表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/230

光聖剣サザーランドと闇魔剣ア・バオア・クー②/魔装

 サリオスの『鎧身』を見て、ヴェンデッタはうっとりしていた。


「……綺麗」

「き、綺麗?」

「うん。綺麗な光……あの時と同じ、私を救った『光』と同じ」


 サリオスは、一瞬……ヴェンデッタの微笑みが、子供のように見えた。

 狂気は一瞬、素直な笑みも一瞬。

 そして、次に見せたのは、『闇魔剣ア・バオア・クー』を手にしたヴェンデッタ。


「サリオスくん、私……受けとめるね? だからあなたも受け止めて? 私の想い、私の心、私の気持ち……ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ!!」


 ヴェンデッタは涙を流す。

 すると、『闇魔剣ア・バオア・クー』から、禍々しい黒いモヤが噴き出した。


「『魔装(ユナイト)』」


 モヤがヴェンデッタに纏わりつくと、まるで漆黒のドレスのような、禍々しいドレスとなる。

 顔が半分だけ布で包まれ、身体は髑髏や骨をあしらった禍々しいドレス。手にはさらに巨大化した大鎌があり、口元だけが歪んだ笑みを浮かべていた。

 鎧ではない。ドレス。

 鎧身ではなく、魔装。


「『闇魔剣ア・バオア・クー=オスプキュリテ・ストラプティ』……どう? 私、綺麗?」

「…………」


 圧が跳ね上がった。

 鎧を着たサリオスの戦闘力も跳ね上がったが、ヴェンデッタも同じだった。

 互いの力が上がった以上、無傷で済むような結果にはならない。

 サリオスは剣を構える。


「……決着を付けようか」

「ええ。私の『愛』を、あなたに捧げるわぁ」


 サリオスから『光』が、ヴェンデッタから『闇』が溢れ出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 サリオスは聖剣を構え、一気に飛び出した。

 鎧の背中から光が噴き出し、まるで『翼』のように広がる。

 対してヴェンデッタは動かない。

 大鎌を構えると、ドレスの全身から黒いモヤが噴き出す。

 攻撃、そして迎撃。

 サリオスは、サザーランドに光を集め、巨大な『光剣』を作り出す。

 ヴェンデッタは、黒いモヤでいくつもの『鎌』を作り、全てを高速で回転させた。


「勝負──……『アストラルシャイン・ブレイバスター』!!」


 光の翼を噴射させ、その勢いを利用した『光剣』による斬撃。

 美しかった……ヴェンデッタは、それを見てしまった。

 ヴェンデッタは、全ての鎌をサリオスに向けて飛ばす。


「『ネグロストライザ』……」


 全ての鎌がサリオスの鎧に突き刺さる。だが、サリオスは止まらない。

 トドメとばかりに、ヴェンデッタの大鎌がサリオスを両断する。

 鎧に亀裂が入る。だが……サリオスは止まらない。

 そのままの勢いで、サリオスはサザーランドを振った。


「──ぁぁ」


 ヴェンデッタは斬撃を浴び、そのまま後方に吹き飛ばされる。

 サリオスの斬撃は、ヴェンデッタごと『吸魔の杭』を叩き切った。

 崩れ落ちる杭。そして、ドレスが解除されて崩れ落ちるヴェンデッタ。

 サリオスとヴェンデッタの戦いは……サリオスの勝利で幕を閉じた。


 ◇◇◇◇◇◇


 サリオスは鎧を解除……そして、そのまま崩れた。

 

「う、ぐ」


 ヴェンデッタの鎌が刺さり、出血していた。

 だが……立った。そして、歩き出した。

 向かったのは、倒れているヴェンデッタ。

 サリオスは、ヴェンデッタを抱き起す。


「ぁ……サリオス、くん」

「どうして手加減したんだ」


 サリオスは気付いていた。

 最後の攻撃。明らかに、ヴェンデッタは手を抜いていた。

 じゃなければ、大量の鎌はサリオスに深く突き刺さっていたはずだし、とどめの一撃である大鎌も、サリオスを両断できた。

 認めたくはない。だが認めた。

 ヴェンデッタは、サリオスよりも強かった。

 

「だって……綺麗だったから」

「……」

「私を、救ってくれた光だから……消したくなかったの」

「……ヴェンデッタ」

「綺麗な光、見れたから……もう、満足」


 闇魔剣ア・バオア・クーが、煙のように消えた。

 そして、黒い煙となった魔剣は、風に乗ってどこかへ消えた。

 サリオスは言う。


「きみは死なない。手加減をしたから」

「……え?」

「やっぱり、ボクもまだまだ甘い……自分に好意を向けてくれる相手に、非情にはなりきれない。アンジェリーナさんみたいに、魔族と分かり合えるかもって、思ってしまった」


 サリオスはヴェンデッタの手に触れた。


「その、好きとかは置いて……まずは、友達から始めないか? 人と魔族の新しい時代を始めるために、殺し合うだけじゃない道を作ることも、王族の義務だと思うから」


 ヴェンデッタは気付いた。

 血が出ていない。痛みこそあるが、斬られたはずの胸は、服が破れるだけで済んでいた。

 サリオスはマントを脱ぎ、そっとヴェンデッタに掛ける。


「その……ダメ、かな」

「ダメじゃない!!」

「え、ちょっ」


 ヴェンデッタはサリオスに飛びついた。

 その後……サリオスは『吸い殺されるかと思った』と語り……何があったのかは絶対に語らないのだった。

 こうして、サリオスとヴェンデッタの戦いは終わった。

 本気の殺し合いではなく、どちらかといえば『説得』のような。

 殺し合うだけじゃない、人と魔族の共存する道の一歩を、サリオス自身が選び、歩む結果になった。


「サリオスくん、結婚式は黒いドレスがいいな……ダメ?」

「友達って言ったじゃないか……というか、結婚って」

「サリオスくんは白い礼服。私は黒いドレス……素敵。それと今夜、お部屋にお邪魔するね。うふふ、うふふふ」

「…………」


 ほんの少し……ほんの少しだけ、サリオスはヴェンデッタを救ったことを後悔するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
【コミカライズはこちらから↓】
gbxhl0f6gx3vh373c00w9dfqacmr_v9i_l4_9d_2xq3.jpg

web原作はこちらから!
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

ニコニコ静画さんでも連載中。こちら↓から飛べます!
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~


お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ