七聖剣士VS七魔剣士②
ロセは、『黄色の杭』に到着。
目の前に、ニコニコ顔で丸太を担ぐおじさんが立っているのを見て、似たような顔でニコニコしていた。
「あらあら~……あなたが魔剣士さん?」
「がっはっは!! いかにも、ワシはグレコドローマ。皆からはグレコおじさんと呼ばれておる。お前さんもそう呼んでくれるとありがたい!!」
「それはご丁寧に。わたしのことはロセとお呼びくださいな~」
うふふ、がっはっは!! そんな風に二人は笑う。
やりにくい……とは、ロセは欠片も思っていない。
「あの~……グレコおじさん。あなたの後ろにある『杭』なんですけど、わたしはそれを破壊しないといけないんです。どうか、壊させてくれませんか~?」
「むう……それは無理な相談じゃな。ワシはこいつを守るためにいるのだから。ロセよ、お前さん……七聖剣士の中で、一番の力持ちと聞いておる。どうだ? ワシと力比べせんか?」
「あらあら~、女の子に提案することじゃありませんねえ」
ロセは苦笑。グレコドローマも「確かに。がっはっは!!」と笑う。
だがロセは、『地聖剣ギャラハッド』を収納から出し、大剣状態で地面に突き刺す。
「でもまあ、構いませんよ? それと、わたしに力比べをした人は何人もいましたけど……実は、誰一人として勝てなかったんですのよ?」
「おお、それは面白い」
グレコドローマは、持っていた丸太を地面に叩き付ける。
すると、丸太の中から巨大な『ハンマー』が現れた。
片面はハンマーになっており、もう片面は斧になっている。グレコドローマの『地魔剣アジ・ダハーカ』である。
グレコドローマは槌斧を担ぎ、ニコニコしたまま言った。
「ではロセ。ワシがお前の怪力を叩きのめす一人目となろう。がっはっは!!」
「あらあら~、それは楽しみですねぇ」
確定した。
この周囲一帯は、瓦礫の山となるだろう。
◇◇◇◇◇◇
ララベルは、目の前にいる『男か女かわからない妙なヤツ』を見て首を傾げていた。
「アンタ、男? それとも女?」
「おやおや……挨拶もなしに、いきなりですねえ」
道明寺雷葉こと、ライハ・ドウミョウジ。
長くサラサラの髪をポニーテールにし、東方の『ワ国』の礼服を着た何者かだった。
ララベルは、風聖剣エアキャヴァルリィを双剣状態にし、クルクル回しながら言う。
「名前とかどーでもいいでしょ。それより男か女か、それめっちゃ気になるし」
「ふふ、どっちだと思います?」
「むー……」
ララベルは観察する。
顔立ちは中性的。体格も普通。服がやや厚いせいか胸の大きさでは判断できない。声も男といえば男だが「女です」と言えば女にも聞こえる。
ララベルは結論を出す。
「わかんない」
「ぷっ……あっはっは!!」
ライハは笑った。
本気で笑っているのか、目尻に涙を浮かべている。
「いやぁ、あなたは面白いですね」
「そりゃどーも。じゃ、あんたの後ろにある『紫の杭』はブチ壊すわ」
「それはダメですねぇ。私は、ここを守るためにいるのですから」
ライハはいつの間にか、腰に『刀』を差していた。
『雷魔剣ホノイカヅチ』……雷の魔剣。
「あなたに恨みはありませんが、ここで斬らせていただきます」
「あっそ。ま、好きにしたら?」
聖なる風と、魔の雷が激突する。
◇◇◇◇◇◇
スヴァルトは、黒い杭の前で頭をボリボリ掻いていた。
目の前にいるのは、白い騎士鎧にマントを付け、腰には輝く魔剣を差す青年。
威圧感……それもあるが、威厳すら感じていた。
「で、誰だお前?」
最初に出たスヴァルトの言葉に、青年ことアークレイはため息を吐く。
「態度零点、恰好零点……やれやれ、闇聖剣の男がこうも下品だとは」
「あ?」
「まあいい。斬り捨てて終わりだ」
「あ?」
態度は確かに悪い。
だが、恰好はどうだろうか。スヴァルトは七聖剣士用の戦闘服を着ている。だが、肌着は付けず素肌に直接ジャケットを羽織ったスタイルなので、鍛え抜かれた上半身が見えていた。
手には鎖鎌形態の『闇聖剣アンダンテ』が握られており、鎖を弄んでいる。
「我が名はアークレイ。『光魔剣トゥアハ・デ・ダナン』の魔剣士にして、至高魔王ササライ様の忠実なる配下、七魔剣士のリーダーである」
「…………」
「狙いは吸魔の杭であることは知っている。だが、ここからは──」
次の瞬間、分銅が飛んできた。
「ッ!!」
アークレイが首を動かして躱す。どう見ても顔面を狙った攻撃だ。
スヴァルトは、鎖を引き戻し分銅をキャッチして言う。
「長ぇよ、ボケ」
「…………訂正だ。態度、マイナス千点」
アークレイの額に青筋が浮かぶ。
逆に、スヴァルトは笑った。
「いい顔してやがる。なあ、リーダーさんよ……お前、オレに会えてよかったなぁ? オレぁよ、七人の中で一番強ぇんだ」
「…………」
「タイマンでよかったぜ。限りなく残酷な技をいくらでも出せるからなぁ? おい楽しみにしておけよ? あー……誰だっけお前?」
アークレイがブチ切れ、スヴァルトは笑う。
聖なる闇と、輝ける魔の戦いが始まった。
◇◇◇◇◇◇
アオイは、緑色の杭の前にいた。
杭の前で正座して待っていたのは、風魔剣ルドラの使い手であるサスケ・コガラシ。
ゆっくりと目を開け、アオイを見る。
「……来たか」
「……ああ」
アオイは、腰に雷聖剣イザナギを差し、ゆっくりと前に向かって歩き出す。
サスケは、二対の巨大手裏剣であるルドラを両手に持ち、構えを取る。
「──言葉は不要だな」
「ああ。決着を」
サスケの周囲に風が舞い、アオイの身体が紫電に包まれる。
「いざ、尋常に──」
「──勝負!!」
暴風が舞い、紫電が爆ぜる。
こうして、七聖剣士と七魔剣士の戦いが始まった。
◇◇◇◇◇◇
「──始まった」
ロイは、城壁の上から七聖剣士たちの位置を確認。それぞれの戦いが始まったのを確認した。
そして、白い城のてっぺんに立つ『月光鳥』のセレネ。
デスゲイズは舌打ちする。
『ロイ、お前……本当に権能を使わないつもりか』
「ああ。これは、俺とセレネの『狩人』として、そして聖剣士と魔剣士の戦いを補佐する戦いだ。セレネに七つの権能がない以上、俺も同じ条件で全力を出す」
『……大馬鹿が』
セレネは、『鉄の矢』を矢筒から抜く。
あえてロイに見せつけるように抜き、ロイも同じ鉄の矢を抜く。
そして、同時に矢を番え放つ。
圧倒的速度で飛んだ矢は、二人の位置からちょうど中心で、矢じりの先端同士がぶつかって爆ぜた。
実力は同じ。
「勝負だよ、ロイ」
「ああ、見せてやるよ……俺の狩りを」
誰にも知られず、ロイとセレネの『援護』の戦いも始まっていた。





