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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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愛の支配①

「ね、ロイ。危ないことしちゃダメよ? 魔族はあたしとユノがやるから、あんたはしっかりサポートすること」

「ああ、わかった」

「ロイ、今度はすぐにわたしを呼んでね」

「うん、ありがとうな、ユノ」


 『ロイ』は、男子寮の談話室で、エレノアとユノの三人で話をしていた。

 男子寮に魔族が現れたのだ。今は、学園の関係者や聖剣騎士団が多く出入りし、周囲を警戒したり、魔族の痕跡を探っている。

 指揮はロセが取り、スヴァルトとララベルは、アオイの捜索をしていた。

 エレノアは言う。


「アオイ……魔界貴族と、繋がってたなんて」


 展開されている『聖域』は二つ。

 認識を変える『疑わしき隣人(アヤシキモノ)』と、感情を上下させる『虎色桃色魅惑色(ピンキーミスト)』だ。

 現在、ロイの姿が魔族に見え、アオイに対する信頼が下降し、不信感が上昇している状態だ。恐ろしいのは、『この現状に気付いているのがロイとアオイだけ』ということである。

 『ロイ』は、エレノアの頭を撫で、手を握る。


「心配すんな。何があろうと、俺がいる。お前たちは、俺が守る」

「ロイ……」

「ユノも、心配するな」

「うん。ロイ、守ってね」


 ユノがロイの腕を取り、猫のように目を細めた。


 ◇◇◇◇◇


 聖剣レジェンディア学園の本館。

 一番高い場所にある風見鶏の上に、魔界貴族公爵『薔薇騎士』アンジェリーナはいた。

 純白の騎士服とマントに身を包んだ、薄水色のロングヘアが風になびいている。

 アンジェリーナは、両手で複雑な印を結んだ。


「『魔族聖域(アビス)』展開」


 アンジェリーナを中心に、学園内に広がる力場。

 誰にも気付かれない。教師も、聖剣士も、七聖剣士たちも気付かない『力』が広がっていく。

 これは、そういう聖域。

 見えない聖域が展開され、アンジェリーナはつぶやく。


「『愛なる渇き(トリシュナー)』……フフフっ、さぁ人間たち……その《愛》を、欲望のままに解放しろ」


 三つ目の聖域が展開され、学園を包み込んだ。


 ◇◇◇◇◇


 エルサは、男子寮にある空き部屋に、スキュバ、といた。


「アンジェリーナ、始めたわね」

「ふふっ、感じてきたぁ……濃厚な、《愛》の香り。あぁん……遊びたいぃ」

「だめだよ。タイガもいるんだし、遊ぶならみんなで」

「もう、いいじゃない別にぃ」


 現在、タイガは『ロイ』の姿で、ユノとエレノアを籠絡している最中だ。

 エルサは言う。


「ふふっ……バビスチェ様の『手番』、怖いくらいいつも通りの展開ねぇ」


 直接的な攻撃ではない。

 惑わし、狂わせ、崩壊させる。戦争になった国もあるし、勝手に内部崩壊した国もある。バビスチェの『手番』で崩壊しなかった国は、ただの一度もない。

 スキュバは言う。


「ね、最初は八咫烏って子が目的だったのよねぇ? その子、風変わりな聖剣士ってことでいいの?」

「みたいね。変わり者の聖剣鍛冶師が作った弓で、七聖剣士をサポートしてたみたい。でも……姿を隠す理由がわからないわね」


 エルサが首を傾げると、シェンフーが言う。


「知ってる。男の子って、カッコいいのに憧れるんだよ。だからカッコいい姿で戦ってたんだ!」

「そんなわけないでしょう。うーん……」

「ね、肝心の八咫烏は?」


 スキュバが言うと、エルサが目を閉じた。


王都郊外の森(・・・・・・)逃げた雷聖剣の子(・・・・・・・・)と一緒にいるわ(・・・・・・・)


 エルサが感じたのは、ロイが奪った『気配』を撃ち込んだリス二匹のモノ。

 現在、二人は───王都の中で、魔界貴族を捜索している。

 

「居場所は、聖域内に入ればわかるわ。今は計画通りにやりましょう」

「そうね」

「はーい」


 この間違いが、ロイたちにとってはありがたかった。


 ◇◇◇◇◇


 ロイ、アオイの二人は、宿屋にいた。

 

「闇雲に出歩くより、今ある情報から推測して、そこを重点的に探してみよう」


 ロイがそう言うと、デスゲイズが言う。


『まず、聖域の展開から考えて、王都内に魔界貴族が最低三人はいる。一つ目の聖域を展開した者、ロイに化けた者、二つめの聖域を展開した者だ。クソ……ロイに化けたヤツは、どこまでロイになりきっている? もしロイの記憶などもコピーできるのなら非常にまずい。我輩のことを悟られる可能性がある』

「ふむ……王都内は確実。なら、詳細な場所だ」


 アオイが頷く。

 シャワーから出て、薄手のシャツ一枚だけの姿だ。長い黒髪も結んでおらず、サラシも巻いていないので、シャツの胸部が盛り上がっている……しかも、下着を付けていないので、シャツ越しに小さな突起の位置が丸わかりだ。

 ロイはアオイを見ずに言う。


「え、ええと……一人は、男子寮にいるよな。俺に化けてるし」

『ああ。いつまで『ロイ』の姿でいるかわからんがな』

「デスゲイズ殿……そなたは、愛の魔王について知っていることはないのか?」

『……わからん。バビスチェは、我輩を恐れていたのか、あまり話したことはない。眷属の入れ替わりも多かったような気が……むぅ』


 デスゲイズは唸った。

 ロイとアオイも考え込み……ロイが言う。


「……男子寮。そこにいる『俺』を捕えて、他の魔界貴族の居場所を吐かせるとか」

『厳しいな。男子寮にいる『ロイ』は、我々にとってバビスチェに近づく手掛かりだ。恐らくだが、寮には大量の罠が仕掛けられているだろうな』

「むぅ……」

「一度寮に戻った時に聞いたが、今日は休校になったらしい。男子寮に魔界貴族が入り込んだから当然だろうな」

「じゃあ、生徒たちは」

「寮で待機だ。七聖剣士のロセ殿が指揮を執り、男子寮で魔族の痕跡を探している」

「う~ん……」

「どうする、ロイ殿」

「……動けるのは、俺とお前だけ。しかも俺は聖域の影響で外見が魔族に見えて、お前は魔族を庇う裏切り者扱い……下手に動けない状況だ」

「う、うむ」

『……直接手を出さず、ここまでやりにくくするとはな。おのれバビスチェめ……』


 ロイは頷く。


「だったら……あえて目立つのはどうだ?」

「何?」

『何? ロイ、何を考えている』

「向こうは、俺たちが慎重に動くと考えてるはず……だったら逆に、派手に動いて混乱させるんだ。もしかしたら、何か動きがあるかもしれない」

『……危険だぞ』

「同感だ。ロイ殿、さすがにそれは……」

「大丈夫。獲物から隠れるのも、逃げるのも得意だからな」


 ロイは自信満々に頷き、アオイとデスゲイズに作戦を説明した。

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