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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第二章 夢とお菓子と快楽のパレットアイズ

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生徒会長ロスヴァイセ・ストレイテナー

 ロイは、一人で森の中にいた。

 学園が終わると、買い食いに誘うオルカに謝り、速攻で森に来たのだ。


「『黒装(トランス)』」


 ローブ、仮面を装備し魔弓デスゲイズを握る。

 いつになくやる気満々のロイに、デスゲイズは言う。


『気合が入っているな……なんだ? あの青髪の女を抱く算段でも付いたのか?』

「へし折って捨てるぞこの野郎。今日から、生徒会長がエレノアたちを鍛えるんだって。俺も七聖剣士たちを援護するって決めたし、もっと弓の腕前を上げないとな!!」

『…………』


 はっきり言って、狙撃に特化した今のロイはエレノア、ユノ、サリオスが束になっても勝てないほど強い。他の聖剣士をデスゲイズは知らないが、正直なところ、真正面から戦わない限りロイが負けるとは思えなかった。が……せっかくやる気になっているので、余計なことは言わない。


『なら、実戦だ』

「え?」

『…………ちょうどいい。ククク、ここから三キロほど南に、魔族がいる』

「───!?」

『数は……四か。恐らく、ベルーガの死を確認しに来たのだろう。安心しろ、魔界貴族ではない。下級魔族が三体と、中級魔族が一体だ。強さで言えば、下級魔族一匹が、お前が以前撃ち抜いたアッシュウルフ二十頭ぶんほどだ』

「め、滅茶苦茶強いだろうが……」


 アッシュウルフは、D級聖剣士が三人ほどいれば倒せる。それが二十頭となると、B級聖剣士がいないと危ういかもしれない。

 ロイはゴクリと唾を飲むが、デスゲイズは言う。


『真正面から戦うのはお前の役目じゃない。お前、群れに対しての狩りは経験がないのか?』

「いや、あるけど」

『なら、やれ』

「……わかった」


 スゥー……っと、ロイの気配が変わる。

 狩りをするために、狩人となる。

 たった今まで弱音を吐いていた子供とは思えない変貌っぷりに、デスゲイズは驚いていた。


『ロイ。いい機会だ……お前に、魔族を教えてやる』


 ロイは、デスゲイズが指示する方向に向かって走り出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 魔族。

 姿形こそ似ているが、人間とは全く違う種族である。

 魔族は、心臓付近に『核』と呼ばれる命の結晶があり、これを破壊されない限り、首を刎ねても、頭を潰しても死ぬことはない。

 魔族は、人間より遥かに高い魔力を持ち、地水火風光闇雷全ての属性に適性を持つ。魔力量はざっと人間の数百倍……魔法の撃ち合いで魔族が人間に負けたことは、人間と魔族の歴史が始まってから一度もない。

 

 魔族には、以下の等級がある。

 下級魔族。中級魔族。上級魔族。最上級魔族。

 最上級魔族の上に、『爵位』を与えられた強大な力を持つ魔族、『魔界貴族』がいる。

 男爵級、子爵級、伯爵級、侯爵級。そして、四人の魔王が一人ずつ抱えている『公爵級』だ。公爵級は四人しかいないため、『四魔公爵』と呼ばれ、魔族から尊敬、羨望されている。


 魔界貴族は、それぞれ固有の能力を持つ。

 魔族は固有の能力を開発して、魔王に挑む権利を得ることができる。

 魔王に認められ能力に『名前』を付けられ、爵位を与えられた瞬間に魔界貴族となる。


『───と、こんなところか』

「魔界貴族か……俺が撃ち抜いたやつは『伯爵』だっけ?」

『ああ。魔界貴族の中でも弱い部類だな』

「弱い部類って……男爵、子爵は?」

『もっと弱い。まぁ、模造聖剣士どもは苦戦するだろうが、戦えないほどではない。問題なのは、侯爵級以上の魔族だ……こいつらは全員、今のお前でも苦戦する』

「……倒せるとは思わんけど」

『ははは。今の、お前ではな。忘れたか? 我輩の権能を使いこなせれば、魔王だって倒せるのだぞ?』

「じゃあ、はやく他のくれよ」

『ダメだ。物事には順序がある。まずは、『暴食(グラトニー)』を完全に使いこなせ。まだ『魔喰矢(グロトネリア)』……肉と魔力を食う矢しか撃てないだろうが』

「他にもあるのか?」

『ああ。暴食は何でも喰らう。その意味をよく考えるんだな』

「むぅ……」


 走りながらの会話だ。

 一キロほど走り、森の入口でロイは急停止。

 近くの藪に飛び込むと、マントと仮面が藪と完全に同化した。


「…………いるな」

『見えるのか?』

「ああ。平原の街道を……四人で歩いてる。面倒だな、遮蔽物がない、完全に開けた場所だ」


 万象眼を使わずとも、二キロ圏内ならロイの魔力操作で向上した眼で確認できる。

 デスゲイズは言う。


『狙いは心臓だ。仮面に魔力を多く注いでみろ』

「……おっ」


 仮面ごしに見た魔族の心臓付近が光って見えた。

 

『それが核の位置だ。いいか、頭でも首でもない、核を狙え』

「わかった」

『だが……どうする? 一人射抜けば、間違いなく残りは警戒するぞ』

「簡単だろ」


 ロイは矢筒から、重量のある『ダムライド』という金属製の矢を四本抜く。

 先端が鉛色で、鈍い輝きをしていた。


『それは?』

鉄芯鋼(アーマーピエシング)加工がしてある矢。簡単に言うと、鏃に鋼の芯を入れて、貫通力を高めた矢だ。これ一本金貨一枚するんだけど、お前のおかげでいくらでも出せる」

『ふむ、なかなか面白いな……で、それで狙うのか?』

「ああ」


 ロイの眼がスッと細くなり、四人で並ぶ魔族に注目する。

 デスゲイズは黙り込む。ロイは静かに矢を番え、確認した。


「本当に魔族なんだな? 見た目はどう見ても普通の人間だけど……」

『我輩が間違えるとでも?』

「…………わかった」


 ロイの呼吸が止まった。

 狙いを定めている。

 十秒、二十秒と呼吸が止まっている……が、ロイの表情は一切変わらない。

 おかしい。

 いつもよりタメが長い。だが、汗も掻かずに何かを狙っている。

 一分が経過し、さすがに声をかけようとした瞬間。


「───きた」


 矢が放たれた。

 二秒後、ロイは静かに言う。


「よし、命中」


 確認したデスゲイズは驚愕した。

 

『ま、まさかお前……た、たった一本の矢で(・・・・・・・・)四人同時に!?(・・・・・・・)

「ああ。四人は前後に並んで歩いてたから、四人の心臓の位置が合わさる瞬間を待ってたんだ」

『…………ッ!?』


 ロイは当然のように言い、眉をひそめた。


「おいおい、身体が青く燃えて……き、消えたぞ」

『あれが魔族の死だ。魔族は核が損傷しない限り、何千年も生き続ける。核が破壊された魔族は、青い炎に包まれて灰すら残らずに消える』


 四人の魔族は青い炎に包まれ、完全に炎が消えると何も残らなかった。

 ロイは、ポツリと言う。


「青い炎……不謹慎かもだけど、綺麗な色だな」

『…………』


 デスゲイズは改めて思う。

 ロイ・ティラユール。この少年の弓技は、魔王ですら射抜けると。


 ◇◇◇◇◇◇


 一方そのころ。

 エレノア、ユノ、サリオスの三人は、聖剣レジェンディア学園第一訓練場に集まっていた。

 第一訓練場。ここは、七聖剣士しか使うことのできない特殊な訓練場。

 通常の訓練場よりも頑強な造り、とエレノアたちは聞いている。

 現在、ここにいるのは三人だけだ。


「……遅いな」


 サリオスがそう言うと、ユノがウンウン頷く。

 約束の時間から、十五分以上経過している。なのに、生徒会長は来ない。

 それからさらに十分後、ようやく来た。


「ごめんなさぁ~~~いっ!!」


 現れたのは、ユノよりも小柄な栗色のロングウェーブヘアの少女。

 外見年齢は十四歳ほどにしか見えない……が、デカい。

 

「ごめんなさいねぇ。生徒会のお仕事、終わらなくて……約束のお時間までには! って思ってたんだけど、ぜんぜん終わらなくって……本当に、ごめんねぇ」

「「「…………」」」


 どこかのんびりした少女だ。

 謝っているのだが、どこかニコニコしている。馬鹿にしているのはなく、自然とニコニコ顔になってしまうようだ……が、ペコペコ頭を下げると、すごく揺れる。


「おっきい」

「こ、こらユノ!!」


 ユノは、自分の胸を持ち上げながら生徒会長を見た。

 サリオスはそっぽ向き、耳まで真っ赤になりゲホゲホむせている。

 生徒会長の胸は、エレノアよりも大きく、制服が弾け飛びそうだった。

 生徒会長は胸を押さえて赤くなり「あはは」と笑う。


「ごめんなさいねぇ。その、私のお胸、ドワーフの血のせいなのか、おっきいのよ~、もう困っちゃうわぁ」

「ドワーフ?」

「知らない? 私の故郷、オースト帝国に住む固有種族なの」

「……なるほど」


 サリオスは理解した。

 七つの聖剣が守る国には、それぞれ固有の種族が住む。

 このトラビア王国には人間が住み、他種族を受け入れている。

 オースト帝国はドワーフ、ユノの故郷であるレイピアーゼ王国にはダイアスノウという寒さに適応した種族が住む。


「私、ドワーフと人間のハーフでねぇ。お顔や身体は人間なんだけど、ドワーフの女性の特徴で、お胸が大きいのよ~」

「すごい」

「べ、別に言わなくていいですよ。うん」


 エレノアが止める。

 ちなみに、ドワーフは女性も髭が生え体毛が濃く、身長も酒樽程度の大きさだ。生徒会長は酒樽よりは大きいし、髭も生えていないし毛深くもない。胸が大きいというところだけドワーフに似たようだ。

 生徒会長は、こほんと咳払いする。


「改めまして。私はこの聖剣レジェンディア学園の生徒会長! ロスヴァイセ・ストレイテナーです~! 『地聖剣ギャラハッド』の聖剣士でもあります。みなさん、よろしくね~!」


 どこか間延びした声で、生徒会長ロスヴァイセは挨拶をした。

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