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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛

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アナタの愛こそ私のすべて・愛の魔王バビスチェ②/支配のサリオス

「ぜぇ、ゼェ……クッソが、この、クソ殿下……ッ!!」

「…………」


 瞳が桃色に染まったサリオスが、光聖剣サザーランドをスヴァルトに向けていた。

 サザーランドには、真っ赤な血が付いている。

 スヴァルトの身体がいくらか斬られ、出血していた。


「クソが……なんで、身体が上手く、動かねぇ!?」


 闇聖剣アンダンテが、うまく変形しない。

 鋸剣のまま、サリオスの剣を辛うじて受け、躱していた。

 技も出せず、能力も使えない。


「……『シャイニング・カット』」

「ッ!! 第二階梯魔法、『黒キ壁(ブラックシルド)』!!」


 詠唱破棄した第二階梯魔法。

 魔法による攻撃はできないが、防御はできる。

 だが、詠唱破棄できるのは第二階梯魔法まで。魔法が苦手なスヴァルトにとって、かなりのピンチだ。

 ロセは第四、ララベルは第三階梯まで詠唱破棄できる。スヴァルトは魔法を諦め、武器の変形や戦術ばかり磨いていた……が、ここにきて仇となった。

 闇の魔法で作られた盾があっさり砕かれる。


「ちくしょう……殿下の野郎、目ぇ覚ましやがれ!!」


 ◇◇◇◇◇◇


 サリオスの意識は明滅していた。

 わかるのは、サザーランドを持つ感覚だけ。

 首から下が凍ったように冷えており、眼球だけは動かせる。 

 そして、内側から聞こえる、謎の声。


『さぁ、さぁ、さぁ……あなたの、あなたの、あなたの……剣で、剣で、剣で……目の前にいる、目の前にいる、目の前にいる……敵を、敵を、敵を』

「敵、を」


 斬る。

 身体が動き、目の前にいる『スヴァルト』を斬る。

 スヴァルトが、何かを言っている。


『めぇさませ、でんか!!』


 誰の事だろうか? 男の声が聞こえる。

 サリオスは、この男の声がうっとおしく感じていた。

 

『それじゃダメよ? ふふ……』


 だが、そうじゃない。

 この声は毒だ。サザーランドが、そう言っている気がする。

 サリオスの後ろから聞こえる、魔界貴族の声がする。

 だが───サリオスの目の前に、スヴァルトではない、魔界貴族ではない『女』が現れた。


『そう。あなたにも『資格』ができた』


 聞いたことのない声が、サリオスの中に響き渡る。

 サリオスの後ろにいるのは、魔界貴族だ。

 だが、目の前にいるのは誰だろうか? まるで、女神のような……。


『さぁ……解放しなさい』


 解放。

 サザーランドが、熱を持つ。

 そして───……サリオスは、ポツリと呟いた。


 ◇◇◇◇◇◇


「『鎧身(がいしん)』───」


 ◇◇◇◇◇◇


「え?」

「あ?」


 スキュバと、スヴァルトが唖然とした。

 サリオスの全身を包み込む、純白をベースにし、黄金と銀の装飾が施された全身鎧。

 肌の露出が一切ない。鎧だけではなく、マントも羽織っている。

 右手には丸盾を装備し、左手には変形し、両刃長剣となったサザーランドが握られていた。


「せ、聖剣の……さ、最終形態だとぉ!?」

「し、知らない。こんなの……知らないわ!?」


 サリオスは、ぐるりと向きを変え、スキュバに剣を向けた。


「ひっ」


 そして、黄金に輝く光聖剣サザーランドが輝きを増す。


「奥義!! 『シャイニングハーツ・ブレイバー』!!」


 あまりに光量にスヴァルトは目を閉じ───……眼を開けると、スキュバは影も形も消えていた。

 光聖剣サザーランドの最終形態。『光聖剣鎧サザーランド・ライトオブハイロゥ』の力だった。


「…………ぅっ」


 鎧が解除されると、サリオスはその場に崩れ落ちる。

 スヴァルトはサリオスを支え、呆然としたまま呟いた。


「マジかよ、殿下……あの眩しい光だけで、魔界貴族を消滅させちまった」


 光だけで、周りの建物には一切の被害がない。

 破壊ではなく、消滅の光。

 それが、サザーランドの最終形態の力。


「……やれる。魔王も殺せる……ッ!! 聖剣の最終形態。オレも早く手に入れ、ねぇ……っく、血ぃ、流し、過ぎた……か」


 スヴァルトは、サリオスと共に気を失った。


 ◇◇◇◇◇◇


 一方、ロイは。

 シェンフーに向けて放った矢は、心臓部分にめがけて真っ直ぐ飛ぶ。

 だが、柔らかな身体と体毛にあっさり弾かれた。


『フン、無駄だと言ってるだろうが!!』

「かもな」


 だが、ロイは余裕を崩さない。

 それがシェンフーの勘に触ったのか、雄叫びを上げて再び身体を球体に丸める。

 桃色の毛玉。確かに、触り心地がよさそうだった。

 ロイは魔力操作で身体強化。気配を殺し、一瞬でその場から消えた。


『隠れても無駄だ!!』


 シェンフーは、スンスンと匂いを嗅ぐ。

 一方、ロイは演習場の物陰に潜んでいた。


『で、策は』

「…………」

『お前、あんな啖呵を切って、無策とはな』

「う、うるさい。というか、そう思うならお前も何か考えろよ」

『…………まぁ、手はあるな』

「お、マジか」

『ロイ、一つ聞かせろ』

「なんだよ、こんな時に」

『お前、エレノアが好きか? ユノとどちらが好きだ? それとも……あのアオイか?』

「…………お前、ふざけてんのか?」

『見つけたぞ!!』


 シェンフーが気付き、転がって来た。

 ロイはその場から離脱。演習場内へ、遮蔽物がない戦闘場内を走る。あまり逃げ回ると、シェンフーによって周囲が更地になりかねない。

 生徒だけでなく、教師も、聖剣士たちもバビスチェの術中にはまっている今、誰がどこにいるのかわからない。校舎、学生寮の方へ向かうわけにはいかなかった。


『ロイ、答えろ。お前は、誰を愛する?』

「知るか!! つーか、そんな場合じゃないだろうが」

『誰か一人を選ぶか。それとも……全てを選ぶか?』

「あぁ!?」

『潰れろォォォォォォォ!!』


 シェンフーが転がってくる。

 ロイは逃げる。建物の影に隠れるか、それとも危険を承知で学園の敷地内に逃げるか。


『今もそうだ。迷っている。学園の敷地内に逃げれば、お前は逃げられるかもしれない。だが……お前は逃げない。誰かが巻き込まれるかもしれないから。だから、勝利の手を探しつつ、今こうして逃げ惑う。勝つか負けるか、どちらを選ぶ?』

「決まってんだろ、両方だ!! 俺はここで死ぬ気はないし、あんな虎に負けもしない!!」

『では、エレノアたちは?』

「知らん!! ってか、どっちか選ぶとかじゃない。俺は俺の答えを出す!! 答えは……『知らん』!!」

『…………』


 ロイは走る。

 桃色の球体がすぐ背後に迫っている。

 弓を構える間もない。体力が尽きるまで、演習場内をグルグル回る。

 すると、デスゲイズが。


『逃げもせず、負けもせず。選びもせず、自分の答えを探す。か……お前はなんとも『傲慢』だな。いいだろう……ロイ、お前にくれてやる。大罪権能『傲慢(プライド)』の力をな!!』

「え!? このタイミングで!?」

『さぁ、変身の時!!』

「って、おぉぉ!?」


 ロイのコートが変わる。

 コートがマントのようになり、仮面の形状が口元だけを露出したアイマスクに。

 手には、『憤怒』で使用するショットガンに、弓と弦が合体したような『クロスボウ』が握られていた。

 黒を基調としたマントに仮面。まるで。


『名付けて、『奇術形態(マジシャンフォーム)』……さぁロイ、その力見せてみろ!!』

「ありがたいけど、この状況で撃つの難しいッ!! ───……ぬ、アァァァ!!」


 ロイは全力で走り跳躍。空中で回転し、腰の矢筒から矢を装填。

 クロスボウをシェンフーへ向けた。


『無駄だと言ってるだろうがァァァァァァ!!』

「大罪権能『傲慢(プライド)』装填」


 使い方は、頭の中に浮かんでいた。

 『傲慢』の矢を向けるのはシェンフーではない。

 シェンフーが転がる、地面。


「歪め、『狂反転の矢スペルディア・ショット』!!」


 放たれた矢が地面に刺さると───……一瞬で『泥化』した。


『なっ!?』


 シェンフーの回転が遅くなり、泥が飛び散り、身体が徐々に沈んでいく。

 シェンフーは丸めた手足を戻し、泥から跳躍して地面に立った。


『な、何を……』

「すっげぇ……」


 ロイも驚いていた。

 デスゲイズは誇らしそうに説明する。


『大罪権能『傲慢(プライド)』の力は『超変質(アルティネイション)』……そのものが持つ属性や材質を変化させることが基本能力だ。さぁロイ、あとはお前の想像力次第で、この力は化ける。お前の望むがまま、第五の権能を使いこなして見せろ!!』

「いいね、面白い……」


 ロイは次矢を装填、シェンフーに向けた。


「三分以内にケリ付ける───……行くぞ!!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます! [気になる点] まさかのサリオス覚醒回とロイの5個目(今章2個目)の権能取得回 [一言] これで魔界貴族2人目撃破
2022/12/17 11:40 退会済み
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