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話し合い

 放課後。

 ロイ、エレノア、ユノ、アオイの四人は、ショッピングモールの個室カフェへ。

 それぞれ飲み物を注文し、話をしていた。


「人、少なくなったね」


 ユノが飲み物と一緒に注文したジャンボパフェをモグモグ食べながら言う。

 エレノアは「そうね」と呟き、ユノの頬に付いたクリームをナプキンで拭った。


「愛の魔王、憎めないヤツかと思ったけど……やっぱり、魔王なのね。人的被害、建築被害とかよりも、精神的な被害がこれほどまでになるなんて……」

「……だが、ここまで来た」


 アオイが湯呑の茶を啜り、キリッとした表情になる。


「あと二人……」

『パレットアイズに関しては問題ない。数年は『核』の修復作業で、戦いどころではないはず。それより問題なのは……ササライだ』


 デスゲイズが言う。

 『忘却の魔王』ササライ。四大魔王の一人。


『つかみどころのない奴とは思っていたが……まさか、トリステッツァとバビスチェの『魔王宝珠』を吸収し、己の力とするとはな』

「な、デスゲイズ。己の力にしたってことは、『魔王聖域(アビス)』も使えるのか?」

『いや、『魔王聖域(アビス)』は本人じゃなきゃ使えない。力を取り込んだからといって、同じように展開できるとは思えん。あくまで、取り込んだのは『エネルギー』だ……ササライ自身が強化されたとみるべきだろう』

「……つまり、嘆きの魔王、愛の魔王の力を合わせたって感じか」

『ああ。クソ……我輩の力が四割でも回復すれば、四大魔王が万全で、総戦力で挑んできても皆殺しにできるんだが』

「お前、どんだけ強いんだよ」


 ロイは果実水を飲む。

 すると、エレノアがロイに言う。


「そういえば、用事あったんでしょ?」

「ああ。秋季休暇が早まるのは聞いたか?」

「ええ。愛の魔王の襲撃で、人的被害多数……授業にならないって聞いた」

「そうだな。で、その間俺、デスゲイズと一緒に……どこだっけ?」

『グレシャ島だ。ここから西、人間界と魔界の間にある海域の中心に浮かぶ孤島。かつて我輩が作った島だ』

「「「……え?」」」

「そこで特訓する。しばらくは帰らないから」

「待った」


 と、エレノアが止めた。


「ここから西って……まさか、『七天島』のこと?」

「……七天島? なんか聞いたような」

「今朝、拙者が言ったであろう」

「ああ、秋季休暇に訓練するとか。あれ? でも、七天島って」

『……どうやら、名が変わったようだな。やれやれ、これも時の流れか』

「じゃあ、ロイと一緒? やったあ」


 ユノがロイの隣に移動し、嬉しそうに腕にじゃれつく。

 

「いや待った。目的地が同じでも、七聖剣士と一緒に訓練はできないぞ。さすがにずっと八咫烏のままじゃ……」

「えー」

「うーん……でもさ、ロイがいてくれたらありがたいのよ。あんたの『魔王聖域(アビス)』があれば、『鎧身』も長時間使えるし」

「むぅ……」

「偶然同じ島で特訓してました! ってのは厳しいよな……」

「うむむ。拙者らも今日初めて聞いた島の名だ。八咫烏がいれば、我々七人の中に内通者がいると取られるぞ」

「そうよねぇ……ね、デスゲイズ。もう正体バラしていいんじゃないの?」

『駄目だ。我輩の正体がササライにバレた以上はな。奴は『演出家』だ。こういうシチュエーションでは、八咫烏の正体は『謎』の方がいい。仮にバレたとしたら、奴は間違いなくお前たちの記憶を消しに来るぞ』

「な、なによそれ……」

『そういう奴だ。あいつは、周りを楽しませて快楽を得るパレットアイズとは違う。自分自身が楽しむためなら身内である魔王ですら裏切り、欺く。そもそも……我輩をこの木刀に封じたのは、ササライだ』


 デスゲイズの声は、どこか寂しさを漂わせていた。


 ◇◇◇◇◇


「「…………」」

「っつーワケで、手ェ貸せ」

「う……」


 城下町にあるスヴァルトが所有する家に呼ばれたララベル、ロセ。

 そこにいたのは、魔界貴族公爵アンジェリーナの弱った姿。

 スヴァルトの服を着て、ロセたちを前にモジモジしていた。


「アンタ、バカ?」

「あ!?」

「……スヴァルト。お願いだから、これ以上混乱させないでほしいかなぁ?」

「んだと!?」


 ララベルが心底馬鹿にしたように言い、ロセは頭を抱えた。

 スヴァルトは、ロセたちに全ての事情を説明した。


「オレの本能でこいつを喰っちまったんだ。責任は取る」

「うぅぅ」

「責任って、アンタ……結婚するつもり?」

「そういうんじゃねぇよ。こいつの力が回復するまで世話する。頼みてぇのは、着替えとかそっち関係だ。男のオレが女モンの下着やら服買うワケにいかねぇだろ」

「……う~ん」

「それに、お前ら二人は、オレが一番信頼してる女だ。こいつを匿ってるのは、お前らしか知らねぇよ」

「「…………」」


 ララベルとロセは顔を見合わせ、肩をすくめた。


「アンタさ、ほんっと憎めないわね。怒る気も失せたわ」

「あ?」

「カッコいいんだけど、そのセリフはいろいろ勘違いしちゃうからダメよ?」

「ああ?」

「さて!! アンタ、アンジェリーナだっけ……うーん、とりあえず風呂ね。見た目完全に人間だし、町出歩いてもいいでしょ。着替え買ってから行きましょ」

「ふふ、スタイル抜群だからいろいろ映えそうねぇ。最近ちょっと疲れ気味だし、お買い物してストレス解消しましょうかぁ~」

「くっ……もう、好きにしてくれ。敗者である私に逆らう意思はない」

「お前、なんか楽しそうじゃね? ま、いいけどよ」

「そ、そんなこと、ないし……」

「…………?」


 アンジェリーナはモジモジしながらそっぽ向いた。

 妙に『女』臭い反応に、スヴァルトは訝しむ。


「ま、いいか。じゃあ頼むぜ」

「「待った」」

「……な、なんだよ」

「アンタ、どこ行くの?」

「荷物持ち、必要なんだけど」

「あ、あぁ? んなモン、収納にでも……わ、わかったから剣を下げろ、うん」


 四人はさっそく家を出て買い物へ。

 スヴァルトは、今さらだが聞いた。


「ん? そういや殿下は? 後輩どもとメシか?」

「サリオスくんは、公務があるからお城に行ったわ~」

「あ~、王子様は忙しいねぇ」


 スヴァルトは適当に言い、前を歩く女子三人の背中を見た。


 ◇◇◇◇◇

 

 サリオスは一人、王城にある専用執務室で、第一王子としてやらなければならない仕事をこなしていた。

 サリオスは、トラビア王国の王子。

 現王の子はサリオス一人。王は多くの妃を娶り、子孫を作ることも仕事なのだが、サリオスの父である現王は、たった一人の妻を愛した。その王妃も、サリオスを産んでから体調を崩し、今はあまり外に出ることもできず、会うことも少ない。

 王子であるサリオスは、国が管理するいくつかの領地を任されていた。

 任されるといっても、税金や領地の管理は代理官が行っているので、上がってくる書類に目を通して印を押すだけなのだが、七聖剣士としての訓練、学園生活など忙しく、書類は貯まる一方だ。

 しかも、これから『七天島』での訓練が始まる。

 今のうちに、貯まった仕事を片付けようと、ロセたちの誘いを断り、王城へ来ていた。


「ふぅ……」

「殿下、お疲れ様です」

「ああ……」


 サリオス専属の秘書で護衛、聖剣士のバルトロマイが紅茶を淹れる。

 王国最高の紅茶使いという妙な二つ名を持つバルトロマイだが、その紅茶を疲れを癒し、ずっと書類とにらめっこしていたサリオスの視神経を優しくほぐした。


「バルトロマイの紅茶は美味いな……」

「ありがとうございます」

「……なぁ、バルト」

「はい」

「……いや、なんでもない」


 サリオスは、ため息を吐いた。

 すると、バルトロマイは言う。


「少し、気分転換しましょうか」

「ん?」

「こちらを」


 バルトロマイが出したのは、大量の写真。

 しかも、全員が女性。


「……なんだ、これ」

「見合い写真でございます。そろそろ殿下も、婚約者となる方を……」

「あ……」

 

 婚約者。

 サリオスは、王族なのだ……恋愛結婚できるなんて、考えてはいない。

 だが、胸にある小さな想いを、無視はできなかった。


「…………」

「殿下?」

「悪い。少しだけ、一人にしてくれ」

「かしこまりました」


 バルトロマイは退室した。

 サリオスの机の上には、大量の見合い写真だけが残された。


「…………わかってるさ。どうせ、この恋は実らないってことくらい」


 サリオスは、誰もいない部屋でそう呟き、傍らにある『光聖剣サザーランド』の柄に触れた。

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