表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第六章 混沌の虹・七聖七魔の聖魔剣と至高魔王ササライ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/230

氷聖剣フリズスキャルヴと氷魔剣フェンリル③/氷

「いくよ」


 ユノは自身の周囲にいくつもの氷柱を作り身を隠す。

 さらに、冷気を発生させ、半径二百メートル内を霧で満たした。

 氷柱、冷気、そして氷結する地面……周囲がユノのフィールドへ変わる。


「『氷河世界(アイスエイジ)』」


 そう言い、冷気の中に隠れる。

 だが、氷の狼こと『氷魔剣フェンリル・アダージュウルブス』となったアミュは、氷の尻尾を掲げゆらゆらと動かす……すると、尾の先が凍り付き、剣のような形状に。

 そして、凍り付いた尾が一気に伸び、剣となった切っ先で周囲を一気に薙ぎ払った。

 冷気で見えないが、氷柱が切断されズズンと倒れる音が周囲に響く。アミュの半径三十メートルほどの障害物が、一気に薙ぎ払われた。


「ギャハハ!! どこに隠れても無駄だ!! テメェはブッた斬ってかみ殺してやらぁ!!」


 もう、窓際の令嬢のような雰囲気は消えていた。

 怒りに我を忘れたアミュは、オオカミの姿で遠吠えする。


「ウォォォォォォォォォォン!! 殺してやるァァァァ!!」

『あなた、獣みたい。さっきまで可愛いお嬢様だったのに』


 ふと、アミュの背後にユノが現れた。

 アミュの『氷尾』が振られ、ユノが両断される……が、そのユノは霧に映った残像。

 

「こそこそしてんじゃねぇぇ!! 出て来いやガキィィィィィィ!!」

『あなた、お嬢様じゃないの? 貴族令嬢じゃないの?』


 再び、真正面にユノが現れる。

 アミュは飛び掛かり、ユノの喉を食い千切った……が、やはり残像。


『わたし、あなたのこと知りたいかも』

「ハッ……アタシはな、オオカミなんだよ!! 赤ん坊の時に捨てられて、オオカミに育てられた!! 親が死んで、ササライ様に拾われて、こうして魔剣士やってんだ!! アタシを捨てた人間を殺して、殺して、殺しまくるためになぁぁぁ!!」

『そうなんだ』


 ユノが現れた。ユノが現れた。ユノが現れた。

 全て、霧に映った残像。

 アミュは舌打ちする。そして同時に、どこかで何かが砕ける音がした。


「───……しまっ」


 アミュはようやく気付いた。

 ユノはここにいない。

 ここから先にある『吸魔の杭』を狙い……その破壊が成功した。

 崩れる音は、杭がユノによって破壊された音だった。


 ◇◇◇◇◇◇


 霧が晴れ、氷柱が全て砕け、ようやく目の前に本物のユノが現れた。

 吸魔の杭は砕け散っている……アミュは舌打ちする。


「テメェ……ハナから杭を壊すことを」

「うん。最優先。でも、あなたのことも忘れてないよ。杭を壊したら倒そうって決めてた。これなら、勝っても負けても、わたしの勝ちだから」


 最優先は『吸魔の杭』……勝利条件を満たしてから、アミュを倒す。

 アミュは大きく息を吐いた。


「クソが。熱くなっちまった……まあいい。テメェ、本当の決着を付けようぜ」

「うん。あのね、アミュ……わたし、全力の技を出す。だから、アミュも全力でお願い」

「……あァ?」


 ユノは、レイピアを構える。

 半身で切っ先を向け、体勢を低くし、鎧から冷気が静かに噴き出していた。

 全力、全身全霊の一撃を放つ、ユノ最強の技の構え。


「わたし、七聖剣士として、七魔剣士のあなたに勝つ。勝って、ロイに撫でてもらう」

「……ハッ、男か」

「うん。アミュ、恋はしたことある?」


 アミュはお尻を突き上げ、前傾姿勢になり、尻尾を揺らめかせる。

 人ではある。だが、オオカミに育てられたアミュは、二足歩行より四足歩行が自然な形。今、この構えを取ることが、アミュの最大の奥義を放つ構えであった。


「恋……ねぇよ。でも、恩義はある。ササライ様のために、テメェをかみ殺す」

「わたしは、勝つために、あなたを倒すよ」


 そして───同時に動いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ユノの鎧、『氷聖剣鎧フリズスキャルヴ・スカディ・アヴローラ』の背中、足、腰が一部展開し、そこから冷気が噴き出す。

 ただの冷気ではない。ユノの魔力を変換した冷気であり、通常の冷気よりも冷たく、色は青みがかっている。

 冷気の噴射が、まるで翼のように見え、それが推進力となり突撃する。

 ユノ、最強にして最後の技。それは、レイピアによる『突き』だ。

 単純にして、基本の技である突き。

 だが、それを究極にまで高め、鎧と聖剣の力で底上げした突き。


「『青の突き(ブリューナク)』」


 青の閃光となったユノの突き。

 それに対し、アミュも同じ。

 鎧の一部を展開し冷気を発生させ、それを推進力とし突進する。

 だが、ユノと違うのは、冷気は推進力だけではなく、凍り付かせ、身に纏う鎧にもなる。

 凝結し、直径十メートルほどの《氷の狼》となったアミュが、水色の冷気を放ちながらユノに向かっていく。


「『氷河狼冥牙(マーナガルム)』!!」


 青の閃光、氷の狼が真正面から激突。

 音が消え、衝撃波が周囲を破壊した。

 遠くで見ていたロイも、一瞬だけ目を閉じてしまうほどの衝撃。


「ユノ……!!」


 矢を番えるが、放ってはいけない気がした。

 セレネも同じだろうか。眼を細め、矢を番えるだけで放たない。

 そして、見えた。


「「…………」」


 鎧が砕け、ボロボロになったユノとアミュが倒れ、二人は完全に気を失っていた。

 死んではいない。

 だが、動く気配もない。

 

 相打ちにより引き分け……それが、ユノとアミュの戦いによる結果だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
【コミカライズはこちらから↓】
gbxhl0f6gx3vh373c00w9dfqacmr_v9i_l4_9d_2xq3.jpg

web原作はこちらから!
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

ニコニコ静画さんでも連載中。こちら↓から飛べます!
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~


お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ