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初授業

 ユノと仲良くなった翌日。

 ロイは、学生寮の自室で起き、部屋にある小さな水場で顔を洗う。

 鏡を見ると、ややクセッ毛な髪が今日もピンピンと跳ねていた。

 腹が減ったので、着替えて食堂へ。

 食堂はすでに起床し制服を着た男子生徒であふれていた。朝食はセットメニュー形式だ。パンにスープ、サラダに焼いたベーコン、目玉焼きと、ロイにとってはご馳走が並ぶ。

 これでは足りないと、地下ショッピングモールで朝食を取る生徒もいるようだが、地下の飲食店は有料なので、お金に余裕のある生徒しか行かない。

 ロイは、朝食のトレイを受け取って適当な席へ。すると、オルカが前に座った。


「よう、ロイ」

「おはよう、オルカ」


 二人はさっそく朝食を食べる。

 塩の利いたベーコンはパンによく合い、スープも塩が利いて美味かった。


「なんかしょっぱいな」

「そうか? 俺は美味いけど」

「んー……甘いモン食いたいぜ。っと、それよりさ、新入生の歓迎パーティーの話、聞いたか?」

「歓迎パーティー?」

「ああ。毎年恒例の、新入生対象のパーティーだとよ。パーティー会場を貸し切ってやるみたいだぜ。まぁ、一年生だけの親睦会みたいなもんだ」

「へ~……」


 ロイはパンを食べおえ、スープを啜る。

 マグカップに入ったスープは、スプーンで掬うスープよりも美味い。ロイはそう思っていた。


「お前、興味ないのかよ?」

「……別に」


 パーティー。

 ティラユール家が主催するパーティーにも、他家が主催するパーティーにも、ロイは連れて行ってもらったことがない。優秀な兄と姉を紹介する場であり、落ちこぼれのロイには無縁の世界だった。

 兄と姉。もう、何年も会っていない。二人もロイに興味がなかったのか、話した記憶もロイは曖昧だ。顔すら思い出せない兄と姉のことを、ロイは少しだけ思った。


「お前、別なこと考えてるだろ」

「え、あ、いやぁ~……あっはっは」

「笑ってごまかすなよ……まぁ、いいけど」


 朝食を食べ終え、ロイとオルカは部屋で着替えて寮の前で待ち合わせ、二人で学園へ。

 学園へ向かう途中、ユイカが追いついてきた。


「二人とも、おはよっ」

「おっす」

「おはよう、ユイカさん」

「もう、さん付けしなくていいって。あたし、堅苦しいの苦手なのよねー」

「じゃあ……ユイカで」

「うんうん。よろしくね、ロイ」


 ユイカはロイの背中をバシバシ叩く。


『馴れ馴れしい女だ。だが、こういう女ほどベッドの上では大人しい』

「…………」

『あいだだだだだだぁ!?』


 ロイは木刀の柄を強く握って黙らせた。

 三人で歩いていると、話題は先程の新入生歓迎パーティーへ。


「新入生歓迎パーティーかぁ。聞いた? 女子はドレス着てもいいって。昨日からさ、女子はその話で持ち切りなのよ。貴族の女子にとって、ドレスは戦闘服みたいなモンだからねぇ」

「お前も貴族だろ。うれしくないのかよ?」


 オルカが言うと、ユイカは「冗談、めんどくさいわ」と言った。


「あたしはドレスより、聖剣士としての騎士服が着たいわね」

「俺も……でも、俺がなれるかどうかは、なぁ……」


 ロイは木刀の柄に手を乗せる。

 オルカとユイカは「あぁ~……」と、同情したようにロイの肩に手を置いた。


『貴様、何度も言わせるな。我輩を馬鹿にするなと』


 はいはい、わかったよ。

 ロイはそう思い、木刀の柄をそっと撫でた。


 ◇◇◇◇◇◇


 教室に入ると、ユイカは仲良しになった女子の元へ。

 オルカも、ロイから離れて別の男子と会話を始めた。

 教室内には、すでに多くの生徒がいる。席に座り、授業開始までのんびりしようとすると。


「ロイ」

「え」

「おはよ」


 なんと───ユノ・レイピアーゼがロイの隣に座った。

 ユノは、ロイの顔をジーっと見る。


「お、おはよう」

「うん、おはよう」

「あ、あの……何か用か?」

「おともだちとお喋りしたいだけ。ダメ?」

「いや、その」


 教室の視線が、ロイとユノに集中する。

 オルカとユイカもポカンとしていた。『氷聖剣フリズスキャルヴ』の使い手であり、クラスの誰が話しかけてもろくに会話すらしなかったユノが、ロイに挨拶して隣に座ったのだ。


「ロイ、パーティー楽しみ?」

「パーティー? ああ、新入生の」

「うん。ごはん、いっぱい出るみたいだよ」

「肉も出るかな?」

「いっぱい」

「……楽しみだ!!」


 狩りをすることなく肉を食べれることに、ロイは歓喜した。

 周りが、ロイとユノの会話を聞いていた。

 すると、チャイムが鳴り教師のアンネが入ってくる。


「はいはーい。授業を始めますよー」


 そして、聖剣レジェンディア学園、初授業が始まった。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 今日の授業は、『聖剣について』だ。


「聖剣とは、人の世界に現れた『女神』様が、魔王に抗うために作った武器、とされています」

『違うな。聖剣は、あいつ(・・・)が作った武器だ。あいつは女神なんかじゃない』


 デスゲイズが何かを言う。

 ロイは木刀を軽く踏んで黙らせた。


「七本の聖剣は、七大聖剣と呼ばれ、選ばれし者だけが振るうことができます。それ以外、皆さんの持つ聖剣は、聖剣鍛冶師たちが作り上げた《模造聖剣》です。七大聖剣に比べれば力は落ちますが……それでも、並の剣より遥かに強い剣です」


 ロイは、自分の木刀を見る。

 どう見ても、並の剣以下の剣……というか、木刀だった。


「聖剣にはそれぞれ、地水火風、光闇雷の、合計七つの属性があります。皆さんの聖剣にも、それぞれ属性が付与されています。聖剣士は、その属性を司る《魔法》という力を使用することが可能です。魔法については、実技授業で学んでいきますので、今は置いておきますね」


 ロイの木刀には、属性がない。

 というか、本当に聖剣なのかすら怪しい。


「そして、属性とは別に、聖剣には固有の《能力》が一つあります。どのような能力なのかは、所持者によって変わるそうです……能力の発現、まずは皆さんが目指す力ですね」


 恐らく、ロイはもう能力を獲得している。

 《対話》が、この木刀の能力だとロイは考えていた。


「能力……」

 

 なんとなく、ユノの聖剣を見た。

 七大聖剣の《能力》……間違いなく、破格だろう。

 すると、ロイの視線に気づいたユノがボソッと言う。


「まだ、能力には目覚めていないの。わたし、氷しか出せない」

「そうなのか」

「うん……この剣、じゃじゃ馬だから」

「じゃじゃ馬……」


 ロイはチラッと木刀を見た。恐らく、こいつも相当なじゃじゃ馬だ。

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[一言] これは主人公が踏みつけにしてきた木刀にざまぁされる話でしょうか。新しい気がします。期待してます。
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