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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛

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アナタの愛こそ私のすべて・愛の魔王バビスチェ③/コンバート

 訓練場の中央で『クロスボウ』を構えるロイ。

 矢は番えてあり、あとは引金を引くだけ。照準はシェンフーに向けられている。

 シェンフーは警戒していた。が、あの矢が自分に刺さると発動するのか、触れると発動するのか、まだわからなかった。


『お前は、許さない……』

「…………」

『タイガを殺したお前を、許さない!!』

「……家族を想う愛は、あるんだな」

『当たり前だ!! あたしとタイガは双子。一心同体なんだ!! 半身を引き裂かれた気持ち、お前なんかにわかるもんか!!』

「ああ、わからないね。でも……お前、今まで人間を手にかけてきたんだろ? その中にも、お前みたいな双子とかいたんじゃないのか?」

『…………』

「やったら、やり返される。そんなの、ヒトも魔族も同じだろ。お前は今、やり返されてるんだよ」

『う……うる、さいっ!!』


 ロイのプレッシャーに、シェンフーは押されていた。

 たかが人間の重圧。

 クロスボウを向けられただけで、シェンフーは怯む。


「行くぞ」


 ロイが真正面に向かって走り出す。

 シェンフーに向かって、真っすぐ。

 どうすればいいのか。シェンフーは一瞬迷う……が、身体を丸め、その場で高速回転した。


「『虎転玉(ルルド)』!!」


 ギュィィィィン!! と、その場で高速回転。

 これなら、剣も魔法も矢も通さない。

 すると、ロイはクロスボウを下ろす。


「『転換(コンバート)』」


 暗殺形態(アサシンフォーム)へと変わり、短矢を装填し放つ。

 『強欲』の矢は、『奪う』力。

 放たれた矢は、シェンフーが回転する地面へ。回転により土がむき出しになった地面に突き刺さると、シェンフーの周囲が一気に『砂』となった。


『なんと。大地の『水分』を奪うとは!! くははっ、応用が上手いな!!』


 デスゲイズが笑う。

 シェンフーが砂地で回転すると、ズンズンと地面に埋まっていく。


『砂!? く、このっ……』


 ロイは再び『転換(コンバート)』し、クロスボウを地面に放つ。

 すると、大地が砂から『鋼鉄化』し、身体が半分以上埋まっていたシェンフー回転が止まった。


『ぐ、ァァァ!! クッ……なめ、るなァァァ!!』


 だが、地面に亀裂が入りシェンフーが飛び出す。

 跳躍し、ロイに向かって飛び掛かってくるが、ロイは真横に飛んで回避。

 シェンフーは再び球体となり、回転して迫って来る。

 すると、ロイは近くの木にクロスボウから矢を発射。


『ん? 何を』

「ふふん、見てろ」


 木の枝を掴むと、なんとほぼ真横にグニャンと折曲がったのだ。

 樹木をゴムのように『変質』させ、ゴムの反動を利用してロイは飛び上がった。

 上空五十メートルほどに跳躍すると、シェンフーも同じように飛び上がる。


『喰い殺してやる!!』

「残念」


 だが、ロイはすでに『暗殺形態』へと転換。

 矢が放たれ、今まさに食われんとしていたロイと、小さな矢の位置が入れ替わる。

 シェンフーはロイと入れ替わった『矢』喰らい、ぼりぼりと噛み砕く。

 すると、すでに地面にいたロイが言った。


「それ、何だかわかるか? さっき地面から奪った『水分』だ。位置を入れ替える前に、『傲慢』の力ですでに変質させている。それがお前の腹の中で元に戻ると───……」


 すると、シェンフーが口から大量の『熱湯』を吐き出した。


『ブ、っっぼぉ!? っがぁ、アァァァァァッ!?』


 ただの熱湯ではない。

 『変質』によって変化した、摂氏数千度の熱湯だ。気体に蒸発することなく、液体のまま『変質』させた矢がシェンフーに噛み砕かれ、そのままシェンフーの体内で一気に解放されたのだ。


『おお……『強欲(グリード)』と『傲慢(プライド)』のコンボとは。ほんの数分前に権能を使い始めた者の発想ではないぞ……相変わらず、恐ろしいな』


 デスゲイズが感心する。

 シェンフーは、体内から熱湯で焼かれ、内臓に甚大なダメージを追った。

 シェンフーの回復力は並みの魔族程度。核が無事なら四肢も再生するが、修復には時間がかかる。

 ロイは、シェンフーにゆっくり近づく。


「さて……」

『……もう、いい』

「ん?」

『殺せ。あたしは、もう……戦えない』

「……驚いたな。そんなこと言うとは思わなかったぞ」


 『憤怒』や『暴食』の力が使えないので、決定的な一撃をロイは与えられない。どうしようかと考えつつ近づいたのだが、シェンフーはまさかの『降参』に出た。

 シェンフーは、身体を横たえると……なんと、身体が縮みだす。


『っぐ……』

「おお、小さくなった」

『……殺せ。タイガのいない世界にいても、意味がない』

「…………」

『おねえちゃん……』


 タイガは、子犬ほどの大きさにまで縮み、動かない。

 

『ロイ、始末しろ』

「……こいつ、人間の姿に戻らないのか?」

『消耗しきっている。一度魔性化すると、忠誠を誓った魔王じゃなきゃ元の姿に戻せない』

『……さっきも、言ったろ。あたしは……あたしとタイガは、バビスチェ様の『ペット』だ。バビスチェ様の魔界貴族はみんな、バビスチェ様のために存在するんだよ。戦闘力なんて二の次だ』

「ペット……」

『あたしが死んでも、バビスチェ様は新しい『ペット』を侯爵級にするだけ。わかっただろ? あたしのこの姿……バビスチェ様は、『愛らしい』って理由だけで、傍に置いてくれてんだ。双子の、可愛らしい虎……たまーに、この姿で抱っこされて……』

「…………」


 ロイは、変身を解いた。

 デスゲイズは、猛烈に嫌な予感がした。


「俺は、お前の姉を倒したことに後悔はない」

『…………』

「でも、お前が姉を想い、姉のために俺へ復讐しようとする気持ちは本物だと思う」

『……何が言いたい』

「俺は、愛の魔王バビスチェを倒す。必ず。だから、手を貸せ」

『…………は?』


 ロイの口から出たのは……まさかの『勧誘』だった。

 

 ◇◇◇◇◇


 ロイの提案はこうだった。


「お前、愛の魔王バビスチェのこと、どう思ってる」

『……敬愛するお方だ』

「ほんとか? ペット扱いされてるだけだなんだろ?」

『それと、『聖域』発動の駒だな』


 ロイは、横たわるシェンフーを撫でる。

 桃色の体毛はフワフワで触り心地が良く、とても暖かい。

 

「パレットアイズもトリステッツァも、自分の配下に対してそこまで情を持っていないように感じた。もしかしたら愛の魔王バビスチェも……って思ったけど、どうなのかな」

『何を、言っている』

「お前の怒りは、俺がお前の姉を倒したことに対する怒りだけだ。そこに、バビスチェへの想いはなかった。もしかしたら、魔界貴族の全ては魔王に従順じゃないのかなって……」

『…………』

「どうする。手を貸すか?」

『…………いいだろう』


 シェンフーは立ち上がる。

 子犬程度の大きさだが、その眼は敵意に満ちていた。


『お前に協力するんじゃない。お前は、バビスチェ様直々に殺してもらえ』

「いいぞ。よし、その前に」


 ロイは『野伏形態(レンジャーフォーム)』へ転換し、一瞬でシェンフーの胸に矢を放った。


『!?』


 矢が消える。だが、シェンフーには傷一つない。

 ロイは変身を解き、言う。


「『アナタは私のモノ(アイラブチェイン)』……お前の核に矢を打ち込んだ。お前が俺を裏切ったり、直接的な攻撃を仕掛けようとしたら、矢が核を破壊する。ああ……全部終わったら解放してやるから、それまで我慢しろ」

『お前……ッ』

「さ、行くぞ。まずは……愛の魔王バビスチェの場所、教えてもらおうか」


 こうしてロイは、魔界貴族侯爵『妹虎』シェンフーを手懐けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] まさかの展開、でも八咫烏が魔族引き連れてるってことが周知されたら、より立場悪くなりそうだな…今でも信用されてないのに
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