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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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アナタの愛こそ私のすべて・愛の魔王バビスチェ①/例外のロイ

 ロイはひたすら走り、壁を登り、柱を駆けあがり、屋根を駆ける。

 

『待てェェェェェ!! 喰い殺してやるゥゥゥゥゥゥッ!!』

「くっ……!?」


 校舎を破壊しながら迫るのは、魔界貴族侯爵『妹虎』のシェンフー。

 魔性化し、全長三十メートルを超える巨大な桃色の『虎』が、ロイを食い殺さんと向かってくる。

 ロイは矢筒に手を伸ばす。


『ロイ、権能を使え!!』

「わかってる!! わかってるんだけど───……上手く使えないんだよ!!」

『何ぃ!? くっ……バビスチェの聖域のせいか。使えないのは!?』

「『暴食』と『憤怒』!! 攻撃しようとすると、意識が歪む!!」

『『色欲』と『強欲』は使えるか……奴を奴隷にしろ!!』

「ああ!!」


 ロイは『野伏形態(レンジャーフォーム)』へ変わり、短弓に矢をセット。

 シンプルな、『自分の言うことだけを聞く』だけの力を矢に込める。


「大罪権能『色欲』装填!! 『奴隷落ちの短矢(スレイブショット)』!!」


 放たれた矢が、巨大虎の眉間に突き刺さる───……が、なんと刺さらずに跳ね返った。

 まるで、柔らかなゴムに当たり、弾かれたような。

 すると、シェンフーが身体を猫のように丸める。


『『虎玉(ボルダ)』!!』

「ッ!!」


 なんと、シェンフーは球体となり、ゴロゴロ転がってきた。

 弾力性のある身体は建物を破壊しながら跳ねまわり、ロイの逃げ道を塞ぐ。

 現在、ロイは第四訓練場まできた。上級生が使う、年季の入った訓練場だ。壁を一瞬で駆け上がり訓練場のど真ん中まで走ると、壁を破壊しながらシェンフーが転がって来た。


「矢が刺さらない!! くそ、『憤怒』の攻撃力ならいけるかもしれないのに……ッ!!」

『どうする。このまま逃げ続けてもいいが、学園が更地になるぞ!!』

「戦えるの、マジで俺だけかよ!! 他の聖剣士は……」


 と、ロイは見た。

 破壊された壁の近くに、脱衣所がある。

 そこに隠れていたのか、上級生の男女が、激しく絡み合っていたのだ。

 シェンフーが脱衣所を破壊したのに、自分の聖剣が床に転がっているのに眼もくれず。

 

「くっ……マジで洗脳かよ」

『バビスチェの聖域。ハマるとこれほど恐ろしいとは……パレットアイズやトリステッツァと比べ物にならんぞ』

「どうする……」

『ゴルァァァァァァァッ!!』


 シェンフーが丸めた身体を元に戻し、四足歩行となりロイを威嚇する。

 巨大虎の威嚇。ロイは『狩人形態』になり、通常矢を手に持つ。

 能力は使用できないが、通常矢なら何とか使えそうだった。


『無駄だ。バビスチェ様の聖域が展開されている限り、オマエたち聖剣士は聖剣の能力を使えん!!』

「…………」


 ロイは無視。

 シェンフーの心臓の位置はどこか、視力を、聴力を魔力で強化する。

 心音を聞き、位置を特定。あとは威力のある矢さえ撃てればいいのだが。


『教えてやる。あたしの能力は『弾力(ゴム)』だ。身体がゴムのように柔らかいだけの能力さ』

『なるほどな。聖域を使うことに特化した魔界貴族……自身の能力がどんなに弱くても、聖域さえ展開できればそれでいいというわけか。つまり……こいつは、戦闘に特化した魔界貴族じゃない。チャンスはある……と言いたいが、肝心の攻撃ができないのでは……おのれ』


 デスゲイズが解説する。

 ロイは弓をシェンフーに向けた。


『姉の仇……オマエだけは、許さない!!』

「……お前が怒るのもわかる。身内を殺されたら怒るのは当然だ。でもな……お前たちは、これまでどれほどの人間を殺した? その中に、お前と同じ、姉妹がいたかもしれないんだぞ」

『はっ……あたしたちと人間を一緒に語るな!! あたしたちと人間じゃ、生きる時間も、絆の深さも違うんだよ!!』

「かもな。でも、これだけは言える」


 ロイは、限界まで弦を引く。


「お前も、人間たちも……命は平等だ。俺は、お前を狩る」


 そして、矢が放たれた。


 ◇◇◇◇◇◇


「離せっ!! 離せ離せ離せェェェェェ!! 女の子好きとかアホでしょ!? 女なら男を好きになりなさいよ!! このアホ、馬鹿、間抜けっ!!」

「……野蛮ねぇ」


 エレノアは、素っ裸で両腕両足を拘束された状態で、動ける範囲で身体をバタバタさせる。大きな胸がぶるんぶるんと揺れ、それを見たエルサは大きなため息を吐く。

 すると、エレノアの声が大きいせいか、続々と起き始めた。


「ん……お腹、空いた」

「ユノ!!」

「……エレノア。おっぱい出してどうしたの?」

「アンタも出てるでしょ!! じゃなくて、この状況!!」

「え……なにこれ」

「むぅぅ……んん?」

「あ、ララベル先輩!!」

「ふぁぁ……ん?」

「ロセ先輩も」


 エレノア、ユノ、ララベル、ロセの四人が起きた。

 ララベルは、素っ裸で拘束されていることに驚くも、エレノアと同じようにバタバタ暴れる。


「ちょ、なにこれっ!! 変態!! 変態!! 変態!! これやったのアンタ!? マジで許さないんだからね!!」

「そうよそうよ!! あんた、その白い髪ボワボワに燃やしてやるっ!!」


 そして、対照的にロセとユノは。


「は、恥ずかしいわねぇ……あのぉ、せめて服、着せて?」

「この氷、冷たくない……へんなの」


 どこか落ち着いていた。

 エルサは、地面に手を向ける。すると透明な氷の椅子が現れた。


「このまま持ち帰って躾するのもいいけど……あまり騒がしいのもねぇ?」

「持ち帰るとかふざけんな!! 来い来い来いエアキャヴァルリィ!! 何してんのよアタシの聖剣っ!!」

「フェニキア、来い!! 根性見せろっ!!」

「…………本当に騒がしいわね」

「同感」


 なぜかユノが同意した。

 すると、ロセは深呼吸。表情を切り替え、エルサに聞く。


「あなた、魔界貴族ね?」

「ええ。バビスチェ様の僕、可愛い女の子を持ち帰る役目。『鳴氷(なきごおり)』の能力で女の子を捕えるの」

「……役目?」

「ええ。私たちバビスチェ様の僕は、戦闘に特化するというより、バビスチェ様のためになることに特化しているの。私が女の子を閉じ込め、連れ帰る役目。スキュバは女の子に幸せな夢を見せて、タイガとシェンフーはバビスチェ様のペット。そして、アンジェリーナはバビスチェ様の騎士にして、夜の相手」


 捕獲専門の魔界貴族。それがエルサ。

 それなら、聖剣さえ握れれば、可能性はある。

 

「無駄。私の『鳴氷』は普通の氷じゃない。私の『意志』が形となった氷……炎で溶けることはないし、砕けることもない。愛の結晶みたいなもの」

「「意味わかんないし!! いいから解放しろーっ!!」」


 エレノアとララベルが叫ぶ。

 エルサは、ロセを見て言う。


「あなたは、賢いのねぇ……私の好みかも」

「それはどうも……でも私、女性より男性が好きなので」

「あら残念」


 エルサは舌を見せおどける……が、その舌が爬虫類のように長く伸び、ロセはゾッとする。

 すると、エルサは立ち上がった。


「さぁて……七聖剣士の女の子たち、そろそろお休みしましょうねぇ?」

「え、なっ……」


 ビキビキと、氷が全身を覆い尽くし始める。

 エレノアが叫んだ。


「な、何すんのよ!! こ、殺す気なの!?」

「違うわ。あなたたち、すごくうるさいんですもの……大丈夫。起きたらバビスチェ様の『愛』が、あなたたちを包み込むから」

「ふ、ふざけんな!! ああもう、ロセ先輩、ララベル先輩!! ユノ!!」

「くっそー!! こんなのイヤだしぃ!!」

「うぅ……聖剣さえ使えれば」

「ピンチ……」


 エレノアたちは、ひっそりと大ピンチになっていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱもう盛ってる人たちいるのか もし正気に戻ったら…あ、でも案外それが切掛で付き合い始めるかも ゴムに効くのは氷かな?
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