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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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『ロイ』

 ロイが腰かけていた岩の隣に、アオイが座った。


「まず、今の状況を整理する。ロイ殿……そなたの身に何があったか、説明してくれ」

「……わかった」


 ロイは、説明した。

 ショッピングモールで暴れた魔界貴族を相手にした後、首筋に違和感を感じたこと。そして、夜ベッドに入ってから、過去のティラユール家にいたこと。

 苛烈な訓練の途中、世界が歪み、起床できたこと。


「たぶん、アオイが起こしてくれたから『夢』から覚めた」

「敵の狙いは、ロイ殿を眠らせ、別の魔界貴族が『ロイ』殿に成り代わることか。だがなぜ、ロイ殿なのだ?」

「たぶん……俺が『八咫烏』だから。これまでの戦い、八咫烏は目立ち過ぎた……魔王に目を付けられたからだと思う」


 ロイの予想通りだった。

 デスゲイズは言う。


『バビスチェのやり方は、パレットアイズやトリステッツァとは違う。人間の中に潜り込み、内部から徐々に、徐々にジワジワ攻める。直接的な戦いではなく、内部崩壊を起こさせるように、人間同士で争わせるやり方だ。かつて、このやり方でいくつかの国が内乱を起こし、戦争となり滅んだ……姿が見えない分、トリステッツァやパレットアイズよりも厄介だ』

「…………くそ」

「これからどうする?」

「まず、俺を魔界貴族に見せるようにしている『魔族聖域(デミ・アビス)』を解除する。どこかで魔界貴族が聖域を展開しているはずだし、探して始末する」

「……でみ、あびす?」

「あー……」


 ロイは聖域の説明をする。

 ロイが魔界貴族に見えるような原因を知り、アオイは唸る。


「なるほど……その術者が、トラビア王国に」

「いるはずだ」

『正直、かなり厳しいぞ。我輩にも探知できないほど、いつの間にか展開されていた聖域だ。ルードスよりも聖域の規模が広く、精巧だ』


 それでも、ロイは諦めない。

 立ち上がり、トラビア王国を見る。


「今回は、聖剣士たちの援護どころか、敵になるかもな……」

「安心しろ。拙者が付いているではないか」

「……うん。ありがとう、アオイ」


 アオイはにっこり笑い、立ち上がった。


「とりあえず、拙者は一度戻る。魔界貴族を取り逃がしたことにしよう」

「ああ……」

「心配するな。ロイ殿のことは、決して口外しない。ロイ殿……辛いと思うが、今は王国に戻らない方がいいと思うぞ」

「…………」


 アオイは手を振り、トラビア王国へ戻って行った。


 ◇◇◇◇◇


 男子学生寮では、『ロイ』とオルカがスヴァルトから質問を受けていた。


「で、どんな野郎だったんだ?」

「え、えっと……変な奴でした。牙が生えてて、ツノも生えてて」

「身長は二メートルくらいかな。俺が見た感じ、アオイと並んで歩いてました。アオイも気付かなかったのか、あの魔族に何かされたのか……先輩、アオイだけであいつを追ったんですか?」

「……ああ。オイお前、まさか」

「……可能性の話です」


 『ロイ』は、思ったことをスヴァルトに話す。

 すると、教師が数名に、ロセ、ララベル、エレノア、ユノが来た。


「ロイ!!」

「ちょっと、無事なの!?」

「ああ、俺は無事」


 エレノアとユノが心配して駈け寄って来る。ロイは、ユノの頭を優しく撫でた。


「悪いな、心配かけて」

「ううん、ロイが無事でよかった」

「ホントにそうよ。さすがに、男子寮じゃね……」


 戦えないし。と、エレノアはボソッと言う。

 ロセは、オルカに質問する。


「オルカくん。きみが見たことを、そのまま教えて」

「は、はい。えーっと……朝飯を食ってたら、アオイがバケモノと一緒に入ってきたんです。オレが魔族だーって叫ぶと、アオイすっごく驚いてて……」

「……? アオイくんが、驚いてたの?」

「はい。すぐ隣にいた魔族のこと、見えてなかったように感じました」

「んー……」


 すると、『ロイ』が挙手。


「恐らくですけど、アオイはその魔族に、何かされたのかと……俺も見ましたけど、オルカの声に全然反応していないような感じでした。たぶん……魔族に、何かされたのかと」

「むぅ~……七聖剣士のアオイくんがねぇ」

「はいはいはい。考えるのは後よ。ロセ、今は学園に魔族が入り込んだこと、何とかしないと」


 ララベルが言うと、ロセは「そうね」と言う。

 

「ショッピングモールにもいきなり魔族が現れたみたいだし、もしかしたらどこかに、魔族の抜け道があるのかも……先生がた、一度情報を共有しましょう。集められる先生たちを集めてください」


 七聖剣士としての権限で教師に命令する。

 スヴァルトは首を傾げた。


「それにしてもお前、やるじゃねぇか」

「え?」

「そんな木刀で魔族に立ち向かうとはな」

「ええと……身体が勝手に動きまして」

「はは、気に入ったぜ」


 スヴァルトは、『ロイ』の肩をパシッと叩いた。


「とりあえず、周囲の警戒はオレがする。ここにいる野次馬は全員、さっさと学園に行きやがれ!!」


 スヴァルトが言うと、集まっていた野次馬の生徒たちが散るように学園へ。

 『ロイ』は、エレノアとユノに言う。


「じゃ、昼にな」

「うん」

「ええ」

「……また、後で」


 『ロイ』は笑い、自分の部屋へと戻るのだった。


 ◇◇◇◇◇


 一方、本物のロイは、未だに郊外の森にいた。


「あ、そういえばデスゲイズ、新しい権能くれるんだろ? 早くくれよ」

『……正直、あげたくない。あげたくなくなった……でも、仕方ない』

「なに拗ねてるんだよ」

『やまかしい。クソ、あの男女め……ほれ、『強欲(グリード)』の権能だ』


 ポイっと投げ捨てるように、ロイに新たな権能が備わった。

 大罪権能『強欲(グリード)』を得たことで、コートの装飾、仮面の形が変わる。

 コートは薄手になり、右手だけに籠手が装着される。籠手には変形機構が備わり、折り畳み式の『短弓』が装備された。『色欲』の短弓よりも小さく、スタイリッシュな形状だ。

 そして、膝下までのブーツ、フード、仮面が黒くなり、目元の部分に赤いレンズが付いた。

 

「わぁ……今までで、一番軽い」


 防御力が大幅にダウンした。

 だが、まるで何も着ていないかのように軽い。

 ロイは軽く跳躍し、着地。驚いたことに、足音がほぼしない。

 短弓を展開し、腰の小さな矢筒から矢を装填。


「……この権能は」

『ククク、これは面白い……ロイ、あそこの実を狙え』

「あ、ああ」


 五十メートルほど先にある木に、小さな実がなっていた。

 赤い実を狙い、矢を放つと……矢は、実に命中。

 そのまま木から吹き飛び、地面に落ちる───ことはなかった。

 なんと、実が消え、ロイの手元に現れたのだ。


『ククク、これが『強欲(グリード)』の権能……『強奪(スティール)』だ。お前が矢で射抜いたモノから、何かを『奪う』力だ。奪うモノは、お前が自由に選べる』

「奪う、力……」

『そう。そしてコートと仮面……防御を犠牲にした。着地の音を消し、闇に同化する。『強奪の矢(スティールショット)』で奪い、音もなく対象を始末する。名付けて……『暗殺形態(アサシンフォーム)』だ』

「……また、嫌な名前だな」

『何ィ!?』

「でも、いいな。音もなく狙撃し、奪い、殺す……今の俺にピッタリだ」


 ロイは、トラビア王国を見た。


「待ってろよ……俺が始末してやるからな」


 ロイは、自分に擬態した魔界貴族を、必ず殺すと誓い歩きだした。

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原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~
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― 新着の感想 ―
[気になる点] エレノアはともかくユノには気づいてほしい
2022/12/04 09:36 退会済み
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