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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛

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魔界貴族侯爵『鳴氷』のエルサ・魔性化態②/大きな蝶

 一夜明け、再びエルサは活動を再開した。

 今、エルサが行っているのは、人間と聖剣士たちが王都から出ないように外壁に『氷』を設置すること、そして使えそうな人間を選別し、氷漬けにすることだった。

 今、王都の人間たちは『聖域』の影響で愛に狂い、営みを続けている。

 それこそ、老若男女問わず、王族も聖剣士も平民も全て。

 あちこちで、嬌声が響き渡っている状況だ。

 数か月放置し、徐々に聖域の効果を弱め、次は魔界貴族による『支配』が始まる。いつもならこのあたりで聖剣士たちが我に帰り、ようやくバビスチェに向けての対策を練り、戦いになるところだ。

 エルサは翅を広げ、上空へ。


『さぁて……今日もバビスチェ様のために』


 この、愛の営みによる子孫繁栄。

 ただ『愛の魔王』だからではない。度重なる『魔王の手番』により少なくなった人間を増やすという意味でも、効率のいい『聖域』でもあった。

 人間は生かさず殺さず。足りなくなれば増やす。

 バビスチェの『愛』により、数は増える。


『だからぁ~……少しくらい、ハメ外してもいいわよねぇ?』


 ピキピキと、エルサの翅が凍り付いていく。

 巨大な蝶は、王都全体に向けて、無差別に凍らせようとしていた。

 エルサは───……少し、悶々としていたのである。その興奮を、人間たちにぶつけようとしていた。

 が───聞こえてきた。


「そこのでっかい蛾ァァァァァッ!! あんたの相手はこのあたし、エレノアがするわ!! かかってきなさいっ!!」


 エルサに見えたのは、炎聖剣フェニキアを掲げるエレノア。

 一瞬だけ訝しむ。なぜバビスチェの聖域内で戦意を保てるのか? だが、エレノアの身体に、小規模の風がまとわりついているのを見て、風聖剣の可能性に思い至る。


『───……まあ、いいわ』

「あ、無視!? 無視すんなこの蛾!! 虫だけに!!」

 

 何か喚いているのが聞こえた。

 無視してもいいが───……一つだけ、許せなかった。


『私は蝶───……蛾じゃないわ!!』

「『灼炎楼・三仙刀(さんせんとう)』!!」


 エルサが蝶の翅から放った氷のつぶてを、エレノアは叩き落す。

 エレノアがいるのは公園。エレノアを狙っても周囲の被害は少ないだろう。

 エレノアは炎聖剣を振りかぶり、思いきり振り下ろした。


「『灼炎楼・緋炎刃(ひえんじん)』!!」

『!!』


 燃え、飛ぶ斬撃。

 赤い炎の刃が、エルサめがけて飛んできた。

 エルサは翅を片方畳むと、翅を凍らせてエレノアの斬撃を防御する。

 エレノアの炎では、今のエルサを焼けない。

 舌打ちし、聖剣を構える。


『フフフ……バビスチェ様の『愛』を、そんなちっぽけな風で弾けるとでも? そんな風、すぐにでも消えて戦意を失うかもね』

「さぁね。でも、そんなことは後で考えればいい……今は、アンタをブチのめすのが先決!! ですよね、ロセ先輩!!」

「ええ、そうねぇ」

『───……!!』


 いつの間にか、ロセがエルサの背後にいた。

 エレノアと真正面から対峙していたせいか、背後で少しずつ、土を操作して『塔』のように固めていることに気付かなかった。

 ロセの手には、『大戦斧』が握られ、思いきり振りかぶっていた。


「『地帝(ドワーフ)』!!」

『しまっ』

「『インパクト』!!」

『───……!!』


 とっさに翅を畳んで防御姿勢を取ったが、ロセの怪力で弾き飛ばされたエルサ。

 すぐに空中で態勢を立て直し、自身の周囲に『氷』を浮かべる。


『もう油断しない。ふふ……あと二人、どこに隠れているのかしら?』

「ロセ先輩!! ブチかましましょう!!」

「ええ!!」


 エレノアはバーナーブレードを展開し、ロセは大戦斧を頭上でクルクル回転させた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ユノ、ララベルの二人は、先に『見晴台』の頂上にいた。

 王都が一望できる、王都で一番高い塔の上。

 ユノは、ぼーっと王都を眺めていた。


「大丈夫?」

「はい。ここ、すごくいい景色」

「そうね……でも、今は」


 王都は、桃色のモヤに覆われている。

 愛の魔王バビスチェによる『聖域』に、国民全員が囚われていた。

 

「愛の魔王バビスチェの手番は、破壊や殺戮じゃない、内戦による内部崩壊や、国同士の争いを引き起こす……か」

「…………」

「ね、嘆きの魔王と、どっちが厄介?」

「……わかりません。でも、こっちのがイヤ」

「そうねえ……」


 すると、エレノアとロセがエルサと戦っているのが見えた。

 ゆっくりと、確実に、ユノたちのいる見晴台の方へ誘導している。

 ユノは氷聖剣フリズスキャルヴを抜き、ララベルも風聖剣エアキャヴァルリィを抜く。

 

「アタシはサポートで精一杯。いい、恐らくチャンスは一度きり」

「うん」

「ユノ」

「……?」


 ララベルは、ユノの肩をポンと叩いた。


「今度は、好きな男の子と一緒に、ここからの景色を眺めなさい」

「……うん」


 ふと、思い浮かぶのは───……ロイ。

 ユノの大好きな人。自分を助けてくれた人。そして、愛する人。

 ユノはフリズルキャルヴをしっかりと握りしめた。


「わたしの氷、あいつの氷……本当に強い氷がどっちなのか、教えてあげる」

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〇聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
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