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七聖剣士の修業

 エレノアたち、七聖剣士を載せた大型船は、グレシャ島こと《七天島》へ到着した。

 島から約一キロ離れた場所へ停泊。

 大型船のデッキに出たエレノア、ユノ、サリオス、アオイ。そして、その四人の前に立つロセ、ララベル、スヴァルト。

 七聖剣士のそろい踏みに、デッキにいた護衛の聖剣士や、乗組員たちは羨望の眼差しを向ける。

 ロセは、手をポンと合わせた。


「ではでは~、これからボートで上陸しますね~」

「え……こ、ここからですか? もっと近づいて」

「転覆するぞ」


 と、サリオスの質問に秒で返す。

 

「前に言っただろ。あそこは毒に覆われて、常に重力負荷が掛けられている。並みの聖剣士じゃ一日しかモたねぇんだよ。母船、護衛船はここまで。これから船の出入りは小舟を使って行う」

「ま、アタシの風があれば、一分かからず上陸できるわよ」


 ララベルが、風聖剣エアキャヴァルリィの一本をクルクル回転させる。

 エレノアは一キロ先にある島を見た。


「見た感じ……普通の島っぽい」

「うむ。だが、先輩方が言うのだ……警戒は必須だろう」


 アオイがウンウン頷き、少しだけ微笑んでいた。


「あんた、嬉しそうね」

「ふ……拙者、早く鍛えたくてウズウズしているのだ」

「わかるかも」


 ロイが七天島にいることを知っているのは、エレノアとユノとアオイだけ。

 しかも、十日以上前にいる。

 死んではいない。それは断言できる。もしかしたら会えるかも……と、エレノアは思っていた。


「じゃ、小舟に乗って。それと……着いたら特訓開始」

「あの、ララベル先輩。特訓メニューとかは」

「あの島に適応する。まずはそれが特訓ね」

「……えっと」

「ま、行けばわかるわ。ほらほら、早く」


 ララベルはサリオスの背を押し、プカプカ浮かんでいる小舟へ。

 全員が小舟に乗り込むと、ララベルが船尾でエアキャヴァルリィを『戦棒(ロングロッド)形態』へ変形させる。

 そして、クルクルと回転させると、竜巻が発生した。


「『竜巻(トルネイヴ)』!! さぁ、しっかり掴まってなさいよ!!」

「ちょ、ララベル、少しは手加減」

「無駄だ。あの馬鹿、加減なんて知らねーだろ?」


 小舟は、とんでもない速度で海を走り出した。


 ◇◇◇◇◇


「ん……?」

『どうした?』

「いや……」

『集中しろ』

「ああ」


 ロイは、毒リンゴを生で齧りながら、七十三体目の『デスヴァイト』という大型の大蛇を倒していた。

 死の毒……蛇種の魔獣では最強クラスの魔獣。その牙に仕込まれている毒に触れるだけで、皮膚は溶け絶対に助からない。

 だが、ロイは生きている。毒液が身体に触れているが、全身を覆う魔力が毒の侵入を拒んでいる。

 デスゲイズは言う。


『ふ……『怠惰(スロウス)』の権能、上手く使えるようになったな』

「ああ。大罪権能『怠惰』……こいつも面白い」

『忘れるな。今までは、権能の一つ一つを武器として扱っていたが、今のお前なら瞬時に切替え、状況に応じて使用することができる』

「ああ。権能はあくまで部品。組み合わせることで戦術の幅が広がる……だろ」

『そうだ。この調子なら、最後の一つ……『嫉妬(エンヴィー)』が認める日も近い』

「……な、デスゲイズ。聞いていいか?」


 ロイは、横たわるデスヴァイトの頭に座る。

 矢が頭部を貫通し、すでに動かない死骸と化しているので問題ない。


「大罪権能は、意志を持つんだよな? あのアスモダイだっけ……女の子みたいな」

『ああ。そういう風に作ったからな』

「嫉妬。最後の一つは、なんか特別なのか? お前、妙に特別扱いしているような」

『……まぁな。まぁ、お前には言ってもいいか』

「……?」


 デスゲイズは、たっぷり一分ほど黙り込み、ゆっくり呟いた。


『大罪権能『嫉妬(エンヴィー)』は、我輩が最初に造り上げた権能。そして、我輩の友であり家族……そして、七聖剣の生みの親だ』

「…………は?」


 それは、とんでもない爆弾だった。


 ◇◇◇◇◇


「「おっげぇぇ……」」


 エレノア、アオイ、サリオスは島に到着するなり吐いていた。

 ユノは平然とし、ロセたちも普通だ。

 たった一分の小舟だったが、その揺れと速度はエレノアたちを地獄へ叩き落した。

 スヴァルトは言う。


「さ、降りるぞ。それと……降りる前に言っておく。死ぬなよ」


 そう言い、スヴァルトは小舟を下りて浜の方へ。

 ロセ、ララベルも下りた。

 そして、サリオスが首をブンブン振り、頬をパンパン叩いて降りる。


「よし、じゃあオレが───……」


 降りた瞬間、全身に鉛のジャケットを着たような負担が襲いかかり、海水にドボンとダイブしてしまう。


「っご、っが……ぁ!? な、ッッ……」

「サリオスくん!! 身体強化!!」

「ッ!!」


 サリオスは身体強化で立ち上がる。

 多少の負担が軽減されたが、それでも身体は重い。

 そのまま、全身を引きずるように浜へ。

 

「っく、これは……」

「確かに、ヤバイかも……っ」

「おもぃ……」


 アオイ、エレノア、ユノも、身体強化で上陸。

 少しでも身体強化を切ると、押しつぶされそうな勢いでの《重力負荷》だった。

 ロセは、全員に言う。


「まず、身体を慣らすことから始めましょう。七天島では常に身体強化をする。最低でも八時間ね」

「は、八時間……」

「ふふ。わたしたち、余裕そうに見えるでしょ? でもね、久しぶりでいっぱいいっぱいなのを必死に誤魔化してるのよ~? しかも……この重力負荷、以前よりも強くなってる」

「だな。前の三倍はありやがる。気ぃ抜くと潰れちまうぞ」

「そーね。ふふ、鈍った身体イジめるいい機会だわ。とりあえず奥行く?」

「アホ。新人ども置いて行けるか。まずはオレらも慣らす……ララベル、付き合え」

「いいわよ。ふふ、久しぶりね」


 スタスタ歩くスヴァルトとララベル。

 身体強化をしたまま素手で構え……なんと、組み手を始めた。

 剣を使わない、全身を使った組み手だ。ロセが言う。


「まず、身体を重力に慣らす。そのためには素手での訓練が一番いいの。サリオスくんたちはまず、身体強化を維持し続ける訓練からね。目標は三時間ね!!」

「さ、三時間……」

「十日くらいでクリアできると思うわ。それと……嘘ついてごめんなさい。船で生活するって言ったけど、あれは嘘。二十日間、ここでキャンプ生活をしますね~」

「「「「え」」」」


 すると、小舟が一隻来た。

 アンジェリーナが、キャンプ道具を積んで来たのだ。


「道具を持って来たぞ」


 当たり前のように、身体強化で大量の荷物を抱えてきた。

 アンジェリーナ。元公爵級の力は健在のようだ。


「十日で身体を慣らして、スヴァルトたちみたいに組み手で身体を慣らし、そのあとは聖剣での模擬戦。最後の一日で森に入り魔獣と戦う。これが以前のスケジュールね」

「そ、それだけで、強くなれるんですか!?」

「ええ」


 ロセは断言した。

 即答。サリオスは何も言えない。


「気付いてないけど、すでに毒に侵されているわ。魔力がどんどん削られているし、体調も良くないでしょ? ふふ、二十日間乗り切れば、すごいことになるわよ~?」

「「「「…………」」」」

「さ!! みんなは少しずつ身体を慣らしましょう~!! わたしはスヴァルトたちと組み手してきますね~」


 そう言い、ララベルは上着を投げ捨てスヴァルトに殴りかかる。

 スヴァルトは「不意打ちか、さすが生徒会長サマだぜ」と攻撃をいなし、ララベルがロセの背後に回りこんで廻し蹴り。ロセは華麗に回避する。


「……て、適応、できる?」


 エレノアが、ぐったり青い顔で言う。


「やる」


 ユノは平気そうに見えた。


「面白い……!!」


 アオイは不敵に微笑む。


「……やってやる!!」


 サリオスは歯を食いしばり、拳を硬く握りしめた。

 こうして、七聖剣士たちの、二十日間の強化訓練が始まった。


 ◇◇◇◇◇


「───あれが、七聖剣士」


 グレシャ島内の森。

 高い木の上に、一人の青年がいた。

 緑色の忍び装束を着て、口をマスクで覆い、額当てを巻いている。

 腰には、左右に大きな『手裏剣』を二つ下げている。

 相当な距離があるが、その眼は七聖剣士を捕らえていた。

 そして、男───……サスケは、一人の少年を見て、眉をピクリと動かす。


「…………あ奴、まさか」


 その眼に映るのは、着物。

 長い黒髪をポニーテールにした少年。


「ワ国の者……雷聖剣の使い手か。面白い」


 サスケは決めた。

 ササライからは『一人だけ、様子見で戦っていい』と許可を得ている。

 サスケは、腰にある巨大手裏剣にそっと触れた。


「雷聖剣イザナギの使い手。某の『風魔剣ルドラ』の相手に相応しいか、見極めさせてもらおうか」

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱりサムライにはニンジャですね
[気になる点] 「十日で身体を慣らして、スヴァルトたちみたいに組み手で身体を慣らし、そのあとは聖剣での模擬戦。最後の一日で森に入り魔獣と戦う。これが以前のスケジュールね」既に10日前から島に居て森の魔…
2023/02/16 13:54 退会済み
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