑張ってください!
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