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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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最悪な展開

「ロイ殿、きみは一体何だ? なぜ魔界貴族に狙われた?」

「あ、いや……その」

 

 ロイの部屋で、ロイはアオイに詰められていた。

 だが、答えようがない。なのでロイは誤魔化そうとするが。


「無駄だ。拙者に誤魔化しは通じないぞ。生体電流の揺らぎで真偽を判明できるからな」

「うぐ……」

「狙われた心当たりが、あるんだな?」

「…………」

「それと、今……何に話しかけていた? その弓、何なのだ?」


 デスゲイズを木刀ではなく、弓形態のまま置いておいたのがあだとなった。

 ロイが揺れているのを、アオイの眼が捕えている。噓、ごまかしが通じない相手に、ロイはどうすればいいのか迷う。

 すると、デスゲイズが言う。


『ロイ、こいつを『色欲』で奴隷化しろ』

「っ!?」

『それしかない。エレノア、ユノに我輩の正体がバレている以上、これ以上秘密を知られるわけにはいかない。ロイ、やれ』

「……っ」


 できるわけがない。

 ロイは首を振る。デスゲイズにもそれが伝わったのか、ため息を吐いた。

 そして、ロイは言う。


「アオイ。俺は……俺の正体は、八咫烏だ」

「…………なるほどな。七聖剣士を援護してきた謎の弓士。その正体がロイ殿だったとは」

「正体を明かせない理由がある。頼む、俺のことは誰にも言わないでくれ」

「いいだろう。まぁ、そんな予感はしていた」


 アオイはため息を吐く。

 そして、これまでの状況を説明してくれた。


「あの魔界貴族にロイ殿が眠らされている間、学園には偽のロイ殿が通っている。間違いなく、魔界貴族の能力であろう」

「くそ……っ」

「エレノア殿、ユノ殿は……ロイ殿と、かなり親密な様子だ。早く引き剥がさないと、厄介なことになるかもしれん」

「ああ。じゃあ、行こう!!」


 今は深夜。だが……偽のロイは、この部屋にいない。

 スキュバを追い払ったことで、偽ロイが警戒したのだろう。


「とりあえず、今日は休もう。明日、生徒会長や仲間たちに報告する」

「ああ……すまない」

「構わない。だが、拙者はありのままを報告するぞ。その結果、ロイ殿の正体が露見することになってもな」

「…………」

「すまんな。ロイ殿のためだけに、危険は冒せん」

 

 そう言い、アオイは部屋を出て行った。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日。

 ロイは制服に着替え、やや緊張した面持ちで部屋を出た。すると、アオイがドアの前にいた。


「おはよう、ロイ殿」

「あ、ああ」

「では、朝食へ」


 アオイが誘いに来るのは、初めてだった。

 二人で食堂へ向かうと、すでにオルカがいた。

 オルカは手を上げようとして───ポロリと、咥えていたパンを落とした。


「な、な……」

「む、どうしたオルカ殿?」

「なんで、なんでそこに『魔族』がいるんだよぉ!?」

「「!?」」


 ロイとアオイは同時に振り返る。

 魔族。

 つまり、魔界貴族。

 オルカの前で変身はできない。デスゲイズを木刀形態にして構え、アオイに言う。


「どこだ、アオイ!!」

「くっ……昨日の連中か。ロイ殿、気を付けよ!!」

「な、何言ってんだよ!? アオイ、おまえ……!?」


 オルカが、剣をロイへ向けた(・・・・・・・・)

 ロイは「え?」と首を傾げ、アオイも信じられない物を見るようにオルカを見る。


「な、なんの冗談だ? お、おい……オルカ?」

「くそ、こういう敵かよ。悪いな、オレの知り合いに魔族なんていねぇよ。アオイ、そいつから離れろ!! そいつ、妙なこと言ってやがるぞ!!」

「お、オルカ殿……?」

「いいところに来た!! 頼むぜ(・・・)!! ロイ(・・)!!」


 オルカが叫ぶと、ドアの前にいた『ロイ』が、木刀を振るった瞬間だった。

 ロイは、『ロイ』の木刀を木刀で受ける。


「オルカ、なんだこの状況!? なんでここに、魔族がいるんだよ(・・・・・・・・)!!」

「オレが知るか!! 誰か!! 先輩方でも誰でもいい!! ここに魔族がいる!!」

「な、おい!? オルカ、ふざけんな。俺のことわかんないのかよ!?」


 ロイが叫ぶ。

 意味不明な状況に、ロイはおかしくなりそうだった。

 そして、目の前にいる『ロイ』が言う。


「ふふっ……今、みんなの眼にあなたは『魔族』として映ってる。私が本物の『ロイ』……さぁ八咫烏、遊びましょうか」

「!!」


 木剣が弾かれ、ロイは距離を取る。

 すると、上級生とスヴァルトが食堂に飛び込んで来た。

 スヴァルトは上半身裸で、手には闇聖剣アンダンテがある。


「いい度胸じゃねぇか。こんな朝っぱらから、乗り込んでくるなんてよぉ?」

「ち、ちが……」

「?? ??? な、なんだ、この状況は?? ど、どういう……」


 アオイは混乱している。

 すると、デスゲイズが叫んだ。


『逃げろロイ!! この状況ではどうしようもないぞ!!』

「くっ……『黒装(トランス)』!!」


 ロイは変身し、窓を破って男子寮から逃げ出した。


「待ちやがれ!!」

「先輩、ここは拙者が追います」

「あぁ!?」

「拙者の方が速い。必ず追いつき、連絡を入れます故」

「……チッ」


 アオイも飛び出し、八咫烏を……ロイを追った。


 ◇◇◇◇◇◇


 王国郊外、ロイが狩りをする森まで来て、ようやく変身を解いた。

 ロイは、いつも休憩している岩に座り、頭を抱える。


「何だってんだよ、意味わからねぇ……!!」

『迂闊だった。くそ……バビスチェめ!! 『夢魔』が破られた時の保険を用意していたようだな』

「デスゲイズ、どういう……」

『見ろ』


 森から見えたのは、王国を守る大きく高い壁。

 デスゲイズに言われ、仮面だけを具現化し、仮面越しに見た。

 すると、ふわふわした魔力が王国を包み込んでいるのが見えた。


「な、なんだあれ……」

『あれは聖域だ。ただし、バビスチェのではない。あいつに従う魔界貴族の『聖域』だな。覚えているか? トリステッツァの部下で、聖域を展開した魔族がいたことを』

「ああ。『遊戯』のルードスだっけ? 確か……デミ・アビス」

『そうだ。今回もそれと同じ。バビスチェの部下である魔界貴族が作り出した『魔族聖域(デミ・アビス)』が、トラビア王国を覆っている。恐らく、我輩たちが夢に囚われていた間に、展開したのだろう』

「じゃあ、オルカの反応が変だったのは」

『恐らく、お前のことが『ロイ』だと認識できなかったのだろうな。認識を変える聖域か……なかなか厄介だ。それに、向こうには『ロイ』もいる。今、お前が出ても偽物だと判断されるだろうな。さらに、七聖剣士たちもお前を敵と認識する……最悪だな。お前が守り、援護するべき聖剣士が、お前の敵となってしまった……』

「……っ」


 ロイは歯ぎしりする。

 このままでは、『ロイ』にエレノアたちが、七聖剣士たちがやられる。


「やるしかない……」

『……』

「俺が一人で、魔界貴族を……『愛の魔王』の眷属を倒す」

『それしかないな。だが、できるか?』

「やるんだよ。言わせるな」

『ふっ……ならいい、そのための『力』をくれてやる。ロイ……認めよう、これがお前にやる新しい権能、『強欲(グリード)』の権能「見つけたぞ、ロイ殿」


 と───ロイの前に現れたのは、アオイだった。

 ロイは瞬間的に身構えてしまう。


『こ、このタイミングで!? くぅぅ、せっかくカッコよく権能を渡そうと……おのれ!! おいロイ、こいつを奴隷にしろ!! 許せん!!』

「お前ちょっと黙ってろ。アオイ……お前は」

「安心しろ。拙者にはロイ殿がきちんと認識できる。だが……他の連中は、違うようだ」

「…………」

「このままでは帰れんな。どうする、ロイ殿」

「決まってる。俺に化けてる魔界貴族と、聖域を展開した魔界貴族を倒す」

「……聖剣士たちと、敵対する可能性もある」

「わかってる。でも、やる」

「……フッ、いいだろう。ロイ殿、拙者も手を貸そう」

「え」


 こうして、ロイとアオイのコンビによる、魔界貴族討伐が始まった。

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― 新着の感想 ―
こういうのイラ値マックス
[気になる点] 正体を伏せてくれ→「いいだろう。まぁ、そんな予感はしていた」 数行後、「ロイ殿の正体が露見することになってもな」 「すまんな。ロイ殿のためだけに、危険は冒せん」 ????
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