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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第七章 君の愛の奇跡・大罪の魔王デスゲイズと虹の彼方

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止まない雨、詩が終わる時

 七魔剣士は、魔剣を奪われ、全ての魔力を吸い尽くされ、今や立つこともできなかった。

 デスゲイズが魔力の鎖で拘束し、七人を『聖域』の扉に放り込むと、どこかに向かって歩き出す。

 エレノアが首を傾げた。


「ね、どこ行くの?」

「……いいから、来い」

「あ、うん。ね、あんたさ……封印、解けたんでしょ? こうして実態もあるしさ、よかったじゃん」

「…………」


 デスゲイズは歩き出す。

 エレノアはもう一度首を傾げて隣に並び、ユノ、アオイも続いた。

 その後ろを、ロセたちが続く。


「忘却、快楽、嘆き、愛の四大魔王より前に、大罪の魔王デスゲイズが存在した……って、聞いたことある?」

「あるわけねーだろ」

「アタシも。エルフの里ならなんか情報あるかな。ね、サリオスも王家の書庫とか調べてみてよ」

「は、はい。それにしても……エレノアたち、友人みたいに接してますね」


 スヴァルトは「フン」と鼻を鳴らす。


「知ってやがったみてぇだな。ってか、あんな隠し玉あるなら最初から出せってんだ」

「……そうできない理由が、あったのかも?」

「あぁ?」

「あの強さ、私たちの常識を超えているわ。もし、あの力を自由に振舞えるのだとしたら、最初から四大魔王がこの世界で暴れることもなかったわねぇ」

「聖剣を生み出した魔王、ってのもすごいよね。アタシも驚き」

「…………」


 サリオスは、デスゲイズの背中を見て、ポツリとつぶやく。


「……なんだか、悲しい背中に見えるのは気のせいかな」


 ◇◇◇◇◇◇


 そこは、ありふれた雑木林の中だった。

 歩いているうちに、雨が降り出した。

 小雨だが、やがて本降りとなり……周囲に雨音が響く。


「嘘」


 一本の枯れ木にもたれかかっていたのは、八咫烏だった少年。

 割れた仮面、砕けた弓、夥しい血……そして、安らかな寝顔。


「ロイ?」


 エレノアが、いつものように呼ぶ。

 こんなこともあった。

 狩りを終え、欠伸をして、木にもたれかかり、そのまま寝る。

 エレノアが近づくと飛び起きるが、一緒にいる時に寝ると起きない。

 こうして近づけば、飛び起きるはずなのだ。


「ロイ?」


 でも、起きない。

 当たり前だった。

 もう、冷たくなっていた。

 命が、尽きていた。


「…………遅かったね」


 傍には、セレネがいた。

 ロイに寄り添っていたが、エレノアたちは見ていない。


「なんで?」


 光の消えた目で、エレノアが呟く。

 ユノも、アオイも同じだった。中途半端に口を開けたまま、声が出せない。

 デスゲイズが言う。


「ロイは、ササライの不意打ちで致命傷を負い……最後の力で、我輩をも超える『聖域』を展開し、聖剣士たちの援護に徹した。今、王都が無事なのは間違いなく、ロイのおかげだ」


 雨が降り続ける。

 全員、びしょ濡れだった。


「ろ、ロイが……八咫烏」

「ロイくん……」

「マジ……?」

「……ケッ」


 サリオス、ロセ、ララベル、スヴァルトも驚いていた。

 デスゲイズが続ける。


「ロイは、死の間際……我輩の封印を解く方法を見つけ、命懸けで実践した。我輩に……お前たちを救ってくれと頼み、な」

「……嫌」


 泥まみれになるのも構わず、エレノアが地面に崩れ落ちた。

 そして、四つん這いになり、這ってロイの元へ。

 ロイの冷たい頬に手を添えると、涙腺が決壊した。


「いや、いやあああああああああああああああ!!」


 その叫びを聞き、ユノも顔を歪め大泣きした。

 アオイも涙を流し立ち尽くす。握った拳から血が出るが、どうでもいい。


「どうして、どうして……ロイ、終わったんだよ? もう戦いは終わったの、なんで? なんで目を開けないの? なんで……」


 エレノアが縋りついて泣く。だが、ロイが目を覚ますことはない……永遠に。

 ロセも目元を押さえ、サリオスは俯き、ララベルは目を逸らし、スヴァルトは無言だった。


「……ロイ、うぅぅ」


 ユノも、ロイに縋り付いて泣いた。

 アオイも、ロイの傍で泣いた。

 デスゲイズは……そんなエレノアたちを見て言う。


「不思議だ。あんなにも憧れた自由。外の世界……だが、なぜこんな空っぽなんだ」


 デスゲイズは空を見上げる。

 まるで、今の自分の……いや、エレノアたちと同じ、心が曇っている。

 自分の胸に手を当て、言う。


「全く、お前は本当に……困ったヤツだ」

「……え?」


 デスゲイズは、ロイに近づく。

 エレノアたちがそっと離れると、ロイの傍にしゃがみ込む。


「お前は言ったな? 外に出たら、美味いモノいっぱい食えと……でも、一人じゃダメなんだ。お前がいないと、我輩は満足できない。まったく……お前は本当に恐ろしいな。この大罪の魔王デスゲイズの心すら、射止めてしまったのだから」


 デスゲイズは、ロイの胸に触れる。


「お前を選んだことは、我輩にとって幸運だった……間違いなくな」


 デスゲイズは微笑み、エレノアたちに言う。


「……お前たち三人には、悪いことするな」

「「「え?」」」


 そして、デスゲイズは……ロイの亡骸へ、そっと手を伸ばした。

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〇聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
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