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聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~  作者: さとう
第四章 胸いっぱいの愛を。愛の魔王バビスチェと君の奇跡の愛
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魔界貴族侯爵『夢魔』のスキュバ②/ロイの夢

 ロイは、授業を終えてカバンに教科書をしまう。

 オルカが、ロイの肩をパシッと叩いた。


「な、ショッピングモールに行こうぜ。『八咫烏フェア』もあと少しで終わっちまうし」

「あー……悪い。今日は用事あって」

「お、なんだ? ユノちゃんか? エレノアちゃんか?」

「さぁな。じゃ、また明日」


 ロイが教室から出ると、ユノとエレノアが待っていた。


「ロイ」

「やっほ、ロイ。じゃ、行くわよ」

「ああ。城下町にある武器屋だっけ」

「うん。聖剣を磨く油、ロセ先輩おススメのお店なの」


 今日はショッピングモールではなく、城下町へ。

 聖剣は武器であり相棒だ。傷が付くことはないが、汚れはする。

 聖剣用の油を塗り、綺麗に磨くことは、聖剣士の義務でもあった。

 さっそく、三人は城下町へ。


「ね、せっかくだし、外でご飯食べよっか」

「うん。そのあとはお風呂行く」

「……まさか、あそこ? ね、ユノ、寮にもお風呂あるでしょ」

「ロイと一緒がいい」

「あ、あのねぇ……ちょっと、ロイからも言ってよ」


 と、ロイは苦笑して言う。


「あー……まぁ、俺はいいぞ」

「え」

「ほんと?」

「ああ。その、ちゃんとタオル巻いて、身体隠すなら」

「ちょ、え、な、何言ってんのあんた!?」

「いや……その、ユノの好意は嬉しいし、男としてちゃんと応えたい」

「こ、応えるって……」

「え、エレノアはどうだ? その……俺は、エレノアがいると嬉しい」

「ッ!!」


 エレノアが真っ赤になる。

 何度か裸を見られたことはあるが、それとは違う。

 明確に、ロイから誘われている。やましいことをするつもりはないし、受け入れるつもりも『まだ』ないが……こう言われると、断りづらい。

 ユノは、嬉しそうにロイの腕を取った。


「えへへ。ロイと一緒」

「ああ。俺も嬉しいよ」

「……うん」


 ネコのように腕にじゃれつくユノ。 

 対照的に、怯えた子犬のように縮こまってしまうエレノア。

 二人と一緒に、『ロイ』は城下町の武器屋へ向かった。


 ◇◇◇◇◇◇


 買い物を終え、三人はボロ湯屋へ。

 ロイが先に入り、服を脱いで浴場へ。しばらく待つと、タオルを巻いたエレノアとユノが入って来た。

 身体を洗い、さっそく湯船へ。

 ユノは迷わずロイの隣へ。エレノアも、少し離れてロイの隣に来た。


「あ~……いい湯だな」

「うん。ね、ロイ……くっついていい?」

「ああ、いいぞ」

「ちょ、ちょっと……ロイ、あんたそんな積極的だったっけ」

「受け入れることにしただけだ。その、俺も男だしな……こういう状況、嬉しい」

「ば、馬鹿……」

「えへへ」


 ユノは、ロイの腕にしがみつく。そして、頭を肩にコテンと乗せた。

 ロイは、そんなユノの頭を撫でてやる。


「ん……」

「ネコみたいだな、ユノ」

「ねこ?」

「ああ。人懐っこくて、甘えん坊だ……可愛いな」

「!!」


 ユノがハッとなり、ロイを見る。

 ロイは頷き、ユノの頭をそっと撫でた。


「ロイ……」

「お前も、いろいろ辛いことあるだろうけど、俺でよかったらいつでも甘えていいぞ」

「……うん。ロイ、ありがとう」

「うん。エレノア、お前も」

「……うん。なんかロイ、急に大人っぽくなったわね。驚いたかも」

「そうか? 俺は、俺のままだけどな」

「……ロイ、甘えていい?」


 ユノがロイの腕に甘えてくる。ロイはそれを受け入れた。

 エレノアも、ロイとの距離を縮め、すぐ隣に来た。 

 ロイは、エレノアの手をそっと握る。エレノアは一瞬だけ驚いたが、すぐに微笑み、ロイの手を握る。

 

「二人とも……俺にできることがあれば言ってくれよ。俺は、お前たちのためになんでもするからさ」

「「……うん」」


 『ロイ』は、二人を甘やかすように微笑んだ。


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


 ◇◇◇◇◇◇


「絶対におかしい」


 ロイ(・・)は、ティラユール家の自室で頭を抱えていた。

 縮んだ身長、手元にないデスゲイズ、デスゲイズに取り込まれる前の愛用の弓。

 今の年齢は、十四歳程度だ。

 

「違う」


 今までのが、夢。

 そんなはずがない。

 デスゲイズを手にして、これまで何度も聖剣士たちを援護してきた。

 ロイ自身が、魔界貴族と戦ったことも、八咫烏としての姿も、魔王パレットアイズ、魔王トリステッツァとの戦いも、全て夢……そんなはずが、ない。

 ロイは立ち上がり、自分の顔を思いきり殴った。


「っぐ、あ……起きろ、起きろ、起きろ!! 起きろ、ロイ!! これは敵の攻撃。魔界貴族の攻撃だ!!」


 自分に言い聞かせ、荒ぶる呼吸を整える。

 そして、大きく息を吐き……冷静に考えてみた。


「覚えているのは、昨日」


 魔界貴族の襲撃。

 まず、あれがおかしい。いくら魔王や魔界貴族でも、たった一人で、あんな暴れ方をするだろうか? まるで倒されるためだけに出てきたような。


「あいつも、操られていた? 『色欲』の力みたいに……?」


 可能性はゼロではない。

 そして、敵の目的。

 

「……今、この状況。あの時感じた違和感」


 ロイは首を押さえる。

 戦いが終わり、変身を解いたあと……首に、妙な違和感を感じた。

 そして、寮に戻っていつも通り睡眠。その後目が覚めると、過去にいた。


「………………つまり」


 狙いは、ロイ。

 ロイは青くなり、一つの可能性が頭をよぎった。


『気を付けろ。バビスチェは狡猾だぞ』


 デスゲイズの言葉。

 そして、ロイの口から出た。


「まさか……狙いは、『八咫烏』」


 目立ちすぎた。

 考えれば当然である。

 これまで、人間は魔王の侵攻を食い止めるのに精いっぱい。魔界貴族が現れても、聖剣士たちは退けるのが限界であり、七聖剣士たちですら苦戦するような魔族たちが多かった。

 だが……八咫烏が、ロイがデスゲイズを手にして変わった。

 魔界貴族たちが大量に葬られ、魔王パレットアイズが深手を負い、トリステッツァが消滅した。

 狡猾なバビスチェは『八咫烏』こそ真の敵、そう考えても無理はない。


「ま、まずい」


 今、外はどうなっているのか?

 ロイは、まだ寝ているのか? 寝たまま起きず、医務室に運ばれたのか? それとも、未だに夜で朝を迎えていないのか?

 考えればいくらでも可能性がある。

 だが、やるべきことは一つしかない。


「ここから出ないと。俺のことを深く調べられたら、デスゲイズのことがバレる。そうなったら……おしまいだ!!」


 ロイが立ち上がると、部屋のドアがノックされた。


『ロイ様、稽古の時間です』

「くっ……そんな場合じゃないってのに」


 ロイは決めた。

 ここは『夢』の世界と過程。全てまやかし。

 なら───……好きにやらせてもらおうではないか。


「……今、行く」


 そう言い、剣ではなく、愛用の『弓』を手に取った。

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〇聖剣が最強の世界で、少年は弓に愛される~封印された魔王がくれた力で聖剣士たちを援護します~
原作:さとう
漫画: 貞清カズヒコ
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ニコニコ静画さんでも連載中。こちら↓から飛べます!
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