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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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これからすべきこと

 ロイとアオイは、未だに郊外の森にいた。


「やるべきことはいくつかある。まず、『聖域』を展開している魔族を倒すこと。俺の偽物を倒すこと。『愛の魔王』を探すことだ」

「ふむ……魔王を倒すのか?」

「ああ。『聖域』を消して、七聖剣士たちを解放すれば、愛の魔王と戦えるはずだ」

「魔王を、討つのか……」

「できるさ。嘆きの魔王は、聖剣士五人で倒したんだからな」


 アオイは「確かに」と頷いた。

 すると、デスゲイズは言う。


『バビスチェは狡猾だぞ。恐らく、配下の魔族が全て倒されても姿を見せることはない。だが……間違いなく、王都のどこかにはいるはずだ。『聖域』を展開するために、魔族に直接力の供給をしているはずだからな』

「なら、配下を全員倒して引きずり出す。出て来なくても、何かしら反応はあるはずだ」

「…………ロイ殿」

「ん?」

「先ほどから気になっていたが、誰と会話しているのだ?」

「あー……デスゲイズ、もういいだろ? 今、動けるのは俺とアオイだけだし」

『……やむを得んな』


 アオイに頼み、血を一滴デスゲイズへ垂らす。すると、デスゲイズの声がアオイに聞こえるようになった。


『お前にも呪いをかけた。我輩とロイのことを喋ろうとすると、声が出なくなる呪いだ』

「なんと……ふ、だが安心しろ。拙者も秘密を抱えているからな。お互い様というわけだ」

『フン。まあいい……』


 こうして、デスゲイズとアオイが会話できるようになった。


 ◇◇◇◇◇◇


『まず、状況を整理する』


 デスゲイズが言う。

 現在、トラビア王国全体に、『認識を変える、意識を変える』聖域が展開されている。そしてさらに『感情を増減させる』聖域も展開……人間関係が悲惨なことになるような状態だ。

 わかっていることは、魔界貴族が化けた偽の『ロイ』が、エレノアとユノに近づいていること。感情が増減している今、偽ロイが何かをすればきっと、取り返しのつかないことになる。

 そして、アオイ。

 アオイは、魔族を寮内に手引きした裏切り者、という認識だ。


「な、何? ま、待て、拙者は逃げただけで」

『常に最悪の事態を想定しておけ。それ以下にならなければ、まだ気分的にいい』

「む、むぅ……」


 アオイの捜索も行われているだろう。

 同時に、認識が変化し、魔族のような外見となったロイのこともだ。

 一緒に行動をしたら、間違いなく『敵』とみなされる。


「かなりヤバい状況だよな……直接戦闘する方が楽だと思えるよ」

「同感だ」

『とりあえず、城下町で情報を探れ。と言いたいが……すでに展開されている『聖域』に踏み込むと、お前とアオイの位置はすぐにバレる。本当に厄介───……』

「くそ……どうすればいいんだ」

「くっ、気配を探知されないように動く……のは、無理か」

『くくく、話は最後まで聞け。ロイ……お前に与えた『強欲(グリード)』の力を忘れたのか?』

「え?」


 ロイは数秒考え、「あ……」と何かに気付き、ニヤッと笑った。

 そして、『暗殺形態(アサシンフォーム)』に変身し、短弓を展開。


「大罪権能『強欲(グリード)』装填」

「ろ、ロイ殿? な、何を……? なっ!?」


 ロイは、弓をアオイに向けた。

 警戒するアオイだが、ロイはアオイが剣を抜く前に矢を放つ。

 放たれた矢はアオイの胸に刺さる。


「っぐ……? あ、あれ? い、痛くない……」


 それどころか、矢が消えた。

 矢が消え、ロイの元に矢が戻る。

 ロイは同じように、自分にも矢を刺した。刺さった矢がロイの手元に戻り、二本の矢を手元で弄ぶ。


「アオイ。俺とお前から『気配』を奪った。この矢に、俺とお前の『気配』が込められている……こいつを、こうする!!」


 ロイは、二本の矢を森の中へ。

 森にいた番のリスに矢が命中すると、驚いたリスは森に消えた。


「よし。これで城下町に入っても、俺とお前の『気配』が探られることはない」


 強欲の権能、『強奪(スティール)』で、ロイとアオイの気配を奪った。

 それだけじゃない。奪った物を与える『譲渡(ギヴユー)』の力で、森のリスに打ち込んだ。

 奪う力。奪ったものはロイのモノ。それをどうするかはロイの自由。それこそ『強欲』だ。


「姿は見られるけど、気配はない。王都に侵入してもそう簡単にはバレないだろう。アオイ……城下町のどこでもいいから、安宿を手配してくれ。そこを拠点にして、魔界貴族を捜索する」

「わかった。それにしても、恐ろしいな……誰も気づいていない。愛の魔王の手番がすでに始まり、王都が危機に瀕しているなど……」

『これがバビスチェのやり方だ。気を付けろよ、二人とも』


 ロイたちは、ようやく移動を開始。

 トラビア王国の王都に潜入した。


 ◇◇◇◇◇◇


 アオイが先行し、王都の外れにある宿を手配。アオイだけチェックインし、ロイは窓から部屋に入る。

 ようやく落ち着き、アオイはため息を吐いた。


「疲れたな……」

「だな……なぁ俺、魔族に見えるんだよな」

「拙者には何とも見えんが……ふぅ」


 アオイは制服の上着を脱ぐ。


「湯を浴びる。ロイ殿も、今日は休むといい」

「ああ。って!?」


 この部屋はシャワー付きだ。

 アオイは制服を脱ぎ、シャツを脱ぎ、胸を押さえていたサラシを外し、胸を露わにした。


「お、おま!? なにしてんだ!?」

「湯を浴びると言っただろうに」

「い、いや……ここで脱ぐなよ!?」

「かまわん。それに、ロイ殿は拙者が女だと知っているだろう?」

「え、ええぇ?」


 初めてアオイが女だと知った時も、浴場だった。

 あの時は、アオイは「女」であることがバレるのを恐れ、動揺していた。

 そう……性別を知られた今、「女」であることがバレたロイに遠慮することがない。裸を見られて恥ずかしいのではなく、性別がバレそうになり慌てていたのだ。

 アオイは下も脱ぎ、手拭いを肩にかけロイの前へ。


「お先に失礼するぞ」

「こ、こっち来なくていいし言わなくていい!!」

「うむ」


 そう言い、アオイはシャワー室へ消えた。

 ロイはベッドへ身を投げ出し───……ようやく気付いた。


「あれ? そういや部屋……一つだけ?」


 こうしてロイは、アオイと同じ部屋で一晩過ごすこととなった。

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原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
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