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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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愛天使バビスチェ・キューピッドのラブソング①/魔性化

『クソ、最悪……バビスチェの『魔性化』だ』


 デスゲイズは吐き捨てるように言う。

 愛の魔王バビスチェの『魔性化』は、美しき純白の翼を広げた『天使』だった。

 天使。それは、遥か大昔、世界の七割を支配していた種族。時代と月日の流れでヒトになる術を見つけ、その数が徐々に減り……最終的には、滅びた種族だ。


『我輩が生まれるよりも大昔に存在した種族だ。とある呪いを司る種族に敗北して以来、ヒトに憧れを抱き、その翼と力を捨て去ったと聞いたが……奴め、先祖返りか、後天的なのか、天使の力を持っていたとはな。我輩ですら数えるほどしか見たことがない』


 聖域を解除したロイは、全身疲労に包まれていたが、呼吸を整え少しでも体力回復に努める。

 周りを見た。

 エレノア、ユノ、ロセ、サリオス、ララベル、スヴァルト、アオイ。

 七聖剣士が勢ぞろい。聖剣の歴史を振り返っても、ほとんどない貴重な光景だ。


「おい八咫烏、今の技、もう一回できねぇのかよ!!」


 スヴァルトが言う。

 だが、聖域はもう展開できない。コツを掴んだと言っても、人間であるロイに何度も聖域が展開できるわけがない。

 八咫烏は首を振ると、スヴァルトは舌打ちする。

 そして、鋸剣を肩に担ぎ、全員に言った。


「テメェら!! ここが踏ん張りどころだ。気合入れろやぁ!!」

「そうね、やるっきゃない!!」

「ええ。みんな、行こう!!」


 ララベル、ロセが続く。

 エレノア、ユノ、サリオスも剣を手に立ち上がり、アオイも立ち上がる。

 だが、全員が鎧状態での疲労により息が荒い。

 ロイは何度か深呼吸を繰り返し、動ける程度には力が回復。魔弓デスゲイズを握り、前に出た。


『俺が援護する、みんな、頼むぞ』

「ええ。八咫烏、サポ頼むわよ」


 エレノアがバーナーブレードを、ユノがチャクラムを、アオイが薙刀を展開。

 サリオスも剣と盾を装備し、天使となったバビスチェに剣を向ける。


「愛の魔王バビスチェ……ここからが本当の戦いだ!!」

「ふふふ、可愛いこと言うわねぇ? もう闘いなんて終わってるのに」


 バビスチェが翼を広げると、白い羽が舞った。


 ◇◇◇◇◇


 ロイは『狩人形態(ハンターフォーム)』の状態で近くの木に飛び移り、一瞬で矢を五本抜いて番た。


「大罪権能『暴食』装填───『魔喰矢(グロトネリア)』」


 肉を喰らう矢が五本放たれ、複雑な軌道でバビスチェを狙う。

 だがバビスチェは、光の剣を軽く振っただけ。それだけで矢が消滅した。

 チラリと八咫烏のいた場所を見るが、すでにいない。

 ロイは『暗殺形態(アサシンフォーム)』に転換し、小石をバビスチェの上空に投げ、『入替(チェンジ)』でバビスチェの上空へ。

 すぐに『殺戮形態(キラーフォーム)』に転換し、ショットガンを向けた。


「コロコロ変わるのねぇ」

「喰らえ!!」


 ショットガンを連射する。が、バビスチェの周囲をキラキラした『星』が周り始め、弾丸を全て弾いた。驚く間もなく、バビスチェはロイに向けて手を伸ばしてくる。


「『灼炎楼・熱線砲(ねっせんほう)』!!」


 だが、エレノアの熱線砲がロイとバビスチェの間を通過。その隙にロイは『暗殺形態』に代わり、小石を遠くへ投げ自分と位置を変える。

 そして、殺戮形態になり、ライフルを構えた。


「はぁぁぁぁっ!!」

「サリオス、お願い」


 ユノが氷で足場を作り、サリオスが駆け上がる。

 スヴァルト、ララベルも駆け上がり、三人が同時に攻撃を放つ。

 だが、バビスチェは笑っていた。


「『風の聖天使(ラーファルエル)』!!」

「「!?」」

「な、アタシより、強い風───」


 バビスチェを竜巻が包み、三人が弾き飛ばされた。

 そして、バビスチェは手をユノに向ける。


「『氷の聖天使(サリエル)』」

「うそ!?」


 ユノの氷が砕け、バビスチェの氷が礫となりユノに襲い掛かる。

 そして、光の剣を《炎の剣》に変え、エレノアに向けた。


「『炎の聖天使(ミカエル)』」

「くっ……!!」


 バビスチェが接近し、エレノアに向けて剣を振るう。

 素人。だが……その速度、そのパワー、全てがエレノアよりも上。

 エレノアが完全に防御に回った瞬間、ロイのライフルから弾丸が放たれる。

 しかし、バビスチェは口を開け、ロイの弾丸をパクッと食べた。


「ふふ、飴玉みたい」

「クソ……ッ」


 舌の上で弾丸を転がすバビスチェ。

 もう、全員が気付いていた。


『遊んでいる……』


 デスゲイズが言う通りだった。

 バビスチェは遊んでいる。その気になれば、全員まとめて始末することもできる。

 それくらい、力の差があった。


「ね、もうやめにしない?」


 翼を広げ、バビスチェは言う。

 上空から、七聖剣士と八咫烏を見下ろしながら。


「もう、勝てないわ。トリステッツァの時とは違う……私はね、トリステッツァよりも弱い。でも、今のあなたたちより遥かに強いわ。どうしても、あなたたちは勝てないの」


 その通りだった。

 トリステッツァは、ロイの聖域によって戦力が七割削られた状態で戦った。だが、敵意を抱いていないバビスチェの戦闘力は全く変わらず、力が七倍になっても届かなかった。

 バビスチェは、最終形態に覚醒した七人よりも強い。


「そうねぇ……あと三年、その状態で鍛え続ければ……この状態の私と、互角に戦えるでしょうね。でも……今は、もう無理」


 バビスチェは「そうねぇ」と考え込み、クスっと笑う。


「見逃してあげる。ふふ……次はササライの手番。あの子、面白いこと始めるみたいだしね」

「ふっざけんな!!」

 

 エレノアが叫ぶ。

 それは、屈辱でしかない。

 七聖剣士が全員揃い、全員が最終形態まで覚醒した。

 その状態でなお、バビスチェには届かない。敵意すら抱いていない。


『───ロイ、もう一度聖域を展開できるとしたら……何秒もつ?』

「……え?」

『どれだけいける?』

「…………四十秒」

『十分だ。ロイ……バビスチェに、こう言え』

「……え? なんだ、それ」

『……奴を激高させる、魔法の言葉だ。ただし……これを言うなら、絶対に奴を始末しろ。始末できなかった時点で、間違いなく敗北する。それくらいの爆弾だ』

「…………???」


 意味がわからない。

 だが、やる価値はあった。


『全員、聞け』


 ロイは八咫烏の声で言う。

 

『もう一度、聖域を展開する。残り四十秒───これが、最後のチャンスだ』

「……八咫烏」


 ロイは両手を合わせ、ほんの少しだけ手をずらした。

 そして、バビスチェに向かって───特大の爆弾を投げた。


 ◇◇◇◇◇



『バビスチェ。お前の愛はアイツ(・・・)への醜い嫉妬だと気付いてるのか? 誰よりも自由で、誰よりも人を愛し、誰よりもお前が(・・・・・・・)愛したあの女(・・・・・・)への当てつけだって、気付いてるか?』



 ◇◇◇◇◇


 恐るべき殺意が、恐怖が、ロイたちの上空から全てを塗りつぶすような悪意がブチ撒かれた。


「今、何て言った」


 バビスチェが、初めて敵意をロイへ向けた瞬間、ロイは残された力を全て注ぎこんだ。


「『魔王聖域(アビス)』展開!!」

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原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
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― 新着の感想 ―
[気になる点] おぉ!? 直接的な明言ではありませんが、さとうさんの作品で他作品と世界観(というか世界)が繋がっているのって、もしかして初でしょうか?
[一言] この世界「地獄の業火で焼かれ続けた少年〜」の未来の世界だったのか
[気になる点] もしかして地獄で燃やされた呪術師のお話とつながってる…?
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