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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛

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愛天使バビスチェ・キューピッドのラブソング②/無垢なストレリチア

 初めて見た時から、自由な子だと思った。


「あはは!! ね、バビスチェ!! あなたも一緒に!!」


 綺麗な海に、ずぶ濡れになるのも構わずに飛び込み、海水をバシャバシャさせながら踊る少女。

 自由。それと同じくらい、不思議な子。

 海に手を突っ込み、貝殻を見つけて愛おしそうに撫でている。


「初めまして。ここは素敵な海ね」


 貝殻に話しかけている。

 少女は貝殻をそっと戻し、ずぶ濡れのままバビスチェの元へ。そして、バビスチェの腕を引く。


「ね、遊ぼう!!」

「…………」


 最初は、うっとおしいと思っていた。

 誇り高き魔族。そしてバビスチェは滅びし種族『天使』であり、まだ『魔王』や『魔界貴族』という制度が作られる前に存在した偉大なる魔族の一人だった。

 少女は、いろんなものを愛した。


「ね、人間ってみんなすごいんだよ? この机とか、ベッドとか、おうちとか、みんな自分の手で作っちゃうの。すごいよねえ」


 人間の街に来て、少女は感心していた。

 いろんな人間に声をかけ、挨拶し、笑い合い……少女の周りには、笑顔が絶えなかった。

 不思議な少女だった。

 天使である自分なんかよりも、よっぽど自由で不思議。

 でも───そんな少女を愛おしく感じる自分がいることに、バビスチェは驚いた。


「バビスチェは、天使なんだよね?」

「……そうよ?」

「キレイだねぇ。まっしろな翼」

「ふふ、あなたも綺麗じゃない」

「そうかなー」


 純粋無垢で、真っ白。

 そういう意味を込めた。でも、少女はクスクス笑うだけで、嫌味と気付かない。

 バビスチェは、少女を愛していた。

 誰よりも自由、誰よりも深い愛、誰よりも、誰よりも。

 天使である自分なんかより、よっぽど『天使』だった。

 だから───憎かった。


「バビスチェは、綺麗だね。わたし……バビスチェのこと、あいしてるよ?」


 愛。

 愛とはなんだ? 

 好きの先にある、愛。


「わたし、みんなを愛してる!! 人も、魔族も、海も、空も、花も、草も……わたしね、この世界を包み込めるような『愛』があれば、みんな幸せになれると思うんだ」


 なんだ、それは。

 魔族が絶対的な力を持つ世界で、全てを『愛』する?

 そんなの、天使である自分にもできっこない。

 

「バビスチェはできるよね。だってバビスチェは、天使だもん」


 天使。

 かつて、世界を支配していた種族。

 バビスチェもよく知らないが……かつて、とある『炎の天使』が、『呪を司る少年』を愛し、力と翼を捨て去ったことで、天使は全て人へ身を堕としたと、なぜか知っていた。

 バビスチェは思う。きっと自分は、『力を捨てた天使たちの塊』なのだと。

 元は、ヒトを支配していた種族の末裔だ。なら……人を愛するのも、バビスチェの使命だ。

 天使は、愛を知り堕ちた……でも、バビスチェは違う。


「ね、バビスチェ。わたし、そろそろ行くけどさ……また会おうね」


 そんなある日。

 少女は、そんなことを言い……バビスチェの前から消えた。

 それから数千年以上経過。魔王になり、魔界貴族が制定され、人間との間に大きな戦いがあり、人間は生かさず殺さずの存在となった。

 愛とは? バビスチェは、自分なりに人を愛していた。そのための力を作った。

 繁殖行為は? 人間にとって最大の求愛行為。そのための力を作った。

 愛情とは? 人の感情からなる幸福だ。そのための力を作った。


 それらを一つにして、魔王聖域(アビス)愛溢れる楽園に(アイビー・テラ・)住まう希望の鳥(ストレリチア)』が生まれた。


 愛溢れる楽園を飛ぶ、一羽の極楽鳥(ストレリチア)

 ササライも、パレットアイズも、トリステッツァも知らない。

 知っているのは、『・・の魔王・・・・・』くらいだろう。


 かつて、バビスチェと行動を共にした、無垢な極楽鳥のことなんて。


 ◇◇◇◇◇


 ロイは。自分が何を言ったのかわかっていない。

 バビスチェが激高した瞬間に、『魔王聖域(アビス)』を展開───今度はカッチリとハマった。

 聖域の力で、バビスチェの力が七割削られたのだ。

 が───同時に、ロイもごっそりと力を奪われる。


「よ、四十秒……っ」


 見積もりが甘かったかもしれない。

 二十秒もつかどうか。ロイは合わせた両手をそのままに、歯を食いしばる。

 だが───耐える。

 自分の役目は、バビスチェを倒すことじゃない。

 魔王と戦うのは七聖剣士。そのサポーターとして、『八咫烏』として戦うのだ。


「耐えて、みせる……」

『ロイ、来たぞ!!』


 デスゲイズが叫ぶ。

 激高したバビスチェは、力が落ちているにも関わらずロイを狙ってきた。

 その前に、エレノアが『鎧身形態』で立ちはだかる。


「相手はあたしよ!!」

「どけ!! 『水の聖天使(ジブリール)』!!」


 水のリングが無数に展開され、エレノアに襲い掛かる。

 だが、両手剣を手にエレノアは全てのリングを叩き斬る。

 そして、バビスチェに斬りかかった。


「『灼炎楼・神素戔嗚(カムスサノオ)』!!」

「チッ……『土の聖天使(ズリエル)』!!」


 ボゴン!! と地面が一気に盛り上がり、エレノアを圧し潰した。

 土に飲まれるエレノア。その腕に、鎧身形態のスヴァルトが現れ、エレノアの腕に黒い鎖を巻き付け引き上げた。


「オラ行け!!」

「スヴァルト先輩ありがとっ!! 『灼炎楼・天照大神(アマテラス)』!!」

「くっ……」


 巨大な炎弾が発射され、バビスチェは水のリングで受ける。が……リングが蒸発した。

 翼を広げて上空へ躱すが、同じく翼を広げた鎧身形態のララベルがさらに上空へ。手にサリオス、ユノを掴んで飛んでいる。


「行きなさい!!」

「はい!!」

「めんどうねぇ!! 『風の聖天使(ラーファルエル)』!!」


 暴風が巻き起こるが、サリオスが盾を掲げる。

 すると、光の膜が三人を包み込んだ。さらにユノがレイピアをバビスチェに突きつける。


「『霧氷月天(バーバヤーガ)』」


 氷の魔獣。大きな顎を持つ足のない虎のような氷が生み出され、バビスチェに向かい襲い掛かる。

 バビスチェは舌打ちし、両手に炎を模した剣を生み出した。


「『炎の聖天使(ミカエル)』!!」


 氷が砕け散る。

 そして、氷の魔獣に気を取られていたせいなのか。

 ロセが斧を振りかぶり、背後に迫っていることに気付いていなかった。

 頭に血が上る……まさに、バビスチェの今の状態だ。


「『地帝(ドワーフ)』!!」

「『雷の(ヴァラ)……」


 バビスチェの拳に雷が集まるが───ロセの振り下ろしのが速かった。


「『スラッシュ』!!」


 右肩から左わき腹にかけて両断されたバビスチェは、大量に吐血して落下した。

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