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雷聖剣イザナギと風魔剣ルドラ②/風の怒り、雷の悲しみ

コミカライズ連載中です!!


(長期戦は……不利)


 アオイは雷聖剣イザナギを納刀し、抜刀の構えを取る。

 形状変化……双剣、鎖鎌、薙刀と使える武器はいくつもある。だがアオイはあえて基本形態である『刀』で戦うことを決めた。

 久世雷式帯刀剣技……サスケはクゼ家を憎んでいる。

 だからこそ、久世家の剣技で倒す。たった今、そう決めた。

 サスケは巨大手裏剣を両手から離すと、手の傍でクルクル回転する。


「風魔手裏剣、『回転刃』」

「…………」


 アオイは揺れない。

 久世家……自分の家族は殺させないと、集中力を高めていく。

 それは、サスケにとっても同じだった。


「……クゼ・アオイ」

「……何だ」

「一つだけ聞かせろ。お前は、オレの家族殺しに、関わっているか」

「……その問いに意味はない。拙者は久世家の、雷聖剣イザナギの聖剣士……それが答えでいいだろう」

「……そうか」


 次の瞬間、サスケの殺意が跳ね上がった。

 ピリピリと、肌が焼けるような威圧感。

 全力……サスケは、アオイを全力で殺しにかかる。

 だが、アオイは揺れなかった。


「決着を……」


 竜巻が舞う。

 そして、サスケが竜巻に飲み込まれると、濃い緑色の風がサスケを包み込む。


「『魔装(ユナイト)』」


 何かが聞こえた。

 そして、濃緑色の風が消えると……鋼の忍者装束を纏ったサスケが宙に浮いていた。

 両手の手裏剣がさらに巨大に、刃の数も増えていた。


「『風魔剣ルドラ・志那都比古神(しなつひこのかみ)』」


 肌の露出のない鋼の鎧。七聖剣の『鎧身』と同じ。

 予想はしていた。七聖剣の対になる七魔剣なら、同じことができるのではないかと。

 アオイも呟く。


「『鎧身(がいしん)』」


 紫色の甲冑を纏い、紫電を放つアオイ。

 『雷聖剣鎧(らいせいけんがい)イザナギ・九天応元雷冥普化天尊くてんおうげんらいめいふかてんそん』の姿へと変わる。

 互いに全身鎧。雷と風。聖と魔。


「「…………」」


 睨み合う両者。

 そして──……風が舞い、一枚の木の葉が木からゆっくりと落ち……地面に触れた。


「「ッ!!」」


 ほぼ同時……いや、サスケの方が早く動いた。

 両手の手裏剣が分裂し、濃縮された濃緑色の風手裏剣となり、アオイを襲う。


「『嵐帝手裏剣』!!」


 サスケ最強の奥義。

 手裏剣の数は、二十七。

 その数は……粛清され、惨殺された凩家の人数と同じ。

 恨みを込めた、二十七枚の手裏剣乱舞。

 アオイの抜刀は間違いなく後出し──……だが。


「ッ!?」


 サスケは間違いなく見た。

 間違いなく後出しだった。だが、アオイの抜刀はすでに終わっている。

 なぜ、納刀しているのか。


「久世雷式帯刀剣技『終』──……『天地開闢(てんちかいびゃく)』」


 刹那、技名を聞いたサスケの身体が爆発するように爆ぜ、鎧が砕け、全身が切裂かれた。


 ◇◇◇◇◇◇


「…………」


 どれほど経過したのか。

 サスケは、身体中が引き裂かれ、大量に出血してなお生きていた。

 魔族の血のおかげ……だが、動けない。

 視線を動かすと、右腕を押さえたアオイが苦しんでいた。

 

「う、っぐ、ぁ……ぁ!!」


 右腕が、青くなっていた。

 打撲による内出血が、腕全体に広がっていた。

 痛み以外、何も感じないだろう。それが最後の斬撃による代償。

 

「……負けたのか」


 サスケが呟くと、真っ青になり脂汗を流すアオイが言った。


「お主の負けだ。サスケ・コガラシ」


 サスケの傍には、通常形態に戻った風魔剣ルドラがあった。

 アオイのダメージも深く、風魔剣ルドラを回収するどころではなかったのだろう。

 サスケは言う。


「今の技は、相当な負担があったようだな」

「……天地開闢。久世雷式帯刀剣技、最後にして最強の剣技。伝承のみ、雷聖剣イザナギの後継者に口頭で伝えられる奥義だが……実践できた者は皆無。ふふ、まさか……『鎧身』が前提の奥義とはな」


 饒舌だった。

 痛みを紛らわせるために語っているのだろう。

 サスケは身体を起こす。


「久世葵……貴様、なぜオレを殺さなかった」

「…………」

「最後の一撃。貴様、手を抜いたな?」

「…………拙者は、お主を止めるために剣を振った。だが……どうしても、お主を殺すことができなかった。久世家が凩家を斬ったのは……間違っていると、拙者も思っていたから」

「──……ふざけるな!! 貴様、今になって何を!!」


 サスケはキレた。今更『間違っている』なんて、聞く理由がなかった。

 アオイは首を振る。


「魔と交わる……今の拙者は、それが悪いことだと思えない。悪き魔もいれば、いい魔もいると知ってしまった。サスケ……久世家は間違っていた。久世家の、雷聖剣イザナギの後継者として謝罪したい……すまなかった」

「き、さま……!!」


 負けた上に、情けをかけられ、さらに謝られた。

 許せなかった。馬鹿にしていた。意味が分からなかった。

 でも、負けた。サスケの感情が、揺さぶられていた。

 そして、立ち上がる……ケガは、七割ほど回復していた。

 風魔剣ルドラを手にし、未だ右腕を押さえ動けないアオイを睨む。


「オレは久世家を殺す。全てを失いなお、お前は今と同じセリフを吐けるか……フン、実に楽しみだ」


 そう言い、サスケは消えた。

 アオイが立ち上がろうとしたが、右腕だけではなく右足も酷いダメージを追い、動けなかった。

 

「……なぜ、拙者は」


 殺すべきだった。

 だが、殺せなかった。

 サスケは家族を、久世家を殺す。

 アオイはその時、正気でいられるのだろうか。


「う、ぁぁぁ……ぁああああああああ!!」


 ぐちゃぐちゃになった感情が揺れ動き……アオイは絶叫するのだった。

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