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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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久世雷式帯刀剣術皆伝 久世葵②/聞こえる声

 虚ろな眼のアオイは、ロイがこれまで対峙した魔界貴族の誰よりも強かった。

 厄介なのは聖剣だけではない。異常なまでに練磨された剣術、雷の力が組み合わさり、恐るべき脅威となっている。


『ロイ、もう仕方がない!! こいつを行動不能にしろ!! このままではお前がっ!!』

「くっ……それができる相手じゃ、ねぇ!!」


 デスゲイズは、『アオイを傷付けてでも行動不能にしろ』と言っている。

 そして、ロイならできると思っている。

 だが……できない。

 情の問題ではない。アオイが強すぎ、ロイの攻撃が全て届かないのだ。


「久世雷式帯刀剣技、『雷鳴破(らいめいは)』」

「っ!!」


 日本刀形態のイザナギを一瞬抜き、納刀する。

 居合ではない。カチィン!! と、雷が乗った《鍔鳴り》がロイの耳を刺激し、一瞬だけフラついた。

 その隙を見逃すアオイではない。ロイの懐に入り、今にもキスしそうなくらい顔が近づく。


「───ッ!! アオ」


 イ、とは言えなかった。

 『短刀形態』のイザナギが、ロイの脇腹を軽く裂いた。

 ギリギリ身を捻り、なんとか躱せた。ロイはアオイを突き飛ばす。

 

「っぐ……」

『ロイ、やれ!!』

「できねぇんだよ!!」

『何……』

「強すぎる!! 速すぎる!! アオイだからとか、情の問題じゃない。アオイが強すぎるんだ!!」

『なっ……』


 デスゲイズは、ロイの強さを知っている。

 ロイはこう言うが、間違いなくアオイに対する情も残っているだろう。倒せなくても……殺す気になれば、アオイを倒せる。

 だが、絶対にロイはしないだろう。

 だから───ロイは賭ける。アオイの強さに。


「アオイ!! 眼ぇ覚ませ!! アオイ!!」


 果たして、その声は届くのか。


 ◇◇◇◇◇


 一方その頃。

 エレノアたちは、絶体絶命だった。


「あぁぁぁぁっ!! やばいやばいぃぃっ!! ちょっとロセ何とかしなさいよ生徒会長でしょ!?」

「そ、そんなこと言っても……」


 両手両足が凍り付き、さらに素っ裸。

 そして、氷が全身を覆い始めた。

 魔界貴族侯爵『凍鳴』のエルサの『鳴氷』が、エレノアたちを包もうとしている。

 ララベルが叫ぶが、ロセは何もできない。

 ユノは、身体を動かす。


「だめ。この氷……わたしの力じゃどうしうようもない」

「あぁぁもう!! マジでどうすりゃいいのよ!! サリオス、スヴァルト先輩、八咫烏でもいいから助けてっ……って、やっぱダメ!! 今素っ裸じゃん!!」


 エレノアは、すでに決着が付いたと思い込んで欠伸をしているエルサを見た。

 すぐ近くの祭壇には、四本の七聖剣が刺さっている。

 エレノアは、祭壇に刺さる『炎聖剣フェニキア』を睨み、叫んだ。


「フェニキア!! 根性見せるわよ!!」

「……んん?」


 エルサが、鬱陶しそうにエレノアを見た。

 エレノアはニヤリと口を歪め、叫ぶ。


「『鎧身(がいしん)』!!」


 すると、炎聖剣フェニキアが燃え上がり、炎がエレノアを包み込む。

 氷が砕け散り、ユノたちの氷も砕け、祭壇の氷も砕け、七聖剣がユノたちの手に収まった。


「なッ……!?」

「ブチかます!!」


 エルサの目の前にいたのは、赤と真紅の全身鎧に包まれたエレノアだった。

 手には炎の聖剣を握っており、すでに行動を開始している。

 エルサは、完全に油断していた。


「『灼炎楼(しゃくえんろう)天照大神(アマテラス)』!!」


 聖剣の炎が膨れ上がり、太陽のように丸くなる。

 まるで、炎の鈍器。

 そのままエレノアは、エルサに向かって炎のハンマーを叩きつけた。


「だらぁぁぁっしゃぁぁ!!」

「ぬ、ッギヤァァァァァ───ッ!?」


 太陽のような炎がエルサを包み込み、そのまま床に叩きつけられ、火柱が上がった。

 炎が消えると残ったのは、真っ黒に焦げた人の形をした炭。

 エルサが、炭化してしまった。同時に、変身が解け全裸になる。


「はぁ、はぁ……あはは、ザマー見なさい!! って、裸!! ふ、ふく、服っ!!」

「エレノア、こっちにあるよ」

「あ、ほんと!?」


 祭壇の傍に、エレノアたちの制服が捨ててあった。

 エレノアたちは素早く着替える。すると、エルサの氷から解放された王都の女性や、上級生たちが裸で倒れていた。

 ロセは言う。


「みんなを安全な場所に避難させましょう。着るものを探さないと」

「ここの人たちの服は……うーん、ない。あたしたちのはあったけど」

「あ、このカーテン使えない? ユノ、切るから氷で足場作って!!」

「はーい。ララベル先輩、ちっちゃいですもんね」

「一言多いっ!!」


 四人で手分けして、窓にあるカーテンを切ろうとする。

 だが───そうはいかなかった。


『フフフ……情熱的、ねぇ』


 聞こえてきたのは、エルサの声。

 炭化したエルサが立ち上がる。真っ黒な出来損ないの人形のようなエルサは、炭化した腕を持ち上げた。


『愛が、足りないようね……みんな、私が、愛して……あ・げ・る』


 ベキベキと、黒い炭に亀裂が入る。

 まるで、羽化するような……人型の炭から現れたのは、純白の蝶。

 だが、エレノアたちの目の前で、一メートルほどの大きさの蝶が、ぐんぐんと大きくなる。

 

『フフフ……『魔性化(アドベント)』』


 エルサの真の姿は、全長十メートル以上ある、巨大な蝶。

 教会の天井を突き破り、真っ白な蝶が王都に羽ばたいた。

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原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] アオイは実際強いんだろうけど、洗脳によくあるリミッター解除状態ってのもあるのかな? エレノアは逆境を跳ね除けたはいいけど詰めが甘いね ちゃんと核を破壊しなきゃ [一言] ところで蝶と蛾…
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