表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/230

女であるが故に

「はぁ、はぁ、はぁ……っぁ」


 アオイは、全身に微電流を流されたような状態が常に続いていた。

 第三の聖域が展開され、その力をモロに受けた。

 気配が消えているおかげで、すぐ近くにいるタイガとシェンフーにはバレていない。だが……アオイの中の『女』が、捨てたはずの『女』が、叫び声をあげているようだった。

 

「ふぅ……ふぅ」


 冷や汗が止まらない。

 身体中がムズムズする。

 アオイは、必死に耐えながら進む。

 魔族聖域(デミ・アビス)愛なる渇き(トリシュナー)』は、女を発情させ、男を狂わせる。

 いくら男になりきろうと、アオイは『女』なのだ。

 捨て去った女が、アオイの中で何かを求めている。

 そして───……。


「ね、シェンフー」

「ね、タイガ」


 アオイの二十メートルほど先の廊下を歩く、双子の姉妹が止まった。

 すでに『ロイ』ではない。

 全く同じ顔の、分裂したような姉妹。

 その二人が、ぐるりと向きを変えた。


「匂うね、シェンフー」

「匂うね、タイガ」

「「メスの匂いが、するね」」

「……ッ!!」


 アオイは、今ほど自分が『女』であることを恨み、呪った。


 ◇◇◇◇◇◇


 ロイは、魔力操作で身体強化をして、これまでにない速度で校舎へ向かう。

 

「アオイ……ッ!!」


 狩人としての勘、動物的な勘、野生の勘。全てを動員してアオイを探す。

 そして、渡り廊下で急停止……アオイの存在を感知したような気がした。

 が、何もない。


「…………」

『クソ、いない』

「いた」

『何?』

「なんとなくわかる。アオイは……ここにいた」


 渡り廊下にある、柱の影。

 ここに、ナイフで削ったような傷があった。

 そこには小さく、『みつかったすまない』と書かれている。


「クソ……ッ!! アオイが、まさか」

『待て。死んではいない。殺すならここに死体が転がっているはず。恐らく、魔界貴族に連れて行かれたんだ』

「ちくしょう!! 魔界貴族……来るなら、殺しに来いよ!! こんな、隠れてコソコソするような……ッ!!」

『だが、チャンスができた。忘れたのか、ロイ……お前の右目には、何がある?』

「……!!」

 

 ロイは『万象眼』を発動。アオイの視界とリンクする。

 すると───……見えた。ユラユラ揺れる地面、伸びきった手。どうやらアオイは担がれ、移動しているらしい。

 足下しか見えないが、ロイが今歩いている廊下と同じ材質の床だ。


「遠くない……」

『なら、もう騒ぐな。あとは、アオイの視界を共有しつつ、後を追えばいい』

「よし……」

『ロイ。少なくとも三人の魔界貴族を殺せ。バビスチェは自分の聖域以外に、配下に使わせる劣化した聖域をいくつも持っているが、使えるのは一人に付きひとつだけ。三人殺せば、学園とトラビア王国を覆う聖域は消えるはず』

「トラビア王国……そういえば、トラビア王国は今、認識が変わる聖域に包まれてるんだよな」

『ああ。例えば、トラビア王国の友好国に対する認識を変えられれば、戦争に発展する可能性もある。恐ろしいのは、それに誰も気づかないということ……驚くくらい、エレノアたちも術中にハマっているからな。このまま放置すれば、トラビア王国は他国に戦争を仕掛ける可能性もある』

「あーもう……俺の役目は聖剣士の援護なのに、めちゃくちゃ動いてるじゃないか」

『今回はそんな役回りだな。とにかく、急げ』

「ああ!!」


 ロイは『万象眼』を発動させ、廊下を走り出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 アオイの意識は、明滅していた。


「ぅ……」

「起きて」

「…………」

「ほらぁ、起きて? ね?」

「…………ぅ」


 目を覚ますと、手足が完全に動かなかった。

 それだけじゃない。髪を結んでいた紐が外され、着ていた服も、下着も、何もかも脱がされ、生まれたままの姿で、フカフカなベッドの上にいた。


「男の子みたいな女の子……そそるわねぇ?」

「…………?」


 誰だろうか?

 綺麗な髪を揺らし、頭にはツノが生え、尻尾も生えている。

 舌をぺろりと出し、アオイに顔を近づけた。

 

「私はぁ……『愛の魔王』バビスチェ」

「…………ッ!?」


 アオイは、カッと目を開く。

 ようやく意識が完全に覚醒。だが、首から下が自分の身体ではないような違和感に包まれる。

 全く、手足が動かない。

 首だけ動かすと、自分が寝かされているのが大きなベッドで、一つのベッドに五人の女が寝転んでいるのが見えた。その内の一人が、雷聖剣イザナギを弄んでいる。


「き、さま……」

「ねぇ? 私の作り出した『愛の三重奏(ラヴトリヲ)』はどう? どんなに愛されない子でも愛され、互いを求めあい、触れ合うことができる禁断の聖域……あなたも、感じてるでしょう?」

「───ッ!!」


 バビスチェの手が、アオイの身体に触れる。

 

 ◇◇◇◇◇◇


『バビスチェ……!!』

「こいつが、愛の魔王……」


 ロイの『万象眼』が、バビスチェの顔を真正面から捕えた。

 アオイの視界が固定されたように動かないので、周囲の状況がわからない。ずっと下を見ていたのはわかったが、気を失ったのか接続が途切れたのだ。

 目が覚めると、バビスチェの顔があった。


『くそ、ここはどこだ!? バビスチェを殺す絶好の機会……!! ロイのことも、まだバレてはいない。愚かな魔界貴族め、デスゲイズという名をバビスチェに伝えていないようだ』

「でも、時間の問題……っ」

『ああ。急げ、探せ!!』


 ロイは走る。

 廊下を曲がり、階段を降り、階段を上り、廊下を走り───。


「…………!?」


 急停止。

 そして、ようやく気付いた。


「あ、あれ……?」


 ここは、どこなのか?

 階段を何度上り、何度降りたのか? 

 なぜ、延々と廊下が続いているのか?

 なぜ……アオイが柱に削った文字が、ロイの前にあるのか。


『───まさか』

「ね、ロイ」


 ふと、ロイの背後に……一人の少女がいた。


「やっと気づいた?」

「ッ!!」


 ロイは距離を取り、『狩人形態(ハンターフォーム)』に変身、弓を手に矢を番える。

 だが、少女はロイの隣をスタスタ歩く。


「四つめの聖域は、私が展開したの」


 少女の名は、タイガ。

 個人の能力は『虎代打(タイガーダイダ)』といい、ロイに変身した能力。

 だが……バビスチェが与えた『聖域』の力で、四つ目の聖域を展開していた。


「『上下左右(アベコベ)』……建物に展開できる聖域でね、一度展開すると、目的地には絶対に辿り着けない聖域なの。今、バビスチェ様はお楽しみ中~……なのでぇ、邪魔はダメ~」

「お前……」


 ビシビシと、ロイの殺気が濃厚になっていく。

 タイガは「わお」と言い、身体を震わせるようなポーズを取った。


「ふふ、あたしが少しだけ遊んであげる。おいで、ロイ……ああ、こうしよっか」


 すると、タイガの姿が変わり……『ロイ』となった。

 目の前に『八咫烏』が現れ、ロイに言う。


『おいで、ロイ。遊んであげる』

「……上等」


 ロイは、『ロイ』に矢を向けた。


「三分以内にケリ付けてやる……行くぞ!!」


 聖剣士を援護することのない、ロイの戦いが始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〇聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
【コミカライズはこちらから↓】
gbxhl0f6gx3vh373c00w9dfqacmr_v9i_l4_9d_2xq3.jpg

web原作はこちらから!
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

ニコニコ静画さんでも連載中。こちら↓から飛べます!
聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~


お読みいただき有難うございます!
月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
[一言] この場に他の聖剣士がきたら超厄介じゃん
[良い点] 更新ありがとうございます! [気になる点] アオイの貞操ピンチ!急げロイ!しかしだいぶ前からおもってましたが魔王聖域って呪○廻戦の領○展開みたい [一言] 最後の○分以内にケリ付けてやるっ…
2022/12/11 09:42 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ