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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛

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魔界貴族侯爵『鳴氷』のエルサ・魔性化態③/砕けない氷

 ───向かってきた。

 ユノは見た。エレノアとロセが、エルサをこちらに追い込んでいるのを。

 ララベルがユノに言う。


「何度も言うけど、アタシは風の維持だけで精一杯。サポートはほとんど無理」

「大丈夫……」

「チャンスは一度。狙うは魔族の核」

「うん。蝶の心臓部分、狙う」


 ユノは、刺突に特化した第一形態のレイピアをピッと構える。

 そして、深呼吸……深く息を吸い、吐く。

 ララベルは、ユノの頭をポンと撫でた。


「失敗してもいいわ。気楽にやりなさい」

「うん」

「そうね……成功したら、ご褒美あげる。何がいい?」


 ララベルとしては、ユノをリラックスさせたかったのだろう。

 ユノは「んー……」と首を傾げ、頬を染めた。


「ロイとデートしたい」

「ロイ? ロイって……ううん、まぁ、いいけど」

「ほんと?」

「ええ。アタシからロイに命令……じゃなくて、頼んであげる。ただしデートは日中だけ。朝帰りとかダメだからね!!」

「うん。えっちなことはもう少し大人になってからだね」

「そ、そうね……うん」


 なんとなく恥ずかしいララベル。ユノが冷静なので自分のが子供っぽいと思ってしまう。

 すると、蝶がこちらに向かってきた。もう、声も聞こえる。


『オホホホホッ!! お嬢さんたち、まだ凍らないのかしらぁ!?』

「あったりまえ!! あたしが、あんたなんかの氷で、凍るワケないでしょうがっ!!」


 エレノアがバーナーブレードを振り回し、エルサの翅から放たれる礫を弾き飛ばす。

 ロセも同じように弾き、大戦斧をブンブン振り回してエルサに向かって投げた。

 が、斧は軽々と躱される……そして、ユノは見た。


「───……お願いね、ユノちゃん」


 声に出さずとも、ロセの視線が語っている。

 ユノは見晴台の手すりに飛び移り、精神を集中する。

 ララベルも、風聖剣エアキャヴァルリィを手に集中。エレノアたちの身体を包む風が強くなり、エレノアとロセが飛ぶと同時に風が爆ぜ、エルサの正面まで飛び上がった。


「『灼炎楼・十握剣(とつかのつるぎ)』!!」

「『地帝(ドワーフ)ボンバーブレイク』!!」


 十連斬りと、大戦斧渾身の振り回し攻撃。

 エルサの翅が凍り付き、二人の攻撃を真正面から受け止める。


「だぁぁァァァァァッ!!」

「おりゃぁぁぁぁぁっ!!」


 蝶の翅を畳み、エレノアとロセの一撃を完全に防御。

 だが、氷に亀裂が入り、エルサが吹き飛ばされた。

 蝶の身体は軽い。エルサはきりもみ回転し、ユノがいる見晴台の方へ。


『チッ……想定外の力ね。いいわ、ここは退いて───』


 トン、と……ユノが見晴台から飛び降りた。

 エルサは見晴台の傍まで来ていた。

 ユノには気付いていない。ガラ空きの胴体が丸見えだった。

 そしてエルサが気付く───背後から飛び降りたユノに。


『ッ!! お前、狙いは核───させないッ!!』


 ビキビキと、エルサの身体が凍り付く。

 ララベルが舌打ちし、力を使い果たしたエレノアとロセが驚愕する。

 気付かれた。ユノの接近が気付かれ、エルサの防御が強化された。

 エルサの『鳴氷』が、エルサの身体を守る以上、攻撃は通用しない。

 でも……ユノは、そう思わなかった。


「氷……わたしのフリズスキャルヴは、氷の聖剣」


 どんな氷も、どんな凍気も、フリズスキャルヴには通じない。

 だったら、たとえエルサの『鳴氷』だろうと、貫けるはず。


 ◇◇◇◇◇◇


『そう、氷聖剣フリズスキャルヴを信じなさい。その想いが力になる』


 ◇◇◇◇◇◇


「うん」


 ユノは微笑み、静かに呟いた。


「疑ったこと、ないよ───『鎧身(がいしん)』」


 ユノがフリズスキャルヴを振った瞬間、ユノの全身が凍り付いた。

 青、水色、水晶が合わさり造られた全身鎧が、ユノを包む。

 女性的な、スタイリッシュなラインだ。背中に氷の結晶が張り付いたデザインで、エレノアの鎧とよく似ていた。

 手に持つのは、氷を彫刻したような細さのレイピア。

 氷聖剣フリズスキャルヴの最終形態。『氷聖剣鎧(ひょうせいけんがい)フリズスキャルヴ・スカディ・アヴローラ』の姿は、エレノアたちすら魅了するほど可憐だった。


「『氷蓮冰牙槍(ゼロ・フロトグニル)』」

『───……ッッッ!!』


 ユノのレイピアが凍り付き、一本の『槍』となる。

 兜越しに、ユノは見えた……エルサの『核』が。

 そして、ユノは氷の槍を投擲。エルサの核を貫通した瞬間、その身体が一瞬で凍り付いた。


「ごめんね」

『───』

 

 ユノのレイピアがエルサに突き刺さると、エルサの身体が砕け散った。

 そして、トラビア王国を囲んでいた氷も砕け散り、エルサに凍らされていた人間たちも解放された。

 キラキラとした氷の結晶だけが王都に降り注ぐ。エルサは最後の言葉も残せず、魔族として燃え尽きることもなく、美しい氷の結晶となり消滅した。

 ユノは着地すると、鎧が解除される。

 すると、見晴台から飛び降りたララベル、追ってきたエレノア、ロセがユノの元へ。

 ユノは微笑み───鎧を発現させた疲労で崩れ落ちた。


「ユノ!! すごかった、あんたすごかった!!」

「エレノア……えへへ、同じだね」

「うん……ほんとに、あんたすごいわ……!!」


 エレノアに抱かれ、ユノは気を失った。

 ロセ、ララベルは顔を合わせて苦笑する。


「なんかさ、先輩なのに先越されてばかりね」

「そうねぇ……ふふ、聖剣の最終形態、羨ましいわぁ」

「ふふん。アタシだってすぐに」


 と───次の瞬間、これまでとは比べ物にならない『桃色』が、ユノたちを襲う。

 ララベルが全力で風を展開し四人の身体を包み込む。


「ぐ、っぎ……なに、これ!? 今までと、ケタが違う……ッ!! まず、い……飲まれ」


 ボッ!! とララベルの風が破られ、桃色の霧がエレノアたちを包み込む。


「ぁ……」

「っく……」

「……もう、ダメぇ」


 エレノア、ララベル、ロセの三人は崩れ落ち、トロンとした眼のまま動かなくなった。

 愛の魔王バビスチェ。

 眷属を全て無力化された魔王が、動きだす。

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