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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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戦闘準備

 一夜明け、ロイは目を覚ました。

 毛布をグルグル巻いて芋虫のような姿のアオイを見て、ゆっくり立ち上がる。

 身体に包帯が巻かれている姿を確認し、手足を伸ばし、軽くジャンプする。

 すると、アオイが起きた。


「む……」

「あ、悪い。起こしたか」

「いや……ん」


 アオイが起きると、毛布が落ちた……毛布の下は裸で、形のいい胸が見えてしまう。

 ロイは目を反らすが、アオイは気にしていない。

 

「身体の調子はどうだ?」

「あ、ああ。傷も塞がってきた。さすがアオイだな……綺麗に斬られた傷は治りが速いって聞くけど、まさか一晩でここまで……」

「褒めてくれるのは嬉しいが、複雑な気分だ」


 アオイは立ち上がる。

 全裸で身体を伸ばし始めたので、ロイは慌てて顔をそむける。


「見て構わんぞ。私の全ては、あなたの物になるからな」

「い、いや……は、早く着替えてくれ」

「ふふ、わかった」


 アオイはシーツを破いてサラシを作り、胸に巻く。

 そして、器用に下着を作り、乾かした衣服を着た。長い髪をシーツで作ったリボンで結び、雷聖剣イザナギを腰に提げる。


「よし……!! さて、腹ごしらえしたら行こうか。と言いたいが……これからどうする?」

「問題点を整理しよう」


 ロイは椅子に座り、昨日の残りであるトウモロコシを手に取った。

 アオイもトウモロコシを齧り、鍋の水をカップに注ぐ。


「まず、王都の中じゃ戦意が奪われてまともに戦えない……だよな、デスゲイズ」

『ああ。戦意を奪い、暴力を禁ずる。そして欲求を高め、強制的に交わらせる。それがバビスチェの聖域だ。最初はくだらないと思ったが、人間相手にこうもハマるとはな』

「つまり、王都の中じゃ戦えない。だったら……どうする?」

「……王都の、外?」

「それも考えた……でも」

『無駄だろうな。バビスチェが聖域の領域を広げたら、それで終わりだ。その気になれば、魔王は全員、人間界を『魔王聖域(アビス)』で覆える。そうしないのは『ルール』だからだ』

「つまり、外におびき寄せるのも無理ってことだ」

「……そういうことか」


 アオイはトウモロコシを一本完食。カップの水をグイっと飲む。


「ああ。愛の魔王バビスチェの聖域を解除するしかない。デスゲイズ、聖域はどうすれば解除できる?」

『いくつか方法はある。まず、致命傷を負わせること。そうすれば聖域の維持はまず不可能だ』

「……できると思うか?」

『厳しいな。バビスチェの戦闘力は四人の中で最低だが、それでも四人の魔王に仕える侯爵級、公爵級が束になっても傷一つ負わせることはできん』

「ふぅむ……では、他に方法は?」


 アオイがさらにトウモロコシに手を伸ばす。

 どうやら朝食はしっかり食べるタイプのようだ。


『もう一つは、解除せざるを得ない状況に追い込む。だがこれも現実的ではないな。バビスチェの手番では、愛に狂った人間が同士討ちを始めるのが一般的だ。このまま聖域を維持すれば、愛に狂った人間たちの自滅行為が始まる。ただ待つだけなら、バビスチェは聖域を数年は持たせられる』

「おいおい、マジかよ……」

『持続力は、四人の中でもトップレベルだ。そうなれば、一つしかない』

「お、手があるのか」

『ああ。致命傷を負わせるのに近いやり方だ。ロイ、アオイ……お前たちにしかできない、な』


 デスゲイズは『作戦』を二人に話した。

 すると、アオイが首を振る。


「せ、拙者にそんな大役を……!?」

「……現状、それしかないか。でも、本当にできるのか? 俺、あまり自信ない」

『我輩がサポートする。恐らくだが……いける、と思う』

「お前……自信なさそうだな」

『う、うるさい』

「アオイ、どうする」

「……やろう。戦えるのが拙者たちだけなら、やるしかあるまい」

「ああ。っと……そういえば、エレノアたちは」

『……恐らく、バビスチェの聖域に囚われているだろうな。七聖剣があれば、ある程度の耐性はあるだろうが』

「……アテにはできないな。殿下やスヴァルト先輩も?」

『わからん』


 すると、部屋の隅で丸くなっていたシェンフーが起きた。


『くああ……』

『さて、もう一つの情報源だ。悪いがロイ、我輩のことはコイツに伏せておくぞ』

「ああ。シェンフー、おいで」

『おい、犬じゃないぞ』


 シェンフーは、身体をぶるっと震わせ、ロイの太腿へ飛び乗った。

 ロイはシェンフーを撫で、顎をすりすりしたり、お腹をわしわし触る。すると、気持ちよくなったのか、喉をゴロゴロ鳴らした。


『ごろごろ……』

「犬というかネコだな。虎もネコの仲間と聞いたことがある」

「かわいいなぁ……もふもふだ」

『んん~……気持ちいいぞ』

「って、和んでる場合じゃないな。おいシェンフー、バビスチェのこと、何でもいいから話してくれ」

『バビスチェ様? あたし、ペットだから知らん。たぶんだけど、あたしの裏切りはとっくに伝わってる。バビスチェ様の聖域に踏み込んだら、あたしも囚われるし、あんたらが負けたらあたしも死ぬ』

「だよなあ……うーん」

『あ、でも……アンジェリーナから聞いたことある。バビスチェ様は聖域の維持こそ魔王で最長だけど、強度は一番弱いって』

「……それ、いい情報だな」

『ごろごろ……』


 ロイはシェンフーをモフり、アオイに言う。


「アオイ、活路が見えて来た。俺とお前で、バビスチェの『魔王聖域(アビス)』を解除するぞ」

「ああ。そうすれば、七星剣士全員で戦える……!!」

「だな。作戦前に、エレノアたちを探したいけど……今回はスピード勝負だ。聖域に踏み込んだ瞬間、勝負が始まる」

「うむ。拙者たちが戦っているのを察知して、来てもらうしかないな」


 アオイが頷く。

 すると、シェンフーがロイの胸に甘えるように頭を擦りつけた。


『なあ、本当に……人間が、魔王様を倒すのか?』

「ああ、倒す」

『……ヒトと魔族の戦いはもうずっと続いている。七聖剣士が魔王トリステッツァ様を追い詰めたのが最後で、もう何年も魔王を追い詰めた聖剣士はいない。でも……トリステッツァ様は討伐された。もしかしたら、お前たちがバビスチェ様を討伐するのかも……』

「当然だろう。魔王は、人間の敵だ」

『……ロイ、お願いがある。バビスチェ様配下の魔族には、手を出さないでほしい。純粋に、バビスチェ様を慕っている魔族も多いんだ。今は魔界にいるけど……なんとなく思う。お前たち人間は、いつか魔界に踏み込んでくる、って』

「シェンフー……」


 シェンフーは喉をゴロゴロ鳴らす。

 ロイはシェンフーを抱きしめた。


「大丈夫。俺たちが倒すのは魔界貴族と魔王だけだ。何の意味もない侵略はしない」

『うん……』

「よし。アオイ、準備ができたら行こう」

「ああ」


 ロイとアオイは立ち上がる。

 ロイは『狩人形態』へ変身し、魔弓デスゲイズを手に取った。


「バビスチェの『魔王聖域(アビス)』の解除───……半日以内にケリを付ける」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >何の意味もない侵略はしない ロイ達はしなくても賤しい王侯貴族共はするんだろうな 奴らにとっては意味があることだろうし
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