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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第七章 君の愛の奇跡・大罪の魔王デスゲイズと虹の彼方

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全ての呪縛が解ける時

『…………ここは』


 目を開けると、そこは真っ白な世界だった。

 ロイは自分の手を見る。それは半透明になっており、実体が希薄だった。

 だからこそ、すんなり受け入れられた。


『俺、死んだのか……』


 ほんの少しだけ悲しみ、半透明の手をギュッと握る。

 そして、顔を上げ、晴れ晴れと言った。


「満足だ。俺は……やりきった』

「勝手なことを言うな、馬鹿者」


 と、背後で声が聞こえたので振り返ると……そこにいたのはデスゲイズだった。

 腕組みをし、ムスッとした表情でロイを見ている。

 ロイは目を擦り、驚いていた。


『おま、なんで? え、俺の見てる幻覚か?』

「違う。まあ、幻覚のようなものに違いはないがな」


 デスゲイズは近づき、ロイの胸に拳をポンと打ち付ける。


「ササライは倒した。我輩の作った『虚空神殿』の、さらに切り離した領域内で、永遠に苦しみ続ける。我輩が消滅しても永遠にな」

『……そっか。エレノアたちは?』

「全員無事だ。我輩が怪我を治し、ついでにトラビア王国の負傷者も治してやった。ふふん、感謝しろ」


 デスゲイズは胸を張る。こうして見ると、かなりの大きさでロイは目を逸らした。

 そして、確認する。


『……俺の頼みは、果たしてくれたか?』

「ああ。パレットアイズ……あいつに、三つの魔王宝珠を埋め込んだ。今は、生き残った魔界貴族を率いて、魔界を新たに統治するだろう。それにしても……」


 ロイは、戦いが終わったらパレットアイズに『魔界の統治』を頼んだ。デスゲイズは魔王宝珠を取り返し、再び埋め込むことで魔王としての力を取り戻させた。

 パレットアイズは、デスゲイズの復活に仰天こそしていたが、ロイの「お前はもう人間を傷付けない、愛を知ったから」という言葉を胸に、魔界へと戻った。


「今のパレットアイズなら、問題ないだろう。腐っても元魔王、今はあいつが魔族の王。そう遠くない未来、魔界と人間界の行き来もできるようになるかもな……まあ、パレットアイズには菓子でも渡しておけばいい」

『ははは……そうなったらいいな』


 ロイは笑った。きっと、パレットアイズならそうするだろう。

 アンジェリーナも、シェンフーもいる。

 戦いの中、争いを望まない魔界貴族がいたのも何となく気付いた。これからはきっと、人間も魔界貴族も、同じ世界を生きることができる。


『……本当に、やりきったな』

「ああ、そうだな」

『俺も、命を賭けた甲斐があった。お前には本当に感謝してる』

「…………」

『……じゃあ、そろそろ。俺は行くよ』

「……そうだな」


 ロイが目を閉じた時……がでフワっと近づいてきた。

 そして、ロイとデスゲイズの唇が重なった。


『……ん』

「……ロイ、お前が行くのは、これからの未来だ」

『え……?』

「お前がいない世界は退屈でな」


 ロイの身体が、消えていく。

 同時に、デスゲイズの身体も消えていく。

 ロイは嫌な予感がした。デスゲイズに向かって手を伸ばす。


『おい、デスゲイズ……お前、何を』

「光栄に思え。魔王のキス……ふふ、我輩のファーストキスだ」

『デスゲ……』


 ロイが最後に見たのは、デスゲイズの優しい微笑みだった。


 ◇◇◇◇◇◇


「───デスゲイズ!!」


 手を伸ばすと、ぐにゅっと柔らかなモノを鷲掴みにした。


「……ろ、ロイ」

「え? あれ? え、エレノア? え」


 むにむにと揉むそれは、エレノアの胸。

 前にもこんなことがあったとロイは青ざめ、ブン殴られると思ったが。


「ロイぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「うぉぉぉ!? ちょ、胸!! 手、放すからどいて!!」

「そんなのどうでもいい~~!! うぇぇぇぇん!!」

「うおおおおおおお!? え、え……」


 エレノアの胸を鷲掴みにしながら、ロイは抱きつかれた。

 部屋を見ると、豪華な寝室のようなところだった。

 やたらデカいベッド、調度品があり、まるで高級宿の一室。


「ロイ……」

「ろ、ロイ……」


 すると、ドアが開いてユノとアオイが入ってきた。

 入るなり、二人も飛び込んでロイに抱き着く。


「ろい、ロイ……うっぅっぅ」

「ユノ……な、泣くなよ」

「ロイ、好き、好き……もう離れないで」

「あ、ああ……」

「ロイ殿、約束を果たす時だ……私を、女に」

「お、落ち着け。マテ、お前たち離れてくれ。頼むって!!」


 ロイはようやく、エレノアたちから離れることができた。

 エレノア、ユノ、アオイの三人。三人とも聖剣レジェンディア学園の制服……さらに気付いたが、アオイが男子制服ではなく女子制服を着ていた。


「……ここ、どこだ?」

「サリオスの計らいで、王城の客間を借りたの。学園の寮も被害が出てね……今、城下町全体で復興作業中」

「そっか。あの……俺、どうして」


 死んだはず、と言おうとしたが、言ったら三人ともまた泣きそうだった。

 胸や腹にあった傷はない。それどころか、体調はすこぶるいい。

 そして、気付いた。


「……デスゲイズは?」

「「「…………」」」


 三人とも、何も言わない。

 ロイは胸に手を当て……こうして生きているのがデスゲイズのおかげと知った。


「あいつ、まさか……自分の命を、俺に?」


 そうとしか、考えられなかった。

 夢で見たデスゲイズの顔。きっと、別れの笑顔。

 そう思った瞬間、ロイは涙を流した。


「デスゲイズ……馬鹿かあいつ。せっかく封印を解いて、自由になったのに……」


 感謝すべきなのか、怒るべきなのか。

 ロイは胸に手を当てたまま、静かに涙を流し──。


 ◇◇◇◇◇◇


「うむ、このドーナツは美味いな。やはり人間の『食文化』は素晴らしい。魔族とは比べ物にならん。もぐもぐ」


 ◇◇◇◇◇◇


 聖剣レジェンディア学園の女子制服を着たデスゲイズが、大量のドーナツ片手に部屋に入ってきた。


「お、起きたかロイ。ドーナツ食うか?」

「…………なんで生きてんのお前」

「何? 我輩が生きてて嬉しくないのか貴様は!!」

「いや、というか、うう、なんか混乱一歩手前……え、なんだこれ」


 ロイは頭を押さえた。

 もう意味がわからない。死んだはずなのに生きているし、デスゲイズは普通にいる。しかもなぜか女子制服を着て。

 デスゲイズはドーナツをモグモグ食べながら、ロイのいるベッドサイドに座る。

 ユノがジーっとドーナツを見ていたが、渡す気はなさそうだった。


「お前は、確かに死んでいた」

「………」

「だから我輩は、自分の命の一部と、全ての権能の力を使い、お前の『命』を創造し譲渡したんだ。おかげで、我輩の力は大幅ダウン、全ての権能も弱体化……ヒトの姿こそ取れるが、気を抜くと……」


 ポン、と……デスゲイズは『魔弓デスゲイズ』となり、ベッドに転がった。


『魔王宝珠を媒介に命を創造したから、存在を維持できなくなった。だから、壊れたお前の弓を媒介に、この世界に留まっている。つまり、我輩とお前は同じ命で存在しているようなモノだ……ふんっ』


 すると、デスゲイズは再び人の姿へ。

 ドーナツをモグモグ食べながら言う。


「ロイ、感謝する。我輩の封印を解き、魔王との戦いを終わらせた……お前は、八咫烏は、この世界の英雄だ」

「……そういうのは俺じゃない。七聖剣士たちが受け取る賞賛だよ」

「ふ、お前ならそう言うと思った。だから……ここからは、我輩の褒美をやる」

「え?」


 と、デスゲイズは制服の胸元をはだけ、胸を露出した。


「どうせ我輩は孕まん。いつでも好きな時に、我輩の身体を好きにしていいぞ」

「はい!?」

「ちょ、真面目な話だから黙って聴いてたけど、そういうのはダメ!!」

「最初、わたし」

「いやいや、拙者も約束が」


 騒がしくなる客間。

 騒ぎを聞きつけたサリオス、ロセ、ララベル、スヴァルトが駆け付け、ロイの無事を喜ぶことになり、再び騒がしくなる。

 

 こうして、戦いは終わった。

 七聖剣士の戦いが終わり、世界に平和がもたらされるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ハッピーエンドな感じで一安心
[気になる点] このままエピローグで終了かな?終わってみれば魔王の中でササライが一番小物でしたね。ダークド◯アムがデ◯タムーア倒したみたいな展開で
2024/08/30 20:54 退会済み
管理
[良い点] この結末がいい。 この結末が見たかった。
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