七聖剣士の対策
「聞いたか?」
生徒会室にて。
七聖剣士が全員集まり、たった今聞いたササライの演説について対策を練っていると、スヴァルトが言う。
「あっちの魔剣士七人をブチ殺して、忘却の魔王をブチ殺す。そうすれば世界平和、ってか」
「簡単に言うわね」
ララベルは椅子にもたれかかりながら、双剣形態の風聖剣エアキャヴァルリィをもてあそぶ。
「でも、シンプルで好き。みんなはどう思う? ね、ロセ」
「……現状、それしかない、っていうのが本音ね。正午まであと三時間……郊外には魔獣と魔族が終結しているし、学園側も未成年でろくな戦闘経験もない学生の聖剣士を投入しなくちゃいけないみたいだし。できるのは、私たちが一刻も早く、魔剣士を倒すことだけ」
「あの、ロセ先輩。いくら魔剣士を倒しても……忘却の魔王が約束を守るとは思えません」
サリオスの意見は、誰もが「その通り」と感じていた。
魔剣士を倒せば『白い杭』が消えるという話だが、そんな言葉は信用できない。
やはり、魔剣士七人だけじゃない。ササライも倒さねばならないのだ。
「全て、相手の想定した通りに動かなくちゃいけないわ。時間があればもう少し対策も練れたでしょうけど……みんな、魔剣士と一対一で戦う覚悟は、ある?」
ロセの言葉に最初に頷いたのは、エレノアだった。
「当然。あたしはあの炎の魔剣士を倒します!!」
「わたし、誰でもいい」
「オレもだ。向かってくるなら容赦はしない!!」
「ふ……拙者も因縁の相手がいる。風魔剣ルドラの忍び、サスケとの決着を」
「ケッ……誰だろうと、オレの闇で飲み込んでやらぁ」
「いいわね、タイマンとか燃えるし!!」
「ふふっ、愚問だったわねぇ」
七聖剣士は、それぞれの聖剣を手に、魔剣士との戦いに臨む。
すると、ララベルが言う。
「ね、そういやもう一人いたわよね。あの白い子……『月光鳥』」
「それなら心配ないです」
エレノアは、自信満々に言った。
「『八咫烏』───……白い鳥は、黒いカラスが倒しますから」
それは、ロイに……八咫烏に対する信頼の言葉だった。
◇◇◇◇◇
ロイは一人、八咫烏に変身して王都の外壁を上り、一番高い位置で郊外の平原を眺めていた。
そこには、無数の魔族と魔獣が、目をギラギラさせて待機している。
『……操られているな。深い催眠状態。おそらく、解呪は不可能。ササライに従わない魔界貴族を捨て駒にするつもりなんだろう』
「……憐れだな」
『そう思うなら、楽にしてやれ』
「…………」
すると、外壁の内側では、トラビア王国の聖剣士部隊が展開しつつあった。
いきなりのことでやや慌てている印象はあったが、それでも懸命に街を守ろうと、聖剣士たちが動いている。中には上級生や、クラスメイトたちもいた。
ロイは思う。
「この戦いを終わらせるには、俺の『聖域』でみんなを一気に強化すれば……」
『そうだな。公爵級だろうと、お前の恩恵を受けた者たちならやれるだろうさ』
「よし、戦いが始まると同時に聖域を展開する。こんな戦い、さっさと終わらせる。エレノアたちも、魔剣士相手に戦いやすくなるだろう」
『ああ。だが、向こうの白い女にも聖域があることを忘れるな。同時展開し、互いに効果を打ち消しあっていたことから、あの女の『聖域』はお前と真逆……魔剣士を強化する類のものだ』
「でも、俺なら」
『ああ。お前が本気で聖域を張れば、ササライだって抵抗できるかわからんぞ』
ロイは頷く。
そして───……真正面、平原を見た。
トラビア王国の平原は、見渡す限り広大で広い。前方に魔族や魔獣が展開しているが、その奥は何もない、広々とした平原だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「『魔王聖域』展開───……『忘却王城彼方永久』」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その、広々とした平原に───……突如として『純白の王城』が現れた。
「───……は?」
『こ、これは……!?』
真っ白な城だった。
古の、トラビア王城よりも古いレンガ積みの城。
外観は古めかしいが、それを補って余りある『優雅さ』が感じられるいびつな城。
ロイの目は見た。
その城のバルコニーに並ぶ、七人の魔剣士。
そして、王城の頂点に立つ白い鳥───……『月光鳥』の姿を。
そして、バルコニーの奥にある巨大な玉座。
真っ白な学生服のような、シンプルな服を着て座る、十六歳ほどの《魔王》の姿が。
両手の指を組み合わせて印を結んでいる。
『ササライの『聖域』……!! 奴め、遊びは終わり……いや、奴の本当の遊びが始まる。ロイ、気を付けろ。あの聖域を展開したということは、奴も本気だぞ!!』
「…………」
『ろ、ロイ』
「大罪権能『暴食』装填」
ロイの手には、空間を喰らう『時空矢』があった。
「魔王ササライ……」
『待てロイ!! 奴にそんな攻撃が今更効くとは』
ロイは矢を番え、ササライの心臓めがけて矢を放った。