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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛

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アナタの愛こそ私のすべて・愛の魔王バビスチェ⑧/七聖剣士

 ロイの聖域が展開されている状態なので、エレノアたちは力が漲っていた。

 エレノアはバーナーブレードを展開。ブンブン振り回し走り出す。

 同時に、サリオスも光の剣と盾を、ユノはレイピアを、ロセは大剣、ララベルはツインランサー、スヴァルトは大鎌を構え突っ込んで行く。

 アオイは一番最後に動いたが、誰よりも速くバビスチェに接近。


「久世雷式帯刀剣技、『雷尖華(らいせんか)』!!」

「───ふふっ」


 紫電の如き突きは、バビスチェの人差し指で軽く止められる───が、今までと違う。

 エレノアが、ユノが、サリオスが放つ。


「『灼炎楼・三尖刀(さんせんとう)』!!」

「『氷連牙突(ひょうれんがとつ)』!!」

「『シャイニング・ストライク』!!」


 三連突き、連続突き、渾身の突き。

 アオイは素早く離脱し、正面、右、左からの突き攻撃。

 さらに、ロセとララベルが跳躍。スヴァルトは背後に回っていた。

 バビスチェは、それでも嗤う。


「楽しいわねぇ───」

『ロイ、何でもいい放て!!』


 ロイは矢筒から矢を三本抜き、バビスチェに向かって放つ。

 すると、バビスチェの背中からコウモリのような翼が生え、一気に砕け散った。

 砕けた翼が、桃色の『コウモリ』になり放たれる。


「『桃色愛蝙蝠(ピンキーミニュアデス)』」

「「「ッ!?」」」


 まず、三人の攻撃が桃色のコウモリに止められた。

 そして、ロセとララベルに無数のコウモリが襲い掛かり、背後に回っていたスヴァルトにも襲い掛かる。ロイが放った矢はあっさりコウモリに撃ち落された。


『くっ……』

「あなたはぁ、厄介ねぇ?」


 バビスチェの狙いはロイ。

 聖域さえ消せば、エレノアたちの身体能力七倍が消える。

 この状態でも、バビスチェは敵意を向けていない。それが恐ろしかった。


『クソ、バビスチェめ。昔からそうだった……こいつは、敵意や憎しみを持たない魔族。どんな状況でも、どんな時でも、こいつは薄ら笑いを浮かべていた。パレットアイズとは違う、こいつは自分の行動全てが、本気で全ての愛(・・・・・・・)に繋がると信じている。だからお前たちに攻撃しても敵意など抱かないし、憎しみも持たない。トリステッツァとは違う意味で壊れている!!』


 デスゲイズが叫ぶ。

 数百以上のコウモリがロイに襲い掛かる。今のロイは権能が使えない状態で、通常矢しか放てない。

 バビスチェの分身であるコウモリを撃ち落とすだけの力がない。

 すると、誰よりも速く飛んできたのはアオイだった。


「久世雷式帯刀剣技、『斬空雷穂(ざんくうらいほ)』!!」


 ロイに襲い掛かるコウモリが斬られたが、すぐに復活する。

 すると、竜巻がコウモリを吹き飛ばした。


「やられっぱなしってのは、性に合わないし!! ってか───アタシの聖剣、後輩に先越されて悔しくないの!? 根性見せなさいよォォォォォッ!!」


 ボッ!! と、竜巻の規模が増す。

 そして、風を纏いララベルは走り出した。

 狙いはバビスチェ。


「ふふ、勝気な子も嫌いじゃないわぁ」

「奇遇ね───アタシも、アタシが大好きよ!!」


 ◇◇◇◇◇


『とても強い自信……あなたは、あなたのまま強くなりなさい。ハーフエルフだろうと、純血のエルフだろうと、あなたはとっても素敵な女の子なんだから』


 ◇◇◇◇◇


「駆けろ、エアキャヴァルリィ!! 『鎧身(がいしん)』!!」


 エメラルドグリーンの竜巻がララベルを包み込むと、緑、黄緑、エメラルドグリーンに輝く全身鎧に包まれていた。スタイリッシュで、背中に翼のある鳥のような意匠。翼が広がると、一気に加速。

 両手に双剣を持ち、バビスチェが驚愕した瞬間、その両腕を叩き斬った。

 『風聖剣鎧(ふうせいけんがい)エアキャヴァルリィ・エアリアルゼピュロス』覚醒の瞬間だった。

 

「くぅっ……痛いわねぇ」

「もっと痛くしてあげる」


 風で吹き飛ばされたバビスチェ。その先に大戦斧を構えたロセがいた。


「私は、みんなみたいに器用じゃないけど……パワーだけなら、誰にも負けない」


 ドワーフの血が沸騰するように熱くなる。

 ロセは斧を振りかぶる。

 きっとバビスチェには命中しない。でも……ロセには、このパワーしかないのだ。


 ◇◇◇◇◇


『まっすぐな想い。あなたの力はきっと、みんなを導くわ……頑張ってね』


 ◇◇◇◇◇


「砕け、ギャラハッド!! 『鎧身(がいしん)』!!」


 ロセが地面を叩き割ると、ロセの身体が岩に包まれた。

 現れたのは、重装甲の全身鎧。両肩に巨大な盾を装備し、両手持ちの大戦斧を持っている。

 ロセは斧を振り回し、砕いた岩石を風圧で吹き飛ばした。


「『地帝(ドワーフ)ギャラクティカブレイク』!!」

「───ッ!!」


 コウモリが盾となるが、岩石の破片がいくつかバビスチェに命中。

 いくつものコウモリがロセに殺到するが、『地聖剣鎧(ちせいけんがい)ギャラハッド・スプンタ・アールマティ』の鉄壁防御を突破できるコウモリはいない。

 少し出血したバビスチェ。だが、傷は瞬時に再生する───が。


「「「『鎧身(がいしん)』!!」」」


 エレノアが、ユノが、サリオスが鎧身。

 『炎聖剣鎧フェニキア・ブレイズハート』、『氷聖剣鎧フリズスキャルヴ・スカディ・アヴローラ』、『光聖剣鎧サザーランド・ライトオブハイロゥ』に変身した三人の鎧騎士たちが迫る。

 バビスチェは眼を見開くが。


「───『鎧身』」

「ッ!!」


 『闇聖剣鎧アンダンテ・冥府王ノ纏ウ死躯ヘル・ニブル・ヘルヘイム』を纏うスヴァルトの大鎌から伸びた『闇』の鎖が全身を拘束する。

 そして、そのさらに後方で力を溜めるのは、『雷聖剣鎧イザナギ・九天応元雷冥普化天尊くてんおうげんらいめいふかてんそん』を纏うアオイだった。


「これで、決める───」


 アオイの全身が紫電に包まれる。

 さすがのバビスチェも、冷や汗を流し───笑っていた。


「『灼炎楼・月読命(ツクヨミ)』!!」

「『ニブルヘイム』!!」

「『シャイニング・オーバーシュート』!!」


 炎、氷、光属性の斬撃を連続で喰らい、身体がバラバラになる。

 そして、アオイは見る。


「『雷命大開眼(らいめいだいかいがん)』」


 狙うのは、バビスチェの『核』だ。

 どんな魔族も、核を破壊されれば死を迎える。

 全神経を集中し───見つけた。バビスチェの核。桃色に輝く、結晶のような宝石。

 アオイは、今日一番の速度で駆ける。


「久世雷式帯刀剣技『極』───」


 ◇◇◇◇◇


 次の瞬間、アオイの鎧が砕け散った。


 ◇◇◇◇◇


「───えっ」


 バビスチェの核が、消えた。

 肉片も、何もかもが消えた。


「ごめんなさいねぇ」


 何が起きたのか?

 アオイの身体が吹き飛ばされ、教室をブチ破った。

 血を吐き、ようやく理解した。


「ふふふ、本当に久しぶり。この私が───本気で『愛』を伝えなくちゃいけない、なんて」


 限界だった。

 ロイが崩れ落ち、聖域が解除され……エレノアたちの鎧も解除される。

 

『くそ……ッ!! やはり、こうなったか……ッ』

「う、っぐ……くそ」

『ロイ、最悪の知らせだ。どうやら……これからが本番だ』


 ロイは見上げた。

 そこにいたのは、『愛の魔王バビスチェ』だ。

 だが、背中に純白の翼があり、頭頂部に輝く輪があった。そして、真っ白な布を全身に巻き付け、手には光り輝く剣を持っている。

 それはまるで……神話の時代に現れたという、天使。

 この世に『愛』をもたらした、天の遣い。


 愛の魔王バビスチェ、その『魔性化(アドベンド)』だった。

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原作:さとう
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