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始まる脅威

連載再開します。

コミカライズ決定しました!!

 八咫烏と七聖剣士の訓練が始まり、十日が経過していた。

 訓練後、その場を立ち去ろうとする八咫烏。背を向けるとロセが言う。


「あ、八咫烏も聞いてほしいことがあるの。帰るの、ちょっとだけ待ってくれない?」

『…………』

「今日の朝、職員会議で決まったことなんだけど、四日後に学園が再開されることになったの」

「四日後ですか? 急ですね……」


 息も絶え絶えのエレノアが、フェニキアを収納にしまいながら言う。

 ロセは頷いた。


「ええ。学園に戻ってきた生徒も多いし、王都の方も日常生活を取り戻しつつあるからね。そろそろ再開ってことに決まったわ」

「ケッ……かったるいぜ」

「そう言わないの。アンタだって毎日訓練じゃつまんねぇ、って言ったじゃん」

「うるせぇ」


 ララベルとスヴァルトがそう言うと、サリオスが言う。


「毎日訓練は楽しいですけど……なぁ、エレノア」

「え? あ、あはは……そ、そうねー」

「エレノア、スヴァルト先輩と同じ。毎日訓練じゃつまんないって」

「ゆ、ユノの馬鹿!! そういうこと言うなっ」

「ハハハハハっ!! エレノア、わかってんじゃねぇか」

「いや、あたしは……あはは」


 エレノアは、ごまかすように笑う。

 アオイも苦笑しつつ、ロセに言う。


「四日後以降も、訓練を続けるので?」

「ん~、それも考えたけど、今のみんなは学園最強って言っても過言じゃないわ。王国聖剣騎士団にも引けを取らないし、それ以上かも……しばらくは、自主練でいきましょうか。再開した学園にも、慣れる必要があるしね」

「了解した。さて、今日はここまでか」

『…………』


 八咫烏は、そのまま踵を返し、立ち去った。


 ◇◇◇◇◇


 部屋に戻ったロイは変身を解き、ベッドへダイブする。


「あ~……疲れた」

『聖域を維持しつつ、通常矢だけで強化されたエレノアたちを相手にしていたものな。疲れるのは当然だ』

「あはは……でも、俺もかなり強くなった気がする」

『気がする、ではない。お前は強くなった……はっきり言う。我輩が聖域の使い方を伝授した四人、ササライ、トリステッツァ、バビスチェ、パレットアイズ。こいつらも相当な才能があったが……聖域を展開する才能は、この四人よりも遥かに上だ。驚いたぞ……ただの人間が誰よりも聖域を上手く展開するなんて』

「そりゃどうも。きっかけは、お前の真似だけどな……」


 パレットアイズ戦にて、ロイの身体で一時的に顕現したデスゲイズが使用した『聖域』だ。

 その術式の残滓がロイの身体に刻まれ、違和感を感じ取ったロイが術式を解明し、自分なりにアレンジして展開したのがきっかけである。


「コツはつかんだし、応用すればもっと面白いことできそうな気がする」

『それだ。普通は応用すればー、なんて発想は出ないぞ。展開できるだけでも奇跡に近いのだぞ』

「そんなもんかね」

『そんなもんだ』


 ロイはベッドから飛び起き、大きく伸びをする。


「な、デスゲイズ。ササライはいつ動く?」

『パレットアイズの話では、魔界全土を覆いつくす『聖域』を展開したそうだ。その維持だけでもかなりの力を消費しているはず……聖域が解除されるか、または聖域が安定するようになれば、動くだろうな』

「解除はわかるけど、安定って?」

『あのササライのことだ。魔界全土を覆う聖域の展開なんて、イチ魔王だけでは展開が精一杯。なら、自分がいなくても常に展開し続けるだけの策は用意しているはず。その準備だけでも数年は必要だろうが……ササライなら、数ヵ月といったところだな』

「……数ヵ月」

『あくまで予想だ。一か月かもしれんし、一年かもしれん。全ての魔王宝珠を取り込んだササライなら、二十日もかからんかも……あまり時間がないことは確かだ』

「…………なぁ、俺」

『勝てる。ロイ、勝機はある。ササライは、お前の成長具合を知らん。お前がさらに力を付ければ、もしかしたら……ササライを打ち破るだけの力を得ることができるかもしれん』

「…………」


 ロイはデスゲイズをつかみ、腰に差す。


「とりあえず、晩飯にしようか」

『ああ……四日後には学園が再開するのだろう? 課題は終わったのか?』

「……お前がそんなこと言うなんてな。ちゃんと終わったよ」


 そう言い、ロイは部屋を出た。


 ◇◇◇◇◇

 

 四日後。

 久しぶりに制服を着て、ロイは部屋を出た。


「よ、ロイ」

「おう、オルカ」


 部屋を出ると、オルカに会った。

 オルカはいつもと変わらない笑顔でロイの肩を叩く。

 寮を出ると、アオイと合流。この三人で学園までの十分間を歩く。


「いよいよ再開だなー……なぁなぁ、課題終わったか?」

「俺は終わったぞ」

「拙者もだ」

「…………そうかい」

「まさか、お前……」

「オルカ殿……」

「…………七割」


 そう言い、オルカは「ふっ」と笑った。

 残り三割は手つかず、そういう悲しい笑いのようだ。

 そのまま三人で歩いていると、エレノアとユノ、そしてユイカの三人が合流。


「おっはよ!!」

「おはー」

「おはよーっ!! ん~みんな久しぶりっ!!」


 ユイカがロイの背中をバシッと叩く。


「い、痛いなユイカ……お前、なんか強くなった?」

「お、さっすがロイ。よくわかってるじゃん……実はあたし、能力に覚醒したでしょ? そのことを実家に報告したら、うちに所属してる聖剣士が特訓に付き合ってくれたのよ」


 ユイカの家も、小さいながら貴族家計。専属の聖剣士は抱えている。

 腰の聖剣をポンポン叩き、嬉しそうに言う。


「最初は乗り気じゃなかった聖剣士だけど、選ばれたからにはちゃんとやりたいしね……それに、自分が強くなったって実感もあると、やっぱ気持ちいいわ」

「……そうか」

「ロイは? エレノアたちがとんでもなく強くなったのは肌で感じるけどー……うーん、ロイはよくわかんないかも」

「あ、それオレも思った。なんかこう……穏やかになったよなぁ?」

「どういう意味だよ。まぁ、俺もそこそこ」

「「「…………」」」

 

 エレノア、ユノ、アオイは感じていた。

 ロイは変わっていないのではない。変わりつつ、変わったことを見せていない。

 薄く透明な気配。穏やかな魔力の流れ……ロイは間違いなく、強くなった。

 

「ロイ」

「ん、ユノ?」

「今日、甘いお菓子いっぱい食べたい……カフェ行こ」

「ああ、いいぞ」

「はいはいはい、あたしも行く!!」

「拙者、団子が食べたいゆえに」

「オレもオレも!!」

「当然あたしもっ!!」

「あはは、結局全員か。ユノ、いいか?」

「うん。みんな仲良し」


 ユノはにっこり笑うと、ロイの腕に甘えるようにしがみつく。


「こ、こらこらユノ!! 毎度言うけどそれはダメだって!!」

「エレノアもすればいいのに」

「そ、それは無理……じゃなくて、離れなさい!!」

「やだ」

「……こほん。ユノ殿、ロイ殿も照れている。離れた方がいいかもしれんぞ」

「アオイもそういうこと言うの?」

「……うらやましいぜ。こほん、オレの腕なら空いてるぜユイカ」

「死ね」


 楽しかった。

 ロイは、ようやく日常が戻ってきたと感じていた。

 このまま、何事もなく───……楽しい学園生活が送れればと、本気で思っていた。

 でも……そうはならない。

 忘却の魔王、いや……『至高魔王ササライ』が、それを許さない。


『───……ロイ』


 デスゲイズが、静かにつぶやく。


『───……来るぞ、ササライだ』

「……!!」


 それは、聖剣レジェンディア学園再開初日に、始まった。

 圧倒的な『力』……魔力が、王都全体に吹き荒れ、空を『夜空』が覆いつくす。


「……え」

『始めるよ、デスゲイズ……楽しい楽しい、『聖魔大戦(せいまたいせん)』を』


 響いてきた声は、ササライ。

 始まる。

 後の歴史に刻まれる、聖剣士と魔王の戦いが。

ニコニコさんでコミカライズ始まりました!!

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漫画: 貞清カズヒコ
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お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新再開ありがとうございます!
2024/03/15 18:05 退会済み
管理
[一言] 連載再開感謝
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